カラヤンの指揮でモーツァルトの交響曲を聴く
文:ろーたこっほさん
モーツァルト
交響曲第29番イ長調 K.201
交響曲第35番ニ長調「ハフナー」K.385
交響曲第36番ニ長調「リンツ」K.425
交響曲第38番ニ長調「プラハ」K.504
交響曲第39番変ホ長調 K.543
交響曲第40番ト短調 K.550
交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K.551
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル
録音:1970年9月、イエス・キリスト教会(ベルリン)
EMI 輸入盤
- CDM 566098 2(29番、35番、36番)
- CDM 566099 2(38番、39番)
- CDM 566100 2(40番、41番)
カラヤンのモーツァルトというと、レガート過剰で軽妙さに欠け、時折著しく不適切なテンポをとる印象があります。このサイトで推薦されていたベルリンフィルとの「魔笛」もそうした欠点を感じる部分が散見され、あまり感心しませんでした。
しかし、カラヤン+ベルリンフィルが70年代初めに録音した後期交響曲集は別格の素晴らしい録音が揃っていると思います。数あるモーツァルト「後期交響曲集」の中でもこれほどの名演が揃っているのものは他にないと確信します。「ジュピター」はクーベリックのライブ盤(ORFEO)も素晴らしいですが、完成度ではこのカラヤン盤に及びません。
カラヤンの指揮に上記のような欠点が感じられず常に推進力に富んでいること。そして、当時のベルリンフィルは木管楽器にゴールウェイ、コッホ、ライスター、ピースクなど最高の名手が絶頂期を迎えており、そのアンサンブルは他に得られない圧倒的なものです。弦楽器のゴツゴツしたドイツ的な響きも魅力です。同じコンビが70年代後半に録音したDG盤(輸入盤429 668-2)は演奏・録音ともあまりお勧めできません。エコーをかけたような人工的な響きが耳障りです。その点EMI盤は録音のバランスも優れています。私は上記輸入盤しか聞いたことがありませんが、ARTリマスターが良いためか、この年代のEMIとしては実に自然で聞きやすい音質です。
カラヤンのモーツァルト交響曲では、65年夏にサンモリッツで録音した29番と33番も素晴らしい演奏です(上記DGの後期交響曲集に含まれる)。特に33番は一度聞いたら忘れられない魅力があります。
2002年2月24日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記