ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団来日公演2008
2008年11月11日(月),12日(火) 19:00 サントリーホール
文:伊東
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮:マリス・ヤンソンス■ 演目
10日:
ドヴォルザーク:交響曲第8番
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」
ラヴェル:ラ・ヴァルス11日:
ブラームス:交響曲第3番
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
10日(月)、11日(火)と連続してサントリーホールでヤンソンス指揮コンセルトヘボウ管のコンサートを聴いてきました。昨日はドヴォルザークの交響曲第8番、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、そして今日はブラームスの交響曲第3番、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲「展覧会の絵」というプログラムでした。
今日のコンサートはとても充実していて聴き応えがありました。特に「展覧会の絵」。テレビの「のだめカンタービレ」で少年時代の千秋が口をぽかんと開けてオーケストラ演奏に聴き入っているシーンがありましたが、今日の私はまさにそれです。本当に口を開けて聴いてしまいました。40代も後半になってそんな有り様になってしまうとは。コンセルトヘボウ管の精妙なアンサンブルとまろやかで上品な響き! 前半のブラームスもとても良かった。地味な演奏に属するとは思いましたが、ヤンソンスの音楽作りは極度に丁寧で、絨毯でも作るかのように音をひとつひとつ織り込んでいくような印象を受けました。実に渋いです。
・・・と大満足で帰宅した私でしたが、昨晩はそうではなかったのです。実はかなりの欲求不満を抱えていました。今日と違い、2時間のコンサートで退屈してしまい、「ヤンソンスとコンセルトヘボウ管の組み合わせではもうチケットを買わない方がいいかな」と真剣に考えていたのです。そのため、今日は期待もしていなくて、しかも直前まで仕事のことが頭に渦巻いていてメンタル的には最低の状態でコンサートが始まったのでした。普通ならそれを引きずってコンサートの印象が良くなるはずもないのですが、音楽が始まると一挙に引き込まれてしまいました。
これは一体どういうことなのでしょうか。おそらく昨日だってヤンソンスとコンセルトヘボウ管は真剣に演奏したはずです。私の気持ちの持ちようなのでしょうか? きっとそうではないと思います。だって、昨日と今日では聴衆の拍手が全く違います。
こういうことが起きるからコンサートは行ってみなければ分からないのです。もし昨日の演奏だけを聴いていたら、ヤンソンスとコンセルトヘボウ管に対する印象はすっかり低下してしまったに違いありません。今日の演奏を聴いて少年千秋よろしくあっぱ口を開けてしまった私は、今後忘れることができない音楽体験をしたことになります。
コンセルトヘボウ管の来日公演はまだ続きます。私はスケジュールの都合上今年はこれ以上追っかけることができませんが、明日以降は調子が出てきてもっとすごい演奏が聴けるかもしれません。
(2008年11月23日、An die MusikクラシックCD試聴記)