ベルナルト・ハイティンク 作曲家別録音歴
■ベートーヴェン篇■

(文:青木さん)

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1.コンセルトヘボウ管 その1(1960〜1970年代)

 

 ハイティンクのベートーヴェン初録音は1960年5月で、その曲は少々意外なことに二曲の「ロマンス」でした。ヴァイオリン独奏はグリュミオー、オーケストラはもちろんアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団です。データを見ますと、同じくグリュミオーとのメンデルスゾーン及びチャイコフスキーの協奏曲と録音年月日が一致していますので、これらは同一のレコーディング・セッションだったと考えられます。そのちょうど10年後に、ハイティンクとコンセルトヘボウ管はこの二曲を、今度はシェリングと再録音しました。これはチェロのシュタルケルを加えたブラームスの二重協奏曲と同時に録音されたものです。LPはおそらくその組み合わせだったのでしょう。

 交響曲では、後述するロンドン・フィルとの録音の10年以上も前の1962年に、コンセルトヘボウ管とベートーヴェンの交響曲第8番を録音しています。カプリングはメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」(これものちにロンドン・フィルと再録音)ですが、この録音は1963年に発売されて以来、どうも再発売された形跡がありません。超レア盤といえましょう。ちなみに1962年4月のコンセルトヘボウ管の初来日公演で、ハイティンクはその第8番と「イタリア」を演奏しています。しかしそのときこの国内盤LPはまだ発売されていなかったようで、公演プログラム冊子の巻末に掲載された日本ビクターの広告(フィリップスの国内盤は当時ここから発売)の中の「来日記念発売曲目」欄にも掲載されていません。

 1964年には、アラウと組んでピアノ協奏曲の全曲を集中的に録音しました。このあとコンセルトヘボウ管は1967年から1970年にかけ、ヨッフムの指揮によって交響曲全集・序曲集(一部は1960年)とミサ・ソレムニスを録音しており、フィリップスのベートーヴェンは「1960年代がコンセルトヘボウ管、1970年代がロンドンの楽団(ハイティンク、デイヴィス、インバル指揮)」というラインナップとなります。

CDジャケット

 しかし例外がひとつ。1970年代のロンドン・フィルとのベートーヴェン・チクルスでは、ヴァイオリン協奏曲だけが抜け落ちています。これは、そのチクルスが開始される直前にコンセルトヘボウ管と二種類もの録音があったためでしょう。1973年にはシェリング、1974年にはクレバースのバックを、いずれもハイティンク指揮コンセルトヘボウ管が務めているのです。ちなみにシェリングとの録音は、ブラームスの協奏曲と同一のセッションだったようです。

 これらのCDについては、交響曲第8番以外は複数の形態で発売されており、いずれもお馴染みのものだと思います。ただ、クレバースとの協奏曲は、1995年の"DUO"シリーズ「ベートーヴェン/協奏曲全集2」が国内初登場とのことです。輸入盤では"CONCERT CLASSICS"シリーズや"DUTCH MASTERS"シリーズ(左ジャケット写真)でもCDになっていました。

 なおこれは少し性格の異なるものですが、1973年にはピアノ協奏曲第3番の映像収録が行われています。独奏はルービンシュタインで、演奏会の録画ではなく、コンセルトヘボウ大ホールを使用したスタジオ・ライヴ形式。VHSやLDで発売され、2001年7月にDVD化されました。

 またハイティンクとコンセルトヘボウ管の来日公演でもベートーヴェンは毎回プログラムにのせられており、前述しました1962年4月の第1回公演と1977年5月の第4回公演で第8番、1968年9月の第2回公演では第3番「英雄」、1974年4〜5月の第3回公演では第7番が演奏されています。第1回と第2回では同行したヨッフムが第5番、第6番、第7番、「エグモント」序曲を担当していましたが、ハイティンクも負けじとベートーヴェンを披露していたわけです。また1968年の第2回公演で演奏された第3番「英雄」は、約30年を経過した1997年10月のウィーン・フィルとの来日公演でもとりあげられました。

【演奏者】

  • アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
  • クラウディオ・アラウ(p)  〔ピアノ協奏曲(1964)〕
  • アルトゥール・ルービンシュタイン(p)  〔ピアノ協奏曲第3番(1973Video)〕
  • ヘンリック・シェリング(vn)  〔ヴァイオリン協奏曲(1973) /ロマンス(1970)〕
  • ヘルマン・クレバース(vn)  〔ヴァイオリン協奏曲(1974)〕
  • アルテュール・グリュミオー(vn) 〔ロマンス(1960)〕

