「この音を聴いてくれ!」
第7回 アバド指揮ウィーンフィルのマーラー交響曲第3番
■ ウィーンフィルのトロンボーン
文:としちゃんさんマーラー
交響曲第3番
アバド指揮ウィーンフィル
- ヴァイオリン・ソロ:ゲルハルト・ヘッツェル
- ポストホルン・ソロ:アドルフ・ホラー
録音年:1980年9月、ウィーン、ムジークフェラインザール
DG(輸入盤 410 715−2)私がマーラーの交響曲と出会って、15年。いろいろと聴いてきてどうしても受け付けない曲・好きではない曲も分かってきた。
例えば第6番。どうしても愛好するまでには至らない。一枚しか所有していない。今後、老後まで聴くだろうなぁと思うのは、1番、2番、3番、4番、大地の歌だろうと思う。
そんな中、特に第3番を偏愛している。きっと最後の救いある音楽に惹かれているからと思う。バーンスタイン盤、ベルティーニ盤、ショルティ盤、小澤盤、マゼール盤、それぞれが全然違っていてそれがまたイイ。
最初に購入したのはアバド=ウィーン盤だ。というよりも当時目につくのはアバド盤だけだった。そして演奏もさることながら、当時トロンボーンを吹いていた高校生の私をノックアウトしたのは、時折あらわれるウィーンフィルの名手たち、ソロ演奏の素晴らしさだった。
まず冒頭のホルンの咆哮が凄い。なんとも深々とした音色!これは素晴らしい。
続いてあらわれる、警告のように鋭く美しく響くトランペット。なんていい音色だろう。これが本当のトランペットなのか。
そしてそして、どの楽器よりも痺れたのは有名なトロンボーンソロだ。誰が吹いているのか、残念ながら解説書にはクレジットされていない(と思われる。輸入盤なのでドイツ語・英語・イタリア語。読めん(^^♪)。しかしこの、豊かで、深々として、決して下品にならない堂々とした吹きっぷり。これぞウィーンのトロンボーン!
もちろん演奏自体も優れていると思う。バーンスタイン、ベルティーニを聴いてしまった今ではナンバーワンCDと言い難いのだが、第六楽章の終わらせ方はベストを争う出来では? 豊かなホール・トーンを生かした、雄大な終結。和音が、まさしく純正律といえる和音が響ききって目の前に広がる。弦楽器、本当に美しい。
この交響曲を「旅の交響曲」と評した方がいた。うまいことを言うなぁと思う。列車に乗って窓の外を眺めると次々に光景が変わる。この曲も目まぐるしく曲想が変わり、最後に安住の地に落ち着いたが如く救いの音楽が響き渡る。私は第3番の交響曲に、あわただしく東日本のあちこちを引越ししてきた私自身の人生を重ね合わせているのかもしれない。
他の優れた演奏が今後もあらわれるだろう。でも最初にすり込まれたウィーンの名手たちの響きが、第3番を聴く上の基準となり続けるに違いない。
2004年4月26日、An die MusikクラシックCD試聴記