恩田陸 『蛇行する川のほとり』

恩田陸の『蛇行する川のほとり』(中央公論新社)を読む。

kawa

高校生の美少女、美男子を描く浮き世離れした小説だった。このような作品が存在すること自体に驚く。確かに高校生くらいの年齢には大人になる前の純粋さや無垢な感じはあるかもしれないが、美化しすぎると、非現実的なアニメでも見ているような気分にさせられる。

単行本の表紙を上に掲載したが、この絵は裏表紙にも続いている。どこかで遊ぶ4人の少女の絵である。作画は酒井駒子だ。作中には4人の少女がこのような下着姿で遊ぶ場面は登場しない。おそらくこれは編集者がおおよそのイメージを酒井駒子に伝えて書かせた図版であろうが、奇しくも浮き世離れしたこの作品の姿を表現している。酒井駒子の西洋趣味の絵は一頃大変もてはやされた。それは理解できなくもない。日本人離れした美少女への憧憬を表現したからだろう。確かに目を引くのだが、絵の吸引力が強すぎてテキストを薄めてしまう傾向があった。ところが、本作品はこの絵がどんぴしゃだ。これほど表紙のイメージと内容のイメージが一致した例はない。この表紙が文庫本にはない。本作品をパッケージとして鑑賞したいのであれば単行本を手にした方が良い。

物語は美少女、美少年が子供の頃に起き、迷宮入りした殺人事件を追想するものである。その意味ではミステリー小説に分類すべきだろう。

(2015年11月22日)