【レコーディング・リスト】(録音順、Video以外はすべてPhilips)

  • ロマンス第1番ト長調Op.40 1960.5.11-14.
  • ロマンス第2番ヘ長調Op.50 1960.5.11-14.
  • 交響曲第8番ヘ長調Op.93 1962.
  • ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58 1964.4.12.
  • ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15 1964.6.9-13.
  • ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」 1964.6.9-13.
  • ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37 1964.9.8-10.
  • ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op19. 1964.9.22-23.
  • ロマンス第1番ト長調Op.40 1970.9.14-15.
  • ロマンス第2番ヘ長調Op.50 1970.9.14-15.
  • ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61 1973.4.26-27.
  • ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37 1973.8. Unite-Decca (Video)
  • ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61 1974.12.9.

【国内盤初出】(< >内は発売年月)

ヴァイオリン協奏曲(1974) MME PHCP9295-6(CD) <1995.5.>

(その他は不明)

〔Video〕
ピアノ協奏曲第3番 LD:W00Z25022 <1989.6.>/VHS:POVL2016 <1999.3.>/DVD:UCBP1009 <2001.7.>

 

2.ロンドン・フィル (1970年代)

 

 ハイティンクとロンドン・フィルは、1974年から1977年にかけて、ベートーヴェンの主要なオーケストラ曲をフィリップスに録音しました。これは1974年の春、ハイティンクの来日の直前にロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで彼らが行ったベートーヴェン・チクルスが大好評だったことを受けて、録音がなされたということです。それらを録音順に並べてみますと、まず交響曲の全曲及び3曲の序曲が、計4回のセッションで集中的に録音されていることがわかります。そしてブレンデルを独奏に迎えたピアノ協奏曲全集と合唱幻想曲がやはり計4回のセッションで録音され、その合間にボザール・トリオとの共演による三重協奏曲が録音されています。

 ピアノ協奏曲の国内盤は、まず1976年2月に「皇帝」が発売された後、1977年8月に「合唱幻想曲」を加えた全集として発売され(1977年度のレコード・アカデミー賞受賞)、その後に残りの曲が分売されました。

 交響曲の国内盤は、最後に録音された第8・9番が、1977年のハイティンク来日の記念盤として4月にまず発売された後、序曲抜きの交響曲全集として発売され、その後1978年12月と1979年1月に他の曲が分売されています。その分売の際に序曲がフィル・アップされたようですが、それが3曲だけでは不足だったのか、1978年のメンデルスゾーン交響曲のレコーディング・セッションにおいてレオノーレ序曲が追加録音されました。

 この交響曲のレコードは当時よほど売れなかったとみえて、1981年の「フィリップス・クラシック総目録」(1980.10.発行)を見ますと、現役で生き残っているのは第8+9番の二枚組だけで、他の単売盤や全集は早くも製造中止となっているのです。CDについても、協奏曲のほうが何度もCD化されているのに対して、交響曲は第5番と第6番を組み合わせた一枚が1989年5月の「グロリア・シリーズ」と1992年5月の「クラシックCD文庫シリーズ」で出たきりだと思われます。ちなみに前者のシリーズでベートーヴェンの他の交響曲は、1・2番がヨッフム指揮コンセルトヘボウ管、3・9番が小澤指揮、4・7・8番がデイヴィス指揮、といういっぷう変わったセレクションでした。

 なおハイティンクとロンドン・フィルは一度だけ日本公演を行っており、ベートーヴェンではすでに「エグモント」序曲が演奏されています。首席指揮者への就任(1967年)からさほど間がない1969年9〜10月の来日で、このコンビではまだ録音も開始していない時期ですし、ハイティンク自身もこの前年にヘボウと2回目の来日をしたばかり。しかもハイティンクに同行したのは無名の指揮者。極東ツアーの一環としての日本公演だったとのことですが、観客動員数の実績はいかほどだったのでしょうか。

【演奏者】

  • ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  • ロンドン・フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:ジョン・オールディス) 〔交響曲第9番、合唱幻想曲〕
  • ハンネローレ・ボーデ(S)/ヘレン・ウォッツ(A)/ホルスト・ラウベンタール(T)/ベンジャミン・ラクソン(Br) 〔交響曲第9番〕
  • アルフレッド・ブレンデル(p) 〔ピアノ協奏曲、合唱幻想曲〕
  • ボザール・トリオ(p,vn,vc) 〔三重協奏曲〕

【レコーディング・リスト】(録音順、すべてPhilips)

