トゥルゲーネフ(ツルゲーネフ) 『初恋』

トゥルゲーネフ(ツルゲーネフ)の『初恋』(光文社古典新訳文庫)を35年ぶりに読む。少年の初恋の女性が誰かに恋をしている。その相手が自分の父だったという有名な物語だ。

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少年は自分の初恋を図らずも父に踏みにじられた。しかし、その父に対する恨みは全くない。私はそんなに単純なものかと若干疑問だが、もしかしたら少年の初恋は目の前に妙齢の女性が現れたことに対する条件反射的なもので、恋や愛とは違ったものだったのかもしれない。

古典とはいえ、物語には背徳的な雰囲気はない。微塵もない。19世紀においては、これ以上の描写がなくても、実の父が21歳の若い女性と深い仲になったという物語があるだけでも十分刺激的であったのだろう。背徳的な内容の小説・映像は現代に溢れているが、それが後世に残るかどうかは疑問である。

(2015年10月19日)