ARCHIVE OF WHAT'S NEW?
2007年1月

アーカイブのインデックス ホームページ WHAT'S NEW


CD2007年1月20日(土):大フーガ

今日は映画「敬愛なるベートーヴェン」がさいたまでも上映されることになったので観てきました。余談ですが、女房に「ベートーヴェンの映画を観に行くよ」と言ったら「ああ、犬の映画ね」と言われました。映画界におけるベートーヴェンの地位は犬に負けています。しかも、さいたまでは今日から上映だというのに1日3回だけです。昨年封切られた「硫黄島からの手紙」はいまだに1日5回上映されているというのに何という違いでしょう。

「敬愛なるベートーヴェン」にはベートーヴェンの楽譜を写譜する美人写譜師が登場します。交響曲第9番の初演4日前だという設定でした。となると、初演が大成功したところで感動の嵐となって映画が終了するのかと思いきや、そうではないのですね。ベートーヴェンは「第9」の後に名作揃いの弦楽四重奏曲を作曲します。その断章が映画の中にいくつか現れますが、映画後半のメインは「大フーガ」でした。何と監督は交響曲第9番と「大フーガ」を対比したかったのですね。

「大フーガ」はベートーヴェン自身が「醜い」と言い放っています。ベートーヴェンを崇拝する美人写譜師にも理解されません。初演はさんざんで、演奏中に聴衆がどんどん席を立ってしまいます。ベートーヴェンはひとり曲の出来と演奏に満足しますが、その瞬間彼は突如として倒れてしまいます。その病から回復したときに弦楽四重奏曲第15番 イ短調 作品132の第3楽章「病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」を作曲するという展開でした。あの幸福な旋律を美人写譜師が口述筆記しています。映画はおおよそそこで終わります。音楽を上手に聴かせる映画でした。が、テーマが「大フーガ」をはじめとする弦楽四重奏曲というのは実に地味ですねえ。そういう構成の映画が大ヒットするはずがありません。昨今の映画は派手なアクション、強烈な音、奇想天外なストーリー展開のものばかりですからね。

しかし、こういう映画を作って世に問う監督がいるわけで、すごいものだと思います。この映画によって「大フーガ」のブームが来るなどとは思えませんが、ベートーヴェン最晩年の弦楽四重奏曲に焦点が当てられるなんて素敵ではないですか。クラシック音楽ファンなら観ておいて損はないでしょう。

 

CD2007年1月9日(火):ノーノ

あなたもCD試聴記を書きませんか」のコーナーに「現代音楽を少し聴いてみました」を追加しました。文は稲庭さんです。稲庭さん、年始からすごい原稿をありがとうございます。

 

CD2007年1月8日(月):恥ずかしい有名曲

1月5日に東京銀座の某居酒屋にて新年会を開催しました。その際、参加者から興味深い発言がありました。

「クラシック音楽って恥ずかしいですよねえ。」

何も全てのクラシック音楽が恥ずかしいという意味ではなく、最初に聴き始める有名曲には真剣に聴こうとするとちょっと赤面しそうなものがある、ということです。

新年会の会場でも出ましたが、すぐ予想される「恥ずかしい曲」にはベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の第1楽章があります。これはクラシックを全く聴かない人でも知っている超有名曲ですから、スピーカーの前にちょこなんと座って耳を傾けるのは恥ずかしいのかもしれませんね。

私はどういうわけかこの曲が恥ずかしいと感じたことがありません。

余談ですが、新年会の直前に、私は中学1年の姪にあげるCDを山野楽器で1枚買い込んでいました。クライバー指揮ウィーンフィルによるベートーヴェンの交響曲第5番・第7番のCDです。「のだめ」ファンである姪に交響曲第7番のCDをプレゼントしようと思い立ち、ついでに5番も入っているCDを、と思うと、まあクライバーのCDになるわけですね。

このCDを私は何年も聴いていませんでした。「どんな演奏が聴けたんだったかな」などと思った私は確認のため5番からCDを聴き始めました。そして怒濤のように始まった「運命」に改めて圧倒されてしまい、恥ずかしいと思う暇は今回もありませんでした。この曲に関しては、クラシックを聴き始めたときからそうだったのです。

そんなことを書いている私でも、どうしようもなく恥ずかしく感じる曲が1曲あります。メンデルスゾーンの「結婚行進曲」です。これは「真夏の夜の夢」の一部ですが、ほとんどの場合聴いていて赤面します。おおよそ真面目に聴いていられません。恥ずかしいといったらこの曲に過ぎるものはありませんね。

ところが、この「結婚行進曲」にもものすごい演奏があります。クレンペラー盤です。

CDジャケット

メンデルスゾーン
序曲「フィンガルの洞窟」作品26
録音:1960年1月
劇付随音楽「真夏の夜の夢」
ソプラノ:ヘザー・ハーパー
メゾ・ソプラノ:ジャネット・ベイカー
フィルハーモニア合唱団(歌唱:英語)
クレンペラー指揮フィルハーモニア管
録音:1960年1,2月
EMI(国内盤 TOCE-3064)

クレンペラー盤は「真夏の夜の夢」の代表盤として知られていますので、多くのクラシックファンが手元にお持ちだと想像されます。ぜひ1度真剣に「結婚行進曲」を聴いてみて下さい。これだけの威容を誇る演奏は類例がなく、私はいつも身体が熱くなってきます。「結婚行進曲」は通俗的に使われすぎているために、他の演奏では聴いている方が恥ずかしくなるのですが、クレンペラー盤はまさに別格。こんな演奏ができたからクレンペラーは大指揮者といわれたわけで、その演奏に古さを感じさせません。

さて、皆さんにも「恥ずかしくて普通は聴いていられない。でも、このCDだけは違う」という推薦盤はありませんか? 

 

CD2007年1月3日(金):謹賀新年

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合い下さいね。

年末年始は私の田舎、福島市に帰って、全くの非日常的生活を満喫してきました。5泊6日の日程ですが、あっという間でした。毎年のことながら、さいたまに戻ると浦島太郎にでもなったような気分になります。

私の田舎にはCDプレーヤーもないのでクラシック音楽とは無縁の時間を過ごしますが、自宅に戻ったらアンプを暖め、しばらくしたところでCDを聴き始めます。ただし、漫然と聴き始めるのではなく、今年はどれにしようか考えてからにしました。その結果、ラックから取り出されたのは以下のCDでした。

CDジャケット

バーンスタイン自作自演集

  • 「キャンディード」序曲
  • 「ウエストサイド物語」から「シンフォニック・ダンス」
  • 「波止場」から「交響組曲」
  • バレエ音楽「ファンシー・フリー」

バーンスタイン指揮ニューヨークフィル
録音:1960-63年(「キャンディード」序曲は1960年9月28日録音)
SONY(輸入盤 SMK 63085)

このCDには「キャンディード」序曲というバーンスタインの傑作が入っています。華々しい出だしの後に弦楽器で歌い出される流れるような旋律を聴くと、わくわくしてきます! 単細胞な聴き方なのでちょっとお恥ずかしいのですが、この曲を聴く度に私は元気をもらえますし、なんだか少し若返ったような気分にもなります。そう思った方はいらっしゃいませんか? 「キャンディード」序曲は20世紀の曲ですから、クラシックとは呼べないかもしれません。しかし、私にとってはクラシック音楽の最も楽しい側面を味わわせてくれる名曲です。どんなときでも「頑張るぞ!」という気持ちにしてくれます。

明日から日常生活への復帰です。皆様にとっても、私にとってもよい1年となりますように。

 

(An die MusikクラシックCD試聴記)