雪村いづみ
スーパージェネレーション

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CDジャケット

雪村いづみ
スーパージェネレーション
録音:1974年?
日本コロムビア(国内盤 COCA-10820)


収録曲

  • 序曲(香港夜曲)
  • 昔のあなた
  • ヘイ ヘイ ブギー
  • バラのルムバ
  • 銀座カンカン娘
  • 東京ブギウギ
  • 胸の振子
  • 一杯のコーヒーから
  • 蘇州夜曲
  • 東京の屋根の下

 うふふ。「雪村いづみ」と聞いて「何かの間違いでは?」と思いましたね? 間違いではありません。美空ひばり、江利チエミとともに3人娘として知られた雪村いづみさんのことです。

 雪村いづみさんは1937年生まれ。米軍のキャンプなどで早くから歌いはじめ、15歳で歌手デビューを果たしています。このCDが作られた1974年頃には大変なキャリアを積んだ大歌手でした。

 また、このCDの中で雪村いづみが歌う曲はすべて服部良一さんが作曲しています。服部さんは1907年生まれですから、雪村いづみさんにとっては大先輩です。そして、雪村いづみさんの歌をバックで支えるのがキャラメルママ。キャラメルママとは、細野晴臣(ベース)、鈴木茂(ギター)、松任谷正隆(キーボード)、林立夫(ドラムス)の4人組であります。録音当時、彼らは本当に若手のバリバリでした。YMOが一世を風靡するずっと前のことです。そうした若手が、欧米のポップスではなく、日本の、しかも服部良一の曲を歌う雪村いづみをサポートしているところにこのCDの面白さがあります。一言でいえば、このCDにかかわる音楽家達は、世代を越えているのです。それゆえ、CDのタイトルは「スーパー・ジェネレーション」となっているのです。良い音楽を次の世代に伝承していこうとする努力が窺われる珍しいCDですね。LPは1974年8月に発売されていますが、廃盤になることもなく、現在まで生き続けているところを見ますと、プロデューサーの狙いは完全に成功したと見なしてよいでしょう。

 ここでの音楽作りはすべて正攻法です。派手な伴奏もなく、まことに地味であります。でも古さなど微塵も感じさせません。また正攻法だからこそ、雪村いづみさんの歌う懐かしのメロディーが生きてきます。古い曲っていいですね。それまで何百、何千回と繰り返し歌ってきた曲の歌詞を噛みしめるように歌う雪村いづみさんの歌は、まさに心に沁みいるようです。大きな口を開けて、しっかり歌っているのがよく分かります。きちんとした歌いぶりですから、こちらもしっかり聴かねばなりません。そしてしっかり聴いていると、すぐにこのCDの世界に引き込まれます。例えば、「昔のあなた」など、ほろりとすること請け合いです。「一杯のコーヒーから」、「蘇州夜曲」もいいなあ。そしてご存知「銀座カンカン娘」「東京ブギウギ」ですが、笑ってはいけません。大変面白いです。みんな大まじめでこうした曲に取り組んでいますから、実に楽しい仕上がりになっています。「東京ブギウギ」では最後に英語になってフェイド・アウトしていきます。とてもイカシテいますよ!

 我が家ではこのCDをいつも車に乗っている時に聴いていました。今回この文章をアップするにあたり、自宅のスピーカーの前に陣取ってじっくり聴き直したところ、今まで聞こえにくかった部分がはっきり聴き取れ、また新たな感銘を受けました。名曲とは、世代を越えて聴き継がれ、楽しめるものです。

 

2000年3月9日、An die MusikクラシックCD試聴記