■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

ボストン・シンフォニー・ホールについて

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ボストン・シンフォニー・ホール外観私が最も行く機会の多い、ボストンのシンフォニー・ホールは、言うまでもなくボストン交響楽団の本拠地であります。その少し古めかしい茶色の煉瓦造りの建物はボストンダウンタウンの西方にあるバック・ベイと言う地区に位置し、交通量の多い大通りに面した場所にあります。そのせいもあり、時々けたたましい救急車のサイレンなどが周辺から聞こえてきます。しかしコンサート前ちょっと早めに行くと、ホール内は不思議なほど静かで、落ち着いた雰囲気を味合うことが出来ます。もちろん音響は素晴らしく、私がアメリカに来てから訪れたニューヨークのエブリフィッシャー・ホール(ニューヨーク・フィルの本拠地)やカーネギー・ホールを始め、シカゴやモントリオールなどのホールなどと比べてもその柔らかな心地よい響きは特別なものがあるようです。

ボストン響の創立は1881年ですが、シンフォニー・ホールは1900年に建てられました。不思議なことに建物自体にはどこにもシンフォニー・ホールの記載はありません。しかし目の前には地下鉄のシンフォニー駅がありますし、ボストン響の垂れ幕がかかっていますから間違えることはありません。このホールはボストン・ポップスの本拠地でもあり、夏の間はその垂れ幕がボストン・ポップスに変わります。

ボストン・シンフォニー・ホール舞台ホールはいわゆるシューボックス型で、オーケストラ(一階)、ファーストバルコニー、セカンドバルコニーとあわせて2,625の座席があるそうです。舞台後方には壮麗なパイプオルガンが構えています。舞台の外縁は彫刻が施されており、その上部中央のプレートにはベートーベンの名が刻まれています。ホール内にはこのほかにも至る所にこのようなプレートを見ることが出来ますが、名前が刻まれているのはこのプレートのみです。何でもこのホールを建てたとき、ベートーベンに並ぶような優れた音楽家が出現したときに名前を彫る約束だったらしいのですが、当然のことながら現れるはずもなく、他のプレートは無記名のまま現在に至っているようです。

ホール内、側後壁にはギリシャ神話を思わせるような彫像が並び、天井からは大きなシャンデリアがかかっています。

建物内一階と二階にはコンサート前や休憩時間にワインやコーヒーなどを飲めるちょっとした部屋があり、特にコンサートの間の休憩時間には多くの人でごった返しています。アルコールに弱い私達夫婦のお気に入りはカプチーノとチョコレートテイストのビスケットです。

ボストン・シンフォニー・ホール内のポートレート ハイティンクと小澤また赤絨毯のしかれた廊下の側壁にはさまざまな展示がしてあり、現在のボストン響の団員や、歴代の音楽監督の顔写真なども掲げられています。昨年までの音楽監督である小澤征爾さんと現在も客演主席指揮者であるハイティンクさんの写真は仲良く並んで掲げられています。なぜか現音楽監督のジェームス・レヴァインンさんの写真はまだありません。

またシンフォニー・ショップも同じ建物内にあります。ボストン響のロゴグッズをはじめボストン響自主制作のCDなども売られています。注意したいのはこのショップ、コンサートのチケットを持っている人しか入れないことです。また夜のコンサート後にはすでに閉まっているので、何かお土産を買おうと思っている人はコンサート前に購入することをお勧めします。

ボストン・シンフォニー・ホールの客席昨年まで音楽監督であった小澤征爾さんはこのホールのセカンドバルコニー最後方の中央の席が一番音がよいと言ってお気に入りでよく他人の演奏会なんかを聴いていたみたいです。その席には記念の金属プレートが付けられています(私達は単に値段が安いのでこの近辺によく座っています)。ホールの裏手のすぐ近くの駐車場には小澤さんが指揮するボストン響の光景が壁画として描かれています。きっとボストン市民に愛されていたのでしょうね。

私は日本にいるときには決して小澤さんのファンではありませんでした。日本のいろいろな批評家の影響があったことは否めません。しかし昨年のタングルウッドでの素晴らしい演奏を聴いて以来、自分の考えを改めました。私は残念ながら小澤さんの指揮するボストン響をシンフォニー・ホールにて聴いたことがありません。小澤さんは今年のプログラムにも一応、"Music Director Laureate(桂冠指揮者)"として名前が載っていますが一度も登場することはなく、また来期の定期公演にもその名前はありません。ウィーンが忙しいのでしょうが、ちょっと寂しいです。


(2003年5月12日、岩崎さん)