繊細さと剛毅さの溢れるシベリウス

文:としちゃんさん

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CDジャケット

シベリウス
交響曲全集
オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団
録音:1995,1996,1997年
BIS(輸入盤 BIS-CD-1286/1288)

 シベリウスの交響曲を聴いたのは、ベルグルンド=ヘルシンキフィルによる廉価盤を手に入れたためだった。しかし、愛好するまでには至らず。いつの間にか手放してしまった。飽きてしまったのだ。

 学生時代のアイドルだったバーンスタインによる第2番(ウィーンフィル盤)は、豪華絢爛の絵巻を繰り広げていて面白かった。しかし社会人になったある日、

「あぁ、重苦しいな…バーンスタインはもう、病人だったのだな」

と思い、5・7番のCDと合わせて手放してしまった。あれほど感激した彼のマーラーも今、手元に2番と3番しか残っていないとは、ある意味感慨深い。

 自分なりに、大人になったのだと思う。自分が好きだと思う曲のみに集中し始めたのだ。

 その後、カラヤンのグラモフォン盤(4・5・6・7&タピオラ)を愛聴してきた。スーパーオケ集団によって初めて曲の凄さが表現されたと感じたのだ。

 ヴァンスカ盤のことを知ったのは小説家の宮城谷昌光氏の書いた『クラシック 私だけの名曲 1001曲』という本を見つけたときだ。定価5800円!なんて分厚い(辞書みたい)!その厚さと値段に恐れ入ってその日は立ち読み。後に購入。そして運命のシベリウスの項目を見ることができたのだ。

 繊細さと剛毅さの溢れる、すごいシベリウスだった。私自身飽きがきていた2番が、なんと感動的に胸に響いたか。5番の初稿の厳しさと魅力といったら。言葉もない。CD一枚に6番・7番・タピオラという、黄金のカップリングにも感心。作り手の愛情を感じる。

 オーケストラの響きが、まさに本場物としか言いようがない魅力に満ち溢れている。弦楽器のざわざわとした雰囲気。背筋がぞくぞくする。決め手のトランペットの感受性あふれる吹奏ぶり。音楽のために持てる技量の全てを捧げている。演奏者の神経に、直にふれるようだ。こういうのを「美」というのだなと思う。

 カラヤン盤も一つの極致だ。凄い。しかしヴァンスカ盤は大切に、大切に今後も聴き続けたい宝物となった。

 

2004年8月17日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記