コンセルトヘボウ管のページ
はじめに
このコンセルトヘボウのページはわたくし青木三十郎が担当させていただいております。このようになった経緯は割愛いたしますが、結果的には伊東さんのご厚情に甘えさせていただくこととなり、恐縮している次第です。
以前に当HPゲストブックに投稿させていただいた通り、わたしがコンセルトヘボウの素晴らしさを認識したきっかけとなったのは、ハイティンク指揮チャイコフスキー交響曲第5番のレコードでした。シューベルト交響曲第9番との組み合わせで二枚組3000円限定盤のそのLPは、金のない高校生だった当時のワタシの貧弱なコレクションの中でも大切な一組で、やはり二枚組限定の廉価盤で入手したショルティ/シカゴ響のベートーヴェンやR.シュトラウス(ロンドン)、カラヤン/ベルリン・フィルのモーツァルト(EMI)等と比較すると、なんとなくハイ・グレードな雰囲気が漂っていて、デイヴィスの幻想(コンセルトヘボウ)+シベ2(ボストン響)共々、気に入って繰り返し聴いていたものです。
ある日のこと、アンプのスイッチを切り忘れたまま外出してしまい、帰宅するとアンプがすっかり熱々になっていました。そういえばアンプをある程度暖めてから聴く方が音が良くなるといったことが「週刊FM」誌のオーディオのページに書いてあったのを思い出し、せっかくだからとこのレコードをかけてみたところ、今までとはまったく違うすごい音が飛び出してきたのです。これはアンプが暖まっていたからだけでなく、音質の違いを確かめてみようと身構えていたその時の自分の耳の状態がいつもよりずっと真剣だったせいもあったのでしょう。とにかくそれは圧倒的な音響でした。たっぷりとした左右の拡がりとソロ楽器の音場の小ささとがマッシヴな量感を感じさせてオーケストラのサイズがほとんど二倍くらいに聴こえ、美しい音の溶け合い、豊かな残響、空気感、こうしたものがすべて、何かで読んで知識としては知っていた「コンセルトヘボウ・サウンド」そのものだと感じ入りながらその5番を聴き通し、すっかりその魅力の虜となってしまったのでした。
以来20年間、(途中でシカゴ響に浮気したりしつつも)わたしはコンセルトヘボウのさまざまなディスクを聴き続けてきました。その過程で感じたことは、このサウンドの素晴らしさの要因がオーケストラそのものの個性だけではなく、録音場所であるコンセルトヘボウ大ホールの音響特性、そしてフィリップス社録音スタッフの音響設計ポリシー、これらが同じ方向性であるがゆえの幸福な相乗効果によるものではないか、ということです。それは他社のコンセルトヘボウ録音やフィリップスの他オーケストラ録音を聴き比べるとわかります。ですので以下ではオーケストラだけでなくホールやフィリップスについても項を設けました。
このように素晴らしい魅力を持つコンセルトヘボウに対して、しかし世間の人気は驚くほど低いというか地味というか、どうもないがしろにされているようで、いつも歯がゆい思いを抱き続けてきました。一番困るのは、なんといっても情報量が少ないことです。例えばCDを探そうにも、過去の録音がどの程度CD化されているのか、そもそもどのような録音があるのか、そういったリストさえありません。仕方なくそれを自作し、同時に限られた情報をとりあえず集めて整理分類しておく。こういった作業は自分のための覚え書きのようなこととして始めたものですが、縁あって伊東さんという理解者に巡り会い、こういう形で公開させていただくこととなったという次第です。
タイトルを「研究」などとしておりますが、散在している各種のコンセルトヘボウ関連情報を収集して整理する段階までで、おおむね留まっています。分析して考察していくための、これは素材に過ぎません。そういう基礎的な作業から始めなければならないほど、我が国におけるコンセルトヘボウ研究はたち遅れているのです(大げさ)。しかしなにぶん個人でできる作業には限界があり、これではまだまだ不十分、わからない点はわからない旨を記したままにしていますし、追加や修正をすべき内容はたくさんあります。むしろ、今後そういうことをして更新を続けていくためのとりあえずの叩き台のようなものだと考えております。そのあたりの情報がありましたら、ぜひお寄せいただきたいと切望しております。よろしくお願いいたします。
(An die MusikクラシックCD試聴記)