An die Musik 開設7周年記念 「大作曲家7人の交響曲第7番を聴く」

シベリウス篇
オラモ指揮バーミンガム市響

文:青木さん

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CDジャケット

交響曲第7番 ハ長調 作品105
サカリ・オラモ指揮バーミンガム市交響楽団
録音:2003年1月6日〜8日、シンフォニー・ホール、バーミンガム
プロデューサー:ティム・オールダム
エンジニア:ジャン・シャトレ
エラート(国内盤 ワーナー WPCS11698)

 

 「透明感のある演奏」という定番的表現を、このCDを聴いて本当に実感しました。管楽器の音が他とブレンドしたりくっきり浮かび上がったりはせず、手前で鳴っている弦楽器を透かして聴こえてくるのです。CDでこんな経験は初めてでした。繊細で綺麗な音色、クールな合奏美。これこそシベリウスの音楽にワタシが期待する演奏。

 これをフィンランドではなく英国のオーケストラから引き出しているのは、指揮者オラモの才能なのでしょうか。バーミンガム市響はラトルともこの曲を録音していますから、聴き比べればそれは分かるのかもしれませんが、まあどっちでもかまいません。それにバーミンガムに行ったときの印象は「灰色の空の寒い北国」といったものでしたし。

 この透明感や繊細さは、先月(2005年10月)に来日したオラモとフィンランド放送響の演奏会で感じたのと同じです。そのときに聴いたシベリウスの交響詩が実に素晴らしいものだったので、輸入盤が格安だったこのシベ全を買ってみたという次第。その意味では期待通りの演奏で、しかも何曲か聴いた中ではこの第7番がいちばんよいと感じました。交響曲とはいえど20分ほどの単一楽章に凝縮された楽曲そのものの密度の高さと演奏のスタイルとの間に、なんとなく関係がありそうです。それ以上の分析ができないのはワタシの力量が不足しているからでして、まことに面目ございません。

 しかしこれだけは言えます。同じく北国のオーケストラであるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、たとえオラモが指揮しても、こんなひんやりした透明感は出せないでありましょう。やはりシベリウスはヘボウにとって最大の弱点というか鬼門というか、相性がもっとも悪そうです。そのヘボウが得意とするマーラーの交響曲第4番を、オラモとフィンランド放送響はまったくユニークな演奏で聴かせてくれたのですが、話が本題からどんどん逸れているようですので、このへんで。

 

(2005年11月18日、An die MusikクラシックCD試聴記)