ホルショフスキー・カザルス・ホール・ライヴ’87を聴く
文:としちゃんさん
ホルショフスキー・カザルス・ホール・ライヴ’87
ミェチスラフ・ホルショフスキー(ピアノ)
録音:1987年
FUN HOUSE 32ED−7037曲目
バッハ:イギリス組曲第5番ホ短調、BWV.810
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番へ単調、K.322
ヴィラ=ロボス
- 満ち潮
- 誰でも通るこの橋
ショパン
- 即興曲第1番変イ長調、Op.29
- ポロネーズ第1番嬰ハ単調、Op.26−1
- スケルツォ第1番ロ短調、Op.20
- マズルカ第25番ロ短調、Op.33−4
このCDを知ったのは石井宏氏の著作からでした。ホロヴィッツの日本公演について、その他の音楽家の性格の破綻についてなど、内部告発めいていてあんまりさわやかな内容ではなかったように記憶しています。
その本はもはやどこかへいってしまいました。しかし、この著作の中で、石井氏がほとんど唯一といっていいほど心からの感動をもって賛嘆している現役(当時)音楽家、ホルショフスキーのCDは、まさに一生の宝といっていいほどの存在となっています。
バッハのイギリス組曲の輝くような、強靭な音のすごいこと!続くモーツァルトのソナタのアダージョの、ほとんど神の恩寵のような美しさ。これを聴いたら、俗っぽいハイドシェックの演奏はもはや聴いていられません(あくまでも、私は)。
それで一番の私のお気に入りがヴィラ=ロボスの2曲です。特に『満ち潮』の不思議な音のパレットには、何度聴いても心が洗われます。
「マズルカのお国訛り」(石井氏の表現)は、なるほど、こりゃあ唯一無二の演奏だなとしみじみ聴き入るのみです。
ちなみに姉妹品(?)の『ホルショフスキー カザルス・ホール・メモリアル・アンコール』(FHCE−2013)も、神の技のような夜想曲やモーツァルトのアダージョが聴けて必聴のCDです。
2002年10月20日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記