  • 交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」 1974.11.18-21.
  • 交響曲第7番イ長調Op.92 1974.11.18-21.
  • 序曲「コリオラン」Op.62 1974.11.18-21.
  • 「エグモント」Op.84序曲 1974.11.18-21.
  • 交響曲第4番変ロ長調Op.60 1975.8.15-20.
  • 交響曲第5番ハ短調Op.67 1975.8.15-20.
  • 交響曲第6番ヘ長調Op.68「田園」 1975.8.15-20.
  • 「プロメテウスの創造物」Op.43序曲 1975.8.20.
  • 交響曲第1番ハ長調Op.21 1975.9.26-27.
  • 交響曲第2番ニ長調Op.36 1975.9.26-27.
  • ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15 1975.11.10-12.
  • ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37 1975.11.10-12.
  • ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58 1976.1.19.
  • ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」 1976.3.29-30.
  • 交響曲第8番ヘ長調Op.93 1976.3.29-30.
  • 交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」 1976.5.14-17.
  • ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲ハ長調Op.56 1977.1.24-25.
  • ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op19. 1977.4.6-7.
  • 合唱幻想曲Op.80 1977.4.6-7.
  • 序曲「レオノーレ」第3番Op.72a 1978.3.14.

【国内盤初出】(< >内は発売年月、すべてLP)

  • ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 X7695 <1977.2.>
  • 交響曲第8番+第9番「合唱」 SFL8713-4 <1977.4.>
  • ピアノ協奏曲全集(合唱幻想曲を含む) SFX9639-43 <1977.8.>
  • 交響曲全集 SFX9619-25 <1977.>
  • 三重協奏曲 X7807 <1978.2.>
  • ピアノ協奏曲第4番 X7862 <1978.7.>
  • ピアノ協奏曲第3番 X7719 <1978.9.>
  • ピアノ協奏曲第1番 X7718 <1978.10.>
  • ピアノ協奏曲第2番+合唱幻想曲 X7861 <1978.10.>
  • 交響曲第1番+第5番 X7925 <1978.12.>
  • 交響曲第6番「田園」 X7926 <1978.12.>
  • 交響曲第7番+エグモント X7927 <1978.12.>
  • 交響曲第2番+プロメテウス X7922 <1979.1.>
  • 交響曲第3番+コリオラン X7923 <1979.1.>
  • 交響曲第4番+レオノーレ X7924 <1979.1.>
 

3.コンセルトヘボウ管 その2(1980年代) 

CDジャケット

 ハイティンクは、ロンドン・フィルとの交響曲全集の最後に録音した第9番を、わずか4年後に同じフィリップスで再録音しています(左ジャケット写真)。今回のオーケストラはコンセルトヘボウ管で、当時はあまり一般的ではなかったライヴ録音、またハイティンクにとっては初のデジタル録音となるものでした。この曲だけの二枚組で、LPの一面に一楽章ずつという贅沢なカッティング。これはフィリップスにとって、デジタル新時代の幕開け(とコンセルトヘボウ管弦楽団合唱団の新設)を告げるための特別なアルバムだったのかもしれません。当時フィリップスは、ソニーと共同で開発したデジタルメディアであるコンパクト・ディスクの実用化を目前としていた頃です。

 それから3年後の1983年、そのフィリップスとソニー(コロンビア)の両レーベルで、コンセルトヘボウ管を起用したハイティンクの新しいベートーヴェンのレコーディング・チクルスが開始されました。そして、足かけ5年をかけて録音された交響曲やピアノ協奏曲が、次々にCDとして発売されていくのです。

 もっとも、交響曲全集に先駆けて先行発売された交響曲第5番と第7番は、LPも同時発売されました。全集のほうも、その半年後に出た国内盤(当時は輸入盤に日本語解説とタスキをつけて国内盤としていた)はCDだけでしたが、ブックレットを見るとLP及びカセットでも発売されたことがわかります。そのLPの全集は、全9曲+エグモント序曲がLP6枚に詰め込まれたため音質がいま一つで、CDのものをそのまま流用したCDサイズのブックレットとあいまって、どうもいただけないものだったとのことです(金井さん・談)。

 さて、これらを録音順に並べてみますと、ソニーにピアノ協奏曲を録音している途中でフィリップスへの交響曲の録音が始まっていることがわかります。しかし、そのように同時並行的に録音されたとは思えないほど、両者の音楽スタイルはまったく異なっています。ピアノ協奏曲では独奏者のペライアに合わせた表現がとられたためだと思われますが、レコード会社による録音の差も大きく、この比較は興味深いものです。

