コンセルトヘボウのレアCDガイド
なかなか目にとまりにくいヘボウのディスクのご紹介。CD探しのご参考に。
■まずはベイヌムです。バッハの「管弦楽組曲第2番」+ヘンデルの「水上の音楽」(クリュザンダー版)は、1988年に「レジェンダリー・クラシックス」でCD化され国内発売もされていますが、1999年に仏デッカの廉価シリーズ"La Collection Classique"シリーズで再発されています。きびきびした運びにふっくらとしたサウンドがマッチし、まさに典雅としか言いようのない、落ち着いて聴くことのできる演奏です。ヘンデルはステレオ。デジパック仕様のこのシリーズからは、マルケヴィチのベートーヴェン等がレコ芸の「海外盤試聴記」で採り上げられていました。
■このシリーズでもう一枚の注目盤は、オッテルロー指揮ハーグ・フィルの「幻想交響曲」。これには「ファウストの劫罰」の抜粋が(3曲だけですが)フィル・アップされていて、こちらがドラティ指揮のコンセルトヘボウ管なのです。どうも国内発売された形跡のなさそうな音源です。録音は1959年9月。
■彼らが同じ月に録音したウェーバーの序曲3曲は"DUO"シリーズの"The Best Of Weber"(1999)に収録されています。このベルリオーズとウェーバーとがオリジナル・カプリングだったのでしょうか。ウェーバーの方はLP時代にフォンタナ・レーベル名義の廉価盤「グロリア・シリーズ」で出ていました。速いテンポでさっそうと駆け抜ける、爽快な演奏です。「魔弾の射手」冒頭のホルン、「オベロン」の序奏から主部へ入る瞬間のトゥッティ、「オイリアンテ」のティンパニの轟きなど、ヘボウの魅力も十全。ちなみにこの二枚組にはザンデルリング指揮シュターツカペレ・ドレスデンで二曲のクラリネット協奏曲が収録されています。
■"DUO"シリーズでは"The Best Of Cesar Franck"(1994)も見逃せません。オッテルロー指揮コンセルトヘボウ管の「交響曲ニ単調」と「交響詩エオリデス」が入っているのです。1964年1月録音のこの音源も、たいへんレアなものではないでしょうか。バレーやモントゥーの名演に比べるとややモタモタした印象もありますが、オルガン風の重厚な響きを身上とするこの曲を、フィリップスによるヘボウ・サウンドで楽しめるだけでも、このCDは価千金です。そういえばフィリップスはこの曲をデ・ワールトの指揮でもコンセルトヘボウで録音していて、こちらは未CD化のようです。
■"DUO"シリーズからさらにもう一枚。メンデルスゾーンの"The Complete Symphonies Vol.2"(1997)は、2枚目が管弦楽曲と協奏曲に充てられていて、ともにハイティンク指揮のコンセルトヘボウ管弦楽団です。うち、グリュミオーをソロに迎えた「ヴァイオリン協奏曲」(1960年録音)はブラームスとのオリジナル・カプリングでも出ていますが、「真夏の夜の夢」の序曲と8曲の抜粋(1964年録音)は他の形でCD化されているものを見たことがありません。
■ヨッフムの古い録音は、デッカやフィリップスの共同廉価レーベルである英BELARTでこっそり復刻されています。1967〜1969年録音のベートーヴェン交響曲全集はこれでほとんど揃いますし、モーツァルトの「リンツ」+「プラハ」も入手できました。またシューベルトとシューマンの両4番とR.シュトラウス「ティル」「ドン・ファン」は、ヒストリカル録音復刻レーベルの仏TAHRAが1998年に復刻しているものの、LP時代は「ヨッフム1300」シリーズで廉価販売されていたこれらの音源を高価なフランスの輸入盤で購入するのは、あまりおもしろくありません(買ったけど)。とにかく、本家フィリップスによるCD化を期待したいところです。
■ここまでを書いたところで、フィリップス創立50周年記念の第2弾「フィリップス秘蔵名盤シリーズ」の発売情報を入手しました。タイミングがいいんだか悪いんだかわかりませんけど、とにかく歓迎です。
上記のうち、ベイヌム指揮のバッハ「管弦楽組曲第2番」は第3番との組み合わせでそのラインナップに入っています(UCCP-9371)。どうせなら他の2曲も含めて全集としてほしかったところですけど。またヨッフム指揮のR.シュトラウス「ティル」「ドン・ファン」もありますが(UCCP-9363)、これはTAHRAから復刻されている1960年のステレオ録音ではなく、1951年のモノラル旧録音の方で、やはりTAHRAからも出ているシューベルト「未完成」との組み合わせです。
その他にも、伊東さんもご推薦のベイヌム指揮のモーツァルト「フルートとハープのための協奏曲」(UCCP-9366)、ハイティンク指揮のラヴェル旧録音(UCCP-9379)、ケンペン指揮のチャイコフスキー(UCCP-9362)、コンセルトへボウ管弦楽団以外ではフィリップス社の初録音であるオッテルロー指揮ハーグ・フィル(録音場所はコンセルトへボウ)(UCCP-9361)、ヘボウの元首席チェロ奏者デ・マヒューラの協奏曲(UCCP-9368)など、「秘蔵」の名に恥じぬレア盤がぞろぞろ。9月27日発売予定とのことで、楽しみです。
詳しくはユニバーサル社のHPを。
(An die MusikクラシックCD試聴記)