An die Musik 開設7周年記念 「大作曲家7人の交響曲第7番を聴く」

ベートーヴェン篇
ケンペ指揮ミュンヘンフィル

文:Fosterさん

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CDジャケット

交響曲第7番 イ長調 作品92
ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団
録音:1971年12月20-23日
東芝EMI(国内盤 TOCE-7104)
併録:ベートーヴェン 交響曲第8番 ヘ長調 作品93

 

 今回提案した交響曲7番シリーズで最も多くの人に親しみがある曲は間違いなくこのベートーヴェンの交響曲第7番だと思います。当然自分の所持盤も数多くそれらの中からお気に入りの演奏を選ぶのは非常に大変でした。

 フルトヴェングラーやクレンペラー、カルロス・クライバーといった世間的に認知された名盤はおそらくは他の執筆者からの推薦があると思われたので、今回は個人的に非常に気に入っている演奏であるケンペの演奏を挙げさせていただきます。

 この曲は、ワーグナーが舞踏の神化と呼んだとこもあるのでリズム感が悪い演奏ではなかなか推進力が生まれてこなく不満感がでてきてしまう。逆に、リズム感ばかりを強調してしまうと音の厚みに物足りなさが残ってしまいベートーヴェンらしい重厚さを感じることができなくなってしまう。有名な曲で数多くの録音が存在するが、この両者を兼ね備えた演奏というのはそう多くないと思います。

 ここで挙げさせていただいたケンペの演奏はこれらの要素を十二分に備えた演奏ですが、残念ながら世間的な評判はそう高いものではないのが個人的には非常に残念です。

 ケンペのテンポ設定は序奏からヴィヴァーチェの主部に入ってもゆったりとたテンポを持続させ、見事な音の厚みを作り出しています。当時、決して超一流というわけではなかったミュンヘンフィルからケンペは非常に重厚でベートーヴェンらしい響きを作り出すことに成功しています。

 そして、2楽章のアレグレットでのケンペならではのセンスのよい歌い口。決して感情に溺れているわけではないのに心の琴線に触れる素晴らしい演奏です。

 3楽章では、これまでの楽章から一転してやや早めのテンポ設定になります。しかし、トリオの部分では再び遅めのテンポに戻してベートーヴェンの旋律を心行くまで堪能させてくれます。

 そして、終楽章ではケンペならではの力強い演奏が展開されていきます。思わせぶりな間や、あっと驚く解釈はないものの、曲とともに自然に盛り上がっていきますし、最後の迫力も相当なものです。世間的に熱いとされているクライバー盤と比較しても十分に伍することのできる演奏だと思います。

 ケンペの演奏は優等生的に思われがちかもしれないが、たしかに曲から大きくはみ出すようなことはしないものの、曲の範囲内で大きな充実感を得るという点に関しては素晴しい才能を持った指揮者だと思います。廉価盤のため軽く見られがちかもしれませんが、ケンペのベートーヴェンは注目に値する演奏です。

 

(2005年11月12日、An die MusikクラシックCD試聴記)