コンセルトヘボウ管弦楽団のレコ芸推薦盤大全(1968〜1981)

文:青木さん

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 コンセルトヘボウのレコードは世間でどのように評価されているのか? マニアならいざ知らず、一音楽ファンに過ぎないわれわれは、こういったことも気になってしまうわけです。もちろんそれをそのまま鵜呑みにするためではなく、自分なりの「ディスコグラフィ」「名盤分布図」を頭の中で描く際の、ひとつの指標というか手掛かりとして、そしてヘボウ研究の一素材として。

 「レコード芸術」誌が創刊30周年を迎えた1982年に、その記念として過去の推薦盤をコメント要約付きで集成した冊子が、別冊付録として作成されました。7月号付録の「下巻」がわたしの手元にあり、これは1968年1月号から1981年12月号までが対象となっています。

 この中からコンセルトヘボウ管弦楽団のものをすべて列挙しようというのが、当ページの主旨です。コメントの中でオーケストラについて触れている部分があれば、抜粋して転記しました。なお1980年1月号からは月評担当が二人制となっており、両人に推薦されている特選盤にはを付けました。

 レコ芸の推薦基準というものは実はたいへん曖昧ではあるものの、少なくともオーケストラの魅力を優先して選定されているということはないでしょうから、こんなことをしてもあまり意味はないのかも知れません。あくまで参考です。しかしこうして断片的な批評を並べてみると、コンセルトヘボウに対する世評のある一面が浮き彫りにされるようで、なかなか面白いものです。

 これを見ますと1970年代後半の充実ぶりは壮観ですが、その頃はクラシックレコード業界そのものもひとつのピークを迎えていたという点も、あわせて留意しておくべきかも知れません。

 

 

 

1.ブルックナー:交響曲第9番+「テ・デウム」/ハイティンク指揮
(Philips、1968年8月号)

2.マーラー:交響曲第3番/ハイティンク指揮
(Philips、1968年9月号)

「そして、コンセルトヘボウの技術の優秀なことも特筆されなければならない」

3.バッハ:「ヨハネ受難曲」/ヨッフム指揮
(Philips、1968年12月号)

4.マーラー:交響曲第2番/ハイティンク指揮
(Philips、1969年2月号)

「オケの優れた技巧とハイティンクが一体となってこれだけ魅力ある演奏となった」

5.マーラー:交響曲第4番/ハイティンク指揮
(Philips、1969年1月号)

6.マーラー:交響曲第6番/ハイティンク指揮
(Philips、1970年3月号)

「オーケストラの演奏技巧も優秀だし〜」「楽器の音色を鮮やかに出してソロの特性を充分に盛り立てる」

7.ブルックナー:交響曲第8番/ハイティンク指揮
(Philips、1971年2月号)

「こうした演奏に仕上がった背景には、コンセルトヘボウの優れた能力があることはいうまでもない」

8.バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番+ラプソディ第1番/シェリング/ハイティンク指揮
(Philips、1971年1月号)

9.ベートーヴェン:「ミサ・ソレムニス」/ヨッフム指揮
(Philips、1972年2月号)

10.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲/シェリング/ハイティンク指揮
(Philips、1974年12月号)

11.ブラームス:交響曲第2番+「ハイドン変奏曲」/ハイティンク指揮
(Philips、1975年9月号)

「抑えられた音色も美しい。装飾的な安っぽい彩りは完全に抑圧されている」

12.ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲/シェリング/ハイティンク指揮
(Philips、1975年1月号)

「オーケストラもよく鳴っている」

13.ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ブレンデル/イッセルシュテット指揮
(Philips、1975年2月号)

14.ベートーヴェン:交響曲全集/クーベリック指揮(コンセルトへボウは第2番のみ)
(DG、1976年12月号)

15.チャイコフスキー:交響曲第5番/ハイティンク指揮
(Philips、1976年2月号)

「けっしてイフェクティヴな外装を持たず、実にしっかりとした手ごたえを感じさせる奥行きのある演奏。指揮者とオーケストラが長年の経験によって培った独特の、手づくり的な入念な表現が誠実さと結びついて、一部の隙もない仕上がりをみせている」

16.シューベルト:交響曲第9番/ハイティンク指揮
(Philips、1977年5月号)

「音色は華麗ではないが、独自の深い色調に磨き上げられ〜」

17.チャイコフスキー+メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲/シェリング/ハイティンク指揮
(Philips、1977年11月号)

18.ドヴォルザーク:交響曲第7番/デイヴィス指揮
(Philips、1978年8月号)

「コンセルトヘボウも独特の深く品の高い音質で鳴りきっていて見事」

19.ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/デイヴィス指揮
(Philips、1978年11月号)

20.ブラームス:セレナード第1番/ハイティンク指揮
(Philips、1978年6月号)

