池井戸潤 『オレたちバブル入行組』

池井戸潤の『オレたちバブル入行組』(文春文庫)を読む。

hanzawa

テレビ番組「半沢直樹」の原作である。

原作は確かに面白い。銀行内の醜い責任回避、背任行為が描かれており、上司に潰されそうになった半沢がそれに立ち向かうという話だ。私は物語の小気味よいテンポに感心しながら、あっという間に読破してしまった。

文庫本の本文は355ページまであるが、「やられたらやり返す」という有名な台詞は290ページにやっと登場する。ところが、テレビの「倍返しだ」は原典では「十倍返しだ」になっている。テレビの方が穏当だった。テレビのプロデューサーは本の中で1回しか出てこないこのフレーズに目をつけてドラマ化したわけだが、目の付け所はさすがだ。

テレビドラマ「半沢直樹」が大ヒットしたのは、このような主人公に多くの人が憧れたからだろう。組織の中で押し潰されそうになっている人は溜飲を下げたに違いない。しかし、押し潰されないためにはテレビや小説で鬱憤を晴らしているだけではだめだ。できすぎのキャラクターなのかもしれないが、半沢直樹を見習う必要はあるだろう。

(2015年8月26日)