■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

2003年タングルウッド音楽祭
ルネ・フレミングさんのR.シュトラウスの『四つの最後の歌』を聴く

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指揮:クリストフ・ぺリック

2003年8月9日 午前10時30分〜(オープン・リハーサル)
マサチューセッツ州レノックス、タングルウッド、クーセヴィツキー・シェッド

オール・リヒャルト・シュトラウス・プログラム

この日のコンサート、完全にフレミングさんの声を目的に行きました。オープン・リハーサルを選んだのも安いチケットで出来るだけ間近で彼女の声を聴きたかったからです。しかも曲がR.シュトラウスの『四つの最後の歌』ですから聞き逃せません。『四つの最後の歌』で必ず出てくる名盤といえばシュワルツコップさんとヤノビッツさんのものですね。わたしも両方持っていまして、それぞれ惹かれるところがあるのですが、この曲に関しては声がオーケストラの中に溶け込んでしまっているヤノビッツさんのほうがわたしは好きです。

さて、コンサートはまず、『13の管楽器のためのセレナーデ』から始まりました。ふと気づくと指揮者は告知されていたエド・デ・ワールトさんではありません。プログラムはエド・デ・ワールトさんのままになっていましたから急に変更になったようですね。まったく面識のない若い指揮者が溌剌と振っていました。帰ってからボストン響のホームページで調べてみると、この方はクリストフ・ペリックさんであることが判明しました。なんでもドレスデン国立歌劇場(ゼンパー・オパー)の首席客演指揮者も務めたこともある人だとか・・・。知ったのはコンサート後でしたが。

『13の管楽器のためのセレナーデ』はあまり印象に残ってないのですが、13(この演奏会では実際には14の楽器が演奏していた)の管楽器のうち5つがホルンでした。シュトラウスさん、若い頃からホルンがきっと好きだったのですね。

次はお待たせフレミングさんが歌う『四つの最後の歌』です。ここに集まった多くの聴衆も同じ気持ちだったようで、大きな拍手が巻き起こります。それにしてもフレミングさん、普段着ですが、登場しただけで舞台がパッと明るくなりますね。スターのオーラというか、ものが違うという感じです。またちょっとした仕草が憎らしいほど決まっています。歌っている最中もずいぶんとリラックスしているようで両手をぶらぶらさせたり、眼鏡をはずして手に持ったりするのですが、普通の人がやると嫌味に見えそうな行為がかっこよく見えます。そうまるっきり芸能人といった感じでしょうか。これで歌がひどけりゃ、こんなこと言ってられないのですが、歌声が予想以上に素晴らしい。シュワルツコップさんのように素晴らしい技巧で聞かせるというよりはヤノビッツさんのようにオーケストラの中に溶け込むといった感じです。ヤノビッツさんほど声に艶はなくややハスキーな歌声ですが、その歌声にはおおらかな無理のない流れがあり、その中に安心して浸ることが出来ます。特に第三曲のバイオリンソロの登場の後からは頭がボーっとするほど浸ってしまいました(笑)。ボストン響も良かったのですが、第四曲冒頭ではさらに美しい弦の響きが出せるはずだと思いました。演奏後はリハーサルにしては異例の多くのブラボーが飛び交いました。その後アンコール用でしょう。三曲ほど歌うサービスまでフレミングさんは見せ、最後までかっこよく振る舞い帰って行きました。

続いては『アルプス交響曲』、予習用CDを妻に聞かせ、嫌いなタイプの曲と断言された曲です(涙)。しかし実演で見る(?!)分には楽しかったようで、登頂後のクライマックスの部分でのオーケストラのすさまじい音の洪水、また嵐の部分でのウィンドウマシンや雷の音を模写してガラガラと鳴らす巨大な金属板には感心しておりました。

最後に、今日の指揮者のペリックさんですが、華麗なバトンテクニック(私にはそう見えました)で細かく颯爽と振る姿は今週見たノリントンさんの指揮姿と対照的でした。しかしそれ以外あまり印象に残っていないのは、やはりフレミングさんが輝いていたせいだと思います。


(2003年8月20日、岩崎さん)