An die Musik 開設7周年記念 「大作曲家7人の交響曲第7番を聴く」

シベリウス篇
サラステ指揮フィンランド放送響

文:Fosterさん

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CDジャケット

交響曲第7番 ハ長調 作品105
ユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送交響楽団
録音:1993年5月、サンクトペテルスブルグにおけるライブ録音
FINLANDIA(輸入盤 3984-21348-2)

 

 シベリウス最後の交響曲である第7番は、当初交響的幻想曲の予定で作曲が進められたという経緯があります。よって、この曲で私が求める演奏はファンタジー色が豊かな演奏ということになります。

 そんな私が最も好んで聴くのはサラステとフィンランド放送交響楽団による演奏です。サラステはフィンランド出身の指揮者であり、当然シベリウスの交響曲全集も作成しているのですが、日本での彼の評価はお世辞にも高いとはいえません。その理由は、おそらくシベリウスの音楽で広く一般に親しまれている交響曲第1番や第2番といったスタンダードな初期の交響曲での派手な外面効果を狙わない(はみ出しのない)演奏スタイルが受け入れられないからだと思われます。しかし、後期の交響曲、特に7番のような曲では、彼の手腕が大きく発揮されるのです。

 一聴、難解に聴こえるこの曲が、サラステの演奏では非常にわかりやすく、しかもファンタジー豊かに聴こえるのです。ここで「わかりやすい」と書いてしまうと個性のない凡庸な演奏と思われてしまう恐れもありますがまったくもってそんなことはないのです。

 まずテンポ設定ですが、非常に速いです。全曲通しても20分を切るといえばその速さがわかってもらえると思います。ただ、速いからといって決して素っ気無いわけではなく、逆にこのテンポが曲の晦渋さを和らげている効果をもたらしているといっても過言ではないでしょう。

 また、速い演奏にみられがちなさっぱりした演奏かというとそうではなく、ところどころでパウゼを入れるなどの工夫もみられ、単にさらりと流すだけではないところにサラステの曲への理解の深さを感じさせてくれます。

 オーケストラも自国の作曲家の演奏ということもあって非常に自身に溢れた演奏を聴かせており、ライブの熱気も手伝って音そのものの熱気も十分です。一方で、北欧を感じさせる美しい弦楽器群の響きも存分に味わう事ができる素晴らしい演奏です。

 

(2005年11月19日、An die MusikクラシックCD試聴記)