■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

オペラって素晴らしい! そのニ
メトで「ラ・トラヴィアータ 椿姫」を観劇する

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 ラ・トラヴィアータ 椿姫

 

ヴェルディ:歌劇「ラ・トラヴィアータ 椿姫」
ワレリー・ゲルギエフ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団

  • ヴィオレッタ:ルネ・フレミング(S)
  • アルフレード:ラモン・ヴァルガス(T)
  • ジェルモン:ドミトリー・ホロストフスキー(Br)

演出:フランコ・ゼッフィレッリ

2004年3月6日 午後1時30分〜
ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場

 

突然ですが、私たち夫婦は「ラ・トラヴィアータ」が大好きです。今回も含めて計3回、生の舞台を観ましたが、いずれも大泣きしました。ゼッフィレッリ監督、ストラータス、ドミンゴ主演のDVDを初めて観たときも泣きました。どうしてなのでしょう。初めて観る時はともかく、二回目からは話の筋も知っていますし、結果も分っているはずなのに・・・。お話だって乱暴な言い方をすれば、田舎から出てきた世間知らずのボンボンが高級娼婦と恋に落ちたが、自分勝手な親父に別れさせられ、女に逆恨みして札束を投げつけて後悔するも後の祭り、結局女は死んでしまう、と言う最近のよく出来たテレビドラマに比べたらとんでもないストーリーなのですが、それでも毎回感動してしまう!!よくよく考えてみると、これこそオペラの魅力のひとつなのかも知れません。そこに音楽と、舞台演出という二つものが加わり融合することによりとんでもない力を放射するということが!!

メトでは昨シーズンも「ラ・トラヴィアータ」を観たのですが、今シーズンのオープニング・コンサートとしても話題になった主演ルネ・フレミング、指揮ワレリー・ゲルギエフという豪華な組み合わせをどうしても生で観てみたくこの公演に馳せ参じたのでした。

お目当ての一人であるルネ・フレミングさんのヴィオレッタ、予想通りの美しさでした。そのややふくよかな体格は肺を病んでいる役柄には見えませんでしたが、白を基調とした美しいドレスを身にまとい優雅に歌う姿はまさにプリマ・ドンナと言えるものでした。彼女の声は柔らかいオブラートに一層包まれているようなデリケートな声で、他を圧するような力強さや、太さはありませんが不思議とよく通ります。それでも第一幕はやや苦しそうなところもありました。そんな彼女の本領が発揮されたのは第三幕に入ってからです。有名な「さよなら、過ぎ去った日よ」のアリアは特に素晴らしく終わってほしくないほどだったのですが、歌い終わったと思ったらまた前奏から始まってもう一回歌い面食らいました!!(これって私の聴き間違いでしょうか!?)病床からアルフレードに形見である自分のポートレイトを渡す場面からはそのストーリー、音楽の悲しさもさることながらフレミングさんの切々とした歌に涙が止まりませんでした。

アルフレードを歌ったラモン・ヴァルガスさんは、フレミングさんとは違ってもっとストレートに感情も声も出てくる感じでした。でもそれが純情で若いアルフレードのキャラクターにマッチして素晴らしかったのではないかと思います。ホロストフスキーさんの演じるジェルモンはちょっと上品になりすぎた感じがしました。でもとても素敵な声でうまかったのは事実です。

ゲルギエフさんはかなりオーケストラにものを言わせようとしているのが良く分りました。かえって伴奏がうるさく感じるところがなかったとも言えませんが、盛り上がるところでの激しいドライブ感や、今まで聞こえなかった意味深い音が聴こえてきたりしてハッとする箇所もありました。

ゼフィレッリ演出の華やかな舞台は二回目でもまったく飽きが来ません。それどころか観るたびにウキウキします。第一幕の「乾杯の歌」の場面など、歌や音楽が素晴らしいことはもちろんですが、その華やかな舞台がこの場面をさらに胸躍るものにしていることは明らかでしょう。また第二幕第二場のマドリードの闘牛士が登場する場面、私は密やかにここで現れる「闘牛」(闘牛士ではなく)が大好きです。牛の被り物を着け、ユーモラスに踊る姿にはいつもニヤニヤしてしまいます。そして、その後の物量も伴った圧倒的な盛り上がりは音楽と共に演出の勝利だと思いました。

何回観ても新たな感動を呼ぶ「ラ・トラヴィアータ」、本当に素晴らしいオペラですね!!

 

■ 私のお気に入りDVD

 

ヴェルディ:歌劇「ラ・トラヴィアータ−椿姫−」
ジェームズ・レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団

  • ヴィオレッタ:テレサ・ストラータス(S)
  • アルフレード:プラシド・ドミンゴ(T)
  • ジェルモン:コーネル・マクニール(Br)

監督・脚本・美術:フランコ・ゼッフィレッリ

ユニバーサル・ミュージック(国内盤USBG-3012)

 

自宅で楽しむ場合、フランコ・ゼッフィレッリが監督を務めた映画版がなんといってもお薦めです。クライバー指揮のCD等ももちろん素晴らしいのですが、もし初めて聴くなら映像があったほうが物語りに入りやすいです。その映像もこのDVDなら文句がありません。映画版ならではの演出も物語をわかりやすくしています。配役がまた絶妙で、まだ若いドミンゴが素晴らしいのはもちろん、いかにも肺を患い、不幸を背負っていそうなヴィオレッタを演じるストラータスがイメージにピッタリです。あえて難点を探すならば、どのCDを聴いてもこのDVDの映像が頭に浮かんでくることでしょうか・・・。

 

2004年4月21日、岩崎さん