「このミス、値千金?!」

文:あべとろさん

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曲名:Beethoven;Symphony No.9 in D Minor, Op.125
指揮者:Hermann Abendroth
管弦楽団:Sinfonieorchester Leipzig
各キャスト:Edith Laux,Soprano Eva Fleischer,Alto Bernd Aldenhoff,Tenor Karl Paul,Bass
*この他にヘルベルト・ケーゲルの名もキャスティングに掲載されている。
録音年月日、場所:11 June 1950; in Leipzig
ディスク詳細:‘Abendroth Recordings ('39-'50) Beethoven,Brahms,Schumann:Symphonies’
(4Disk)(Music&Arts 1065:輸入盤)に収録

 ‘An element not heard in Abendroth's other performance, fortunately, is tenor Bernd Aldenhoff's wrong note on his solo entrance in the final movement.’

 上の英文は、このCDのアーベントロートの第9演奏に関しての、ジャケットによる解説からそのまま抜粋したものである。

 私見を交えぬために、文章どおり直訳すると以下のとおりである。(間違っていたら笑ってやってください)

「幸運にも、アーベントロートの他の演奏では聴くことの出来ない要素は、テノールのアルデンホッフの、終楽章のソロの入りでの間違った音である。」

 直訳ゆえかなり硬い文章だが、文の内容がわかりづらいのはそのせいだけではない。と思うのは私だけだろうか?

 この演奏では解説にもあるとおり、テノールが終楽章におけるソロのでだしを、なんと3度も低い音で歌い始めるのだ。(その後はなんとか持ち直しているが)その様はまるでドリフのコントである(その前のバスのソロもかなり危ういが、こちらは決定的)。普段英文の解説など見もしない私だが、さすがにこれには仰天し、解説を広げてみた次第である。そこにこの文章。どう訳したものか、いや、どう解釈したものか?

 ちなみにその文の前には、「彼の他の第9演奏と大した解釈の差は見受けられ無いが、強いてあげるなら云々」てな内容が書かれており、そして最後に「幸運にも〜」と続くわけである。
 以上をふまえた上で、私見を交え、私なりの解釈をさせてもらう。

「他にも色々アベトロ(アーベントロートの不当な略)さんの第9のCDがあるけど、それらとあんまし大差ないんだよね〜、その点ではこのCD価値無しってカンジ?でもね、なぁんと終楽章で、テノールのアルデンホッフさんがデトチッちゃってんの!これは一聴の価値アリでしょー!」

…その1年後の1951年6月29日に、アーベントロートはほぼ同じ条件でまた第9を録音している(ドイツシャルプラッテンレコード:TKCC−15051)が、アルデンホッフはキャストから外されていたのは言うまでも無い。こちらは国内盤で手に入りやすい(と思う)。演奏面では1楽章でホルンのソロがトチッている以外はたいした傷は無く、解釈もやや控えめにはなっているものの、基本的には一緒なので安心してお薦めできる1枚である。

追記:誤解を招くような解釈なので、どなたか良識ある解釈をお願いします…

 

2002年2月20日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記