 交響曲全集のボックスには、コンセルトヘボウのファサードのイラストの下に"100 YEARS CONCERTGEBOUW ORCHESTRA"のロゴが入っており、ヘボウ100周年の記念盤という位置づけを持ちます。それと同時にこのシリーズは、ハイティンクとコンセルトヘボウ管のラスト・レコーディングともなりました。四半世紀に及んだコンビの総決算として選んでいることからも、ハイティンクにとってベートーヴェンの交響曲がいかに重要な存在なのかが想像できますが、事実、日本語解説書に掲載されたハイティンクのインタビューの冒頭で、彼はこう言っているのです。

『ベートーヴェンは私にとって大きな意味を持っています。彼の弦楽四重奏曲は音楽の頂点をなすもので、交響曲もまたそうです』

 またこのインタビューでハイティンクは、第9番は頻繁な演奏を禁止すべき特別な音楽的モニュメントなのでめったに演奏すべきでない、などとも発言していますが、ほかならぬ彼自身が10年ちょっとの間にその曲を3回も録音しているのは、ちょっと皮肉な結果かもしれません。

 なお、この交響曲全集の世評については、かつて伊東さんが書かれていた通りです。1988年度のレコード・アカデミー賞を受賞していることもいまやほとんど忘れ去られており、このことからもこの賞がいかに実質を伴わぬ無意味なものであるか知れようというものです。

【演奏者】

  • アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
  • アムステルダム・コンセルトヘボウ合唱団(合唱指揮:アーサー・オールダム)/ジャネット・プライス(S)/ビルギット・フィニレ(A)/ホルスト・ラウベンタール(T)/マリウス・リンツラー(Bs) 〔交響曲第9番(1980Live)〕
  • オランダ放送合唱団(合唱指揮:ロビン・グリトン)/ルチア・ポップ(S)/キャロライン・ワトキンソン(A)/ペーター・シャライアー(T)/ロバート・ホル(Bs) 〔交響曲第9番(1987)〕
  • マレイ・ペライア(p)  〔ピアノ協奏曲〕

【レコーディング・リスト】(録音順)

  • 交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」 1980.10.16-19. Philips (Live)
  • ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op19 1983.10.9-10. Columbia
  • ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58 1984.10.8. Columbia
  • ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37 1985.1.28-29. Columbia
  • 交響曲第7番イ長調Op.92 1985.10.21-23. Philips
  • 「エグモント」Op.84序曲 1985.10.21-23. Philips
  • ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15 1985.12.12-13. Columbia
  • 交響曲第5番ハ短調Op.67 1986.4.14-15. Philips
  • 交響曲第6番ヘ長調Op.68「田園」 1986.4.21-23. Philips
  • ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」 1986.4. Columbia
  • 交響曲第1番ハ長調Op.21 1987.3.12-13. Philips
  • 交響曲第2番ニ長調Op.36 1987.4.27-5.2. Philips
  • 交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」 1987.4.27-5.2. Philips
  • 交響曲第4番変ロ長調Op.60 1987.4.27-5.2. Philips
  • 交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」 1987.12.4-10. Philips
  • 交響曲第8番ヘ長調Op.93 1987.12.10-11. Philips

【国内盤初出】(< >内は発売年月、特記以外はすべてCD)

  • 交響曲第9番「合唱」(1980Live) 日本フォノグラム 20PC12-13(LP) <1981.5.>
  • ピアノ協奏曲第3番+第4番  CBSソニー 32DC810 <1986.9.>
  • ピアノ協奏曲第1番+第2番  CBSソニー 32DC1025 <1987.7.>
  • 交響曲第5番+第7番 日本フォノグラム 20PC640(LP) & 32CD640 <1987.10.>
  • ピアノ協奏曲第5番「皇帝」  CBSソニー 32DC1070 <1987.11.>
  • 交響曲全集(エグモントを含む) 日本フォノグラム 30CD820-25 <1988.5.>
  • 交響曲第3番「英雄」 日本フォノグラム 32CD879 <1988.12.>
  • 交響曲第6番「田園」+エグモント 日本フォノグラム 32CD880 <1988.12.>
  • 交響曲第1番+第2番 日本フォノグラム PCD2001 <1989.4.>
  • 交響曲第4番+第8番 日本フォノグラム PCD2009 <1989.10.>
  • 交響曲第9番「合唱」(1987) 日本フォノグラム PCD2010 <1989.11.>

※その他

現時点で内容がよくわからないものが一つ。輸入盤CDのブックレット巻末に掲載されたカタログに、次のようなものがあるのです。

***
LASER DISC & VHS
ベートーヴェン/交響曲第7番
ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管
オランダ国立バレエ
振付:Toer van Schayk
監督:Jellie Dekker
***

