「TOSCANINI THE 4-4 1954 FINAL CONCERT IN STEREOを聴く」
文:田中ちゃん
WAGNER
LOHENGRIN:Prelude to Act1
SIEGFRIED:Forest Murmurs
GTTERDAMMERUNG:Dawn and Siegfried's Rhine Journey
TANNHAUSER:Overture and Bacchanale
DIE MEISTERSINGER VON NURUNBERG:Prelude to Act1
Music & Arts(輸入盤 CD -3008)ある日、荷物からトスカニーニのラストコンサートのCDが出てきた。おや、と思い仕事をしながら聴き流していた。
あぁ、なんて美しい、と思った。なんという透明な音色!ヴァイオリンは艶かしく色っぽい音色をふりまき、低弦が大人の音を出す。そうかと思えば金管楽器はものすごい名人ぞろい。素晴らしい技術によってワーグナーを満喫させる。そして木管楽器は時に可憐ともいえる表情豊かな演奏振りだ。
では以前聞いたRCAの録音群は、何だったのだろう。どうやら古い録音には、音の雰囲気や音色が入りきらないようだ。それこそ、人を感動させるものであるが。昔聞いた「新世界より」とかベートーベンの交響曲には、このラストコンサートの音源から匂いたってくる、音の色彩がない。
しかし、もし、このCDに聴くような音を聞いてアメリカの聴衆が熱狂していたとしたら、さもありなん。演奏技術もさることながら素晴らしい音のパレットを前に、皆至福のひと時であったろう。トスカニーニとNBC交響楽団、なんと素晴らしい仕事振りか。
この音源は、なんとステレオ録音とのこと。このCDのおかげで、トスカニーニの偉大さの一部分でも知ることができたように思う。
PS. 以前、「トスカニーニのラストコンサート」という題名でこのような内容をレコード芸術誌に投稿したことがありました。掲載されてうれしかったのですが、今聞いてみてもやっぱりこの音楽はすごい!なんで、この音源こそ、RCAは正規発売に踏み切らないのか。これを聞いたらきっと、目から鱗という人が増えると思うのに!
2002年4月9日掲載、An die MusikクラシックCD試聴記