フルトヴェングラーのブルックナーなんて・・・
文:としちゃんさん
ブルックナー:交響曲第8番
フルトヴェングラー指揮ウィーンフィル
録音:1954年4月10日
Andante(輸入盤 RE-A-4070 )以前購入した、彼の第8や第7、第4を聴いても、あまりの録音の悪さやせせこましさに何とも聴きづらさを感じました。宇野功芳氏が彼のブルックナーを評して「やにっこい」と述べていましたが本当にうまいことをいう!と感心していました。
さて『アンダンテ』というと高級さを感じさせるパッケージと内容の良さに評判のレーベル。ベームの第7、フルトヴェングラーの第8、カラヤンの第9という後期の素晴らしい交響曲集に、つい高価さにめげずに購入。それはレコード芸術誌の評論にも後押しされたのですが。
一聴、感激しました。打ちのめされました。
それは最晩年のフルトヴェングラーが到達した、素晴らしいブルックナーの世界がありました。うまくいえませんが、ヨッフムが最晩年にライブで残したコンセルト・ヘボウとの第8(ターラ)に良く似ています。いや、ヨッフムがフルトヴェングラーを尊敬していたというべきでしょう。
巨大なスケール、音色の奥深さ、壮絶な決めの一撃。ベートーヴェンの第3(EMI)で聴くことができるあの雰囲気は、決して録音の魔術によるものだけではなく、まぎれもなくフルトヴェングラーの晩年の境地だったのだと改めて納得させられました。
いやはや、これはおいそれと聴く気にならない、大切な音盤となりました。
レコード芸術誌には、同じく晩年のブルックナー第7も、神々しいまでの名演だったとのこと。『アンダンテ』や、日本の『アルトゥス』のようなレーベルにぜひ発掘してほしいと念願します。
2002年9月13日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記