ベートーヴェンのシンフォニーをバレエにするというのもすごいですが、問題は音楽です。生演奏付きの公演がライヴ収録されているのか、既存のレコード音源が流用されているだけなのか。国内発売はされていないようで、詳細は不明です。

 

4.シュターツカペレ・ドレスデン(1990年代) 

 

 100周年を迎えて名称を改めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団をシャイーに引き継ぎ、不本意ながらも別れを告げたハイティンクは、他の名門オーケストラとの結びつきを強めていきます。そしてベートーヴェンの録音に限れば、その相手はシュターツカペレ・ドレスデンなのでした。

 1989年の「フィデリオ」は、ハイティンクとカペレの記念すべき初録音であり、ハイティンクにとってフィリップスへの最初のオペラ録音でもあったようです。国内では全曲盤しか出ていないようですが、輸入盤にはハイライト盤もあります。

 しかしハイティンクの「フィデリオ」に関しては、ロンドン・フィルを指揮した1980年のグラインドボーン音楽祭での舞台を英国のテレビ局が収録した映像が、LDとVHSで商品化されていました。

CDジャケット

 そして、ペライアとの全集から10年後の1996年、ハイティンクはシフと組んで、三たびピアノ協奏曲全集を録音します(左ジャケット写真)。オーケストラはシュターツカペレ・ドレスデン、レーベルはテルデックです。ハイティンクのフィリップスへの録音は、1996年7月のヴェルディ「ドン・カルロ」が最後のようですので、3月にこのベートーヴェンが録音されたときにはまだフィリップスとの契約は打ち切られていなかったようです。ペライアの組むために例外的にソニーに録音したように、シフとの組み合わせということでテルデックへの録音となったのでしょうか。

 このCDの国内盤は最初から全集として発売され、二年後に分売されています。全集のジャケットにはハイティンクがシフと並んで登場していますが、これはペライアとの旧録音でもそうでしたし、独奏者と指揮者のツーショットによるこのようなジャケットは(特にベートーヴェンでは)しばしば見られます。しかし、ライナーノートの中に独奏者のインタビューとは別に指揮者のインタビューまでが掲載されているというのは、かなり異例のケースではないでしょうか。一部を抜粋します。

『ベートーヴェンは私が最も愛しているもののひとつです。私は彼の全作品を尊敬しています。また指揮をしていないときには彼の音楽、特に室内楽を聴くのが好きです。もちろん彼のピアノソナタもすばらしいのですが、どうしても弦楽四重奏曲のほうに戻っていってしまいます』

 そしてこの録音の後、急死したシノーポリの後を受けてカペレの音楽監督となったハイティンクですが、特定のレコード会社との契約は結ばれていないようです。EMIあたりがこのコンビで新しいベートーヴェン交響曲全集を録音してくれると嬉しいのですが。

【演奏者】

  • ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)
  • ドレスデン国立歌劇場合唱団(合唱指揮:ハンス=ディーター・プフュリガー)/ジェシー・ノーマン(S)/ライナー・ゴルトベルク(T)/クルト・モル(B)/パメラ・コヴァーン(S)/他 〔フィデリオ〕
  • アンドラーシュ・シフ(p) 〔ピアノ協奏曲〕

【レコーディング・リスト】(録音順)

  • 歌劇「フィデリオ」Op.72 全曲 1989.11.23-30. Philips
  • ピアノ協奏曲第1番ハ長調Op.15 1996.3. Teldec
  • ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op19.  1996.3. Teldec
  • ピアノ協奏曲第4番ト長調Op.58 1996.3. Teldec
  • ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37 1996.11-12. Teldec
  • ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」 1996.11-12. Teldec
【国内盤初出】(< >内は発売年月、すべてCD)
  • 歌劇「フィデリオ」 日本フォノグラム PHCP5003-4 <1990.11.>
  • ピアノ協奏曲全集 ワーナーミュージック・ジャパン WPCS5902-4 <1997.8.>
  • ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 ワーナーミュージック・ジャパン WPCS10268 <1999.10.>
  • ピアノ協奏曲第3番+第4番 ワーナーミュージック・ジャパン WPCS10269 <1999.10.>
  • ピアノ協奏曲第1番+第2番 ワーナーミュージック・ジャパン WPCS10270 <1999.10.>
    (ピアノ協奏曲第5番の余白には、ピアノ・ソナタ第23番「熱情」がフィルアップ)
 

(2003年4月29日、An die MusikクラシックCD試聴記)