シュターツカペレ・ドレスデン来日公演2006

2006年11月24日(金) 19:00 ザ・シンフォニーホール、大阪

文:青木さん

ホームページ WHAT'S NEW? シュターツカペレ・ドレスデンのページ


 

プログラム2006

チョン・ミョンフン指揮シュターツカペレ・ドレスデン
ヴァイオリン独奏:樫本大進

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67
アンコール〜ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲

 

■ 感想

 

・ブラームス

 仕事の都合&JRの遅れで開演時間に間に合わず。第2楽章の途中からロビーのモニター画面で視聴。感想なし。

・ベートーヴェン

 一昨年のハイティンクと異なり、指揮者の個性をかなり強く打ち出した表現。オーケストラの魅力は部分的・散発的なものに留まり、不完全燃焼。80人もの大編成が必要だったのか?

・ウェーバー

 アンコールです。一瞬ベートーヴェンのどの序曲だったかなと考えましたが、やがて「魔弾」だと気付いた瞬間、ここまでの冴えない気分が一気に好転。これこそカペレにもっともふさわしい曲(の一つ)だとかねがね思っていたからですが、その期待を裏切らぬ名演奏でした。序奏部は驚くほど精妙な表現で、いかにもドイツの深い森をほうふつとさせる雰囲気が神秘的に描かれていきます。続くホルン四重奏の深々とした美しい響きは、これまで実演で聴いたあらゆるホルン演奏の中でもっとも素晴らしいもの。うっとり聴き惚れていると、弦のさざめきとティンパニの低い轟きが嵐の前触れのような不穏な空気を作りだし、主部に入ると印象的な音色のクラリネットに導かれた管弦楽の総奏が凄絶さを増して、ホルンの咆哮で次の場面へ。ものすごい表現力、描写力です。音量が上がってもやかましさや騒がしさはなく、常に合奏美が保たれている。これもシュターツカペレ・ドレスデンの類まれなる特徴です。明るいムードの中間部を経て再び嵐が訪れ、やがて落ち着き、静寂。そしてグッとためた休止ののち、最後の輝かしい大爆発。歌劇場のオーケストラによる自家薬籠中のレパートリーともなると、これほどの大ドラマを絶妙に描くことができるものかと、ほとほと感じ入りました。本編終了後のアンコール、それもアジア・ツアーのラストというシチュエーションのせいか、ベートーヴェンとうって変わって指揮者の締め付けがぐっと緩められたようで、オーケストラの魅力的な個性が全開、結果的にはもう大満足の幕切れに。それは他の観客も同様だったようで、スタンディング・オベーションを含む大拍手はベートーヴェンのそれを遥かに上回り、団員が引き上げても止むことはありませんでした。

 

■ 余談

 

  ベートーヴェンを聴きながら「コリン・デイヴィスとカペレのCDは最高だったのに…」などと考えたりしたので、帰ってから「魔弾の射手」序曲のCDを聴き比べたのですが、彼らのフィリップス盤は実につまらぬ凡演で、ガッカリしましたねぇ。クライバーはなかなかの佳演。意外にもグスタフ・クーン指揮のCapriccio盤が、演奏・録音とも優れていました(ウェーバー序曲集に収録)。

 あと、この日の客席には外国人の姿がやたらと目立ちました。空席を埋めるために在阪ドイツ人に動員がかけられた、なんてことはまさかなかったと思いますが。それともあれは、翌日の京都公演を控えてすでに大阪入りしていたコンセルトヘボウ管の団員やスタッフたちだったのでしょうか?

 

(2006年11月28日、An die MusikクラシックCD試聴記)