「すばらしい音楽性だ。弦はいかにも優美、木管は柔らかいニュアンスを持ち、ハーモニーはよく溶け合って充実している」

21.ホルスト:組曲「惑星」/マリナー指揮
(Philips、1978年8月号)

「マリナーの透明な音楽性にオーケストラのやや渋い充実した音色と、コンセルトヘボウの残響ゆたかなホールの響きが加わって、美しい演奏が生まれた」

22.ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」/デイヴィス指揮
(Philips、1978年4月号)

「オーケストラの緻密なアンサンブルは少しの崩れも見せず、細部までよく練られ、熟し切っている。オランダ風に音色は少しくすんでおり、いかにも重厚であるが、それが少しも嫌みでなく、それどころかどんなに激しい部分も耳に刺激をあたえず有機的な音楽性を失わないところが実に快い」

23.ドヴォルザーク:交響曲第8番/デイヴィス指揮
(Philips、1979年8月号)

24.ハイドン:交響曲第100番「軍隊」+第104番「ロンドン」/デイヴィス指揮
(Philips、1979年3月号)

25.ハイドン:交響曲第103番「太鼓連打」+第87番/デイヴィス指揮
(Philips、1979年10月号)

26.ドビュッシー:「映像」+「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」/ハイティンク指
(Philips、1979年6月号)

「これは美しいドビュッシーだ。本場のスタイルとはちがうが、ここにはラテンとゲルマンの美しい調和があり、それをアムステルダム・コンセルトヘボウがこの上なく体現していくのである。ともかく名人技の集積がここにある。自由自在に吹く木管群、どこまでも伸びてゆく弦楽器、しかもそれらは常に目のつんだ響きの中から決して抜け出しはしないのである」

27.ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」/デイヴィス指揮
(Philips、1979年9月号)

28.モーツァルト:フルート協奏曲第1・2番+「フルートと管弦楽のためのアンダンテ」/ニコレ/ジンマン指揮
(Philips、1979年7月号)

29.ベートーヴェン:「ミサ・ソレムニス」/バーンスタイン指揮
(DG、1979年10月号)

30.ブルックナー:交響曲第7番+ワーグナー:「ジークフリート牧歌」/ハイティンク指揮
(Philips、1980年1月号)

「冒頭のチェロの第一主題から、指揮者はもとより、楽団の方も音楽に共感しているさまがひしひしと伝わってくる」

31.ハイドン:交響曲第88番「V字」+第99番/デイヴィス指揮
(Philips、1980年4月号)

32.ハイドン:交響曲第101番「時計」+第102番/デイヴィス指
(Philips、1980年9月号)

33.チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/ハイティンク指揮
(Philips、1980年2月号)

「音の質が驚くほど深みのある美しさである」「正確をきわめたアンサンブルをつくりながら楽員の自発性をよく引き出している」

34.フランク:交響曲/デ・ワールト指揮
(Philips、1980年5月号)

35.ハイドン:交響曲第86番+第98番/デイヴィス指揮
(Philips、1980年10月号)

36.チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」/ハイティンク指揮
(Philips、1980年7月号)

「オーケストラの技巧と管弦のバランスのみごとなことも特筆に値するが〜」

37.チャイコフスキー:交響曲第4番/ハイティンク指揮
(Philips、1980年3月号)

「コンセルトヘボウ管の充実はすばらしく、そのうえにハイティンクの造形の堅固さがある」

38.R=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」/コンドラシン指揮
(Philips、1980年9月号)

39.ドビュッシー:「夜想曲」+バレエ「遊戯」/ハイティンク指揮
(Philips、1980年10月号)

「音色的な面からみると、このオーケストラのもつ特質が、そのまま抑えられずにいかされている点が多く、それが独自の雰囲気を生み出しているところもある」

40.ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲/パールマン、ロストロポーヴィチ/ハイティンク指揮
(EMI、1980年11月号)

41.ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/ハイティンク指揮
(Philips、1981年6月号)

42.チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」/ハイティンク指揮
(Philips、1981年8月号)

43.チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」/ハイティンク指揮
(Philips、1981年2月号)

「この演奏の第一の魅力はオーケストラの合奏美で、とくに終楽章での力の底の深さは目立って手ごたえがある。第2楽章で柔らかいリズムからこぼれ落ちる憂愁の気分もすばらしいし、第3楽章のリリシズムがほとんど完全にチャイコフスキーのオペラの世界そのままに接するようにして楽しむことができたのも、コンサートのオーケストラであるだけに驚きであった。ハイティンクとコンセルトヘボウのスタイルも完成のうえに幅を広げつつあるのが感じられる」

44.ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」+「はげ山の一夜」/デイヴィス指揮
(Philips、1981年6月号)

 

(An die MusikクラシックCD試聴記)