ジョン・レノンを偲ぶ
The JOHN LENNON Collection
CAPITOL(輸入盤 CDP 7 91516 2)私が19歳の12月、ジョン・レノンは死にました。浪人生だった私が駿台予備校に行くと、教室中がざわざわしています。ジョン・レノンの噂でもちきりだったのです。
ジョン・レノンは、あのビートルズの中心メンバーでした。人気はポール・マッカートニーと二分していたようです。面白いコンビでした。ビートルズ時代に両者が作る曲は傾向が全く違います。ポールがバラード調の美しいメロディーを作り、甘美なラブ・ソングにするのとは対照的に、ジョンは幻想の世界に逍遙していました。日本では抒情的なポールのファンの方が多かったと聞いています。確かに、"Hey Jude"などの名曲をポールは書いています。多くのファンはポールのせつない歌に聴き入ったことでしょう。しかし、ジョンは別の次元の音楽家です。何と言っても、いかしています。もう「イカシテイル」と表現するしかないほどきまっています。ジョンには独特のセンスがあり、それがファンを魅了していました。歌が特に上手いわけではなかったのに、シンガーとして最高の持ち味があり、聞かせ上手でありました。今でもジョンの歌い方を真似るミュージシャンは後を絶ちません。しかし、真似をしても無駄なのです。ジョンは他の人が真似をできないような超人的な音楽家だったのです。
奇抜な曲もありました。一体頭の中がどうなっているのか、首をひねらなければならない曲もないわけではありません。それでもジョンはすばらしい曲を書いてくれました。ビートルズ解散以後は「愛」と「平和」を訴え、心に残る名曲を作るようになりました。そうした曲の中でも最もジョンらしいのが"Imagin"です。激しくロックを叫んでいた若いときとはうって変わって、ジョンは静かに静かに祈りを音楽に託しました。
ジョンの死後、たちまちヒット・チャートを登り詰めたのが"(Just like)starting over"でした。これは一時はダメになりそうだったジョンが自ら出直しを誓って書かれた曲だといいます。音楽は感動的で、天才ジョン・レノンがその才能を全開させた名曲です。私はこの曲がはやった頃、浪人中であったためか、ややひねくれていました。"(Just like)starting over"が流行しているのはジョンに対する追憶によるものだと思い込んでいました。しかし、そうではありません。この曲は将来に向けて前向きに生きようとするジョンの心情が吐露されています。
私はクリスマスの時期になると、必ずジョンの"Happy Xmas(War is over)"を聴きます。この曲は私が知っているクリスマス・ソングの中で最も感動的です。何度聴いたか分からない曲なのに、聴く度に新たな感動を呼び起こされます。「愛」と「平和」を心から訴え続けたジョンの最高傑作ではないかと私は思っています。作曲されたのは1971年。国際政治上は大変微妙な時代です。「平和」もジョンが住んでいたアメリカから一歩外に出れば保証されませんでした。実は世界は"War is over"ではなかったのです。歌の中でジョンはどんな人にも楽しいクリスマスと新年が訪れるよう祈ります。音楽が進行するにつれて子供達もコーラスに加わります。ジョンは商業ベースでこの曲を作ったのでしょうか? とても信じられません。
私はコンピレーション・アルバム、つまりいろいろなCDからの寄せ集めCDは好きではありません。しかし、このCDばかりはジョンの名曲が次から次へとたくさん聴けるため、手放すことができません。もしジョンの"Happy Xmas(War is over)"がなくなったら、クリスマス・シーズンの音楽は本当につまらなくなるのではないかと、真剣に考えています。
収録曲
まさに名曲の宝庫です。全曲にコメントをつけたいところですが...。
- Give peace a chance
- Instant Karma !
- Power to the people
- Whatever gets you thru the night
- #9 dream
- Mind games
- Love
- Happy Xmas(War is over)
- Imagin
- Jealous guy
- Stand by me
- (Just like)starting over
- Woman
- I'm losing you
- Beautiful boy(Darling boy)
- Watching the wheels
- Dear Yoko
- Move over Ms.L
- Cold turkey
1999年12月22日、An die MusikクラシックCD試聴記