■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

2002〜2003 シーズンを振り返って
トン・コープマンさんボストン響に登場

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トン・コープマン指揮ボストン交響楽団

2003年1月18日 午後8時〜
マサチューセッツ州ボストン、シンフォニー・ホール

今回のプログラムは、いつもよりちょっぴり時代を遡りバロック派と古典派の音楽で統一されています。「音楽の父」と言われるバッハ、「交響曲の父」と言われるハイドン(と確か中学校の音楽の授業で習いましたよね)、ともにライブで聴くのは初めてです。

一曲目のバッハの管弦楽組曲第3番は、第二曲のアリアが「G線上のアリア」としてよく知られています。バロック音楽だけに大編成のオーケストラではなく総勢25人の小編成のオーケストラで演奏されました。見た目にはいつもの4分の1といった感じです。今回指揮したコープマンは速めのテンポを基調としながら生き生きとした音楽を創っていきました。速めといってもセカセカした感じはなく、また一本調子に陥ることもなく自在に強弱を付けながら躍動感のある音楽を聴かせてくれました。アリアは清廉といった趣で、非常に慎ましく清らかで美しかったです。妻もCDで聴くよりも今日の演奏の方が素晴らしいと言っていました。ボストン響の弦楽パートの好調さが発揮できた演奏であったと思います。その他の部分でも常日頃感じる管楽器群への不満もなく、むしろコクのある素晴らしい響きを堪能させてくれました。指揮者のコープマンは大きな身振りで一生懸命に指示を送り、オーケストラを引っ張っていました。その指揮姿からは、音楽をすることの喜び、楽しさが伝わってきて大変好感が持てました。

2曲目もバッハの曲でカンタータの170番です。バッハは多量のカンタータを書いていますが、当然のことながら私たちは普段はなかなか聴く機会がありません。今回の演奏会に備え、CD(リリング指揮バッハ・コレギウム・シュトットガルト(haenssler))を購入し予習して演奏会に臨んだのですが、CDの演奏ではアルトが歌っていたソロパートを演奏会ではカウンターテナーのショルさんが歌いました。最初登場したときにはコープマンより遙かに大柄なそのソリストの風貌に違和感を覚えましたが、その体から出てくる声は大変清らかな美しい声でした。出だしはやや弱いかなと、わたしは思いましたが、妻に言わせると、その最初の出だしが伴奏のオーケストラにぴったりと合っており鳥肌が立つほどだったとのことです。女性の声のような色気もなく、バッハの清純な音楽にはより適していたと思います。特に第五曲目のアリアが素晴らしい出来でした。私たち夫婦はこのアリアに終始登場する明るい親しみやすいメロディーが好きになってしまいました。

ここまでで今日のコンサートは十分に満足したのですが、休憩を挟んでの後半はハイドンの交響曲第99番を聴きました。この曲はハイドンの傑作の一つであるらしいのですが、実は聴くのは初めてのことです(汗)。なぜかこの曲の入ったCDが地元店では手に入らず、予習なしに聴くこととなりました。オーケストラは中規模編成に変わりましたが、やはり響きは美しくコクのあるものです。この曲もやや早めのテンポで一気に聴かせてくれました。特に強く印象に残らなかったのはやはり予習をしていないからでしょうか。でも指揮者の頑張りもあり音楽を聴く楽しさを再認識できたコンサートでした。ただ一つ、どの曲も20〜30分程度なのでもう一曲聴いてみたかった、というのは欲張りでしょうか。


(2003年6月24日、岩崎さん)