私のカペレ
第7回 飯守 邦也さん
今,話題のKSDじゃなかった,450年の歴史と伝統を誇るSKD シュターツカペレ・ドレスデン!
正直にお話する・・・・私はこのオケが大嫌いだった!?
こんな物騒なことを書くと熱烈なファンから弓や鉄砲で撃たれるかもしれない!あるいは包丁で刺され血だるま?さらし首か??
あれはクラシック音楽に興味を持ちはじめた頃だった。当時,私は家の近くにある図書館でLPレコードを借りまくる日々をおくっていた。
そんな頃ベートーヴェンの序曲集(だったと思う)のLPを借りた。オケはウィーン・フィルとシュターツカペレ・ドレスデン。
どの曲がウィーン・フィルか?ドレスデンか?忘れたが・・・・そのとき聴いたシュターツカペレ・ドレスデンの音が・・・・とにかくひどい!金属が焼けたときのムカムカする臭いと形容したくなる響き,しかも高音がキィーキィー,低音がスカスカ,etc・・・・私はたちまち激しい拒絶反応を起こしてしまった。
以来、シュターツカペレ・ドレスデン=ひどいオケ=私の嫌いなオケ!
この図式が頭にこびり付き、シュターツカペレ・ドレスデンの録音を一切聴かない日々が数年つづいた・・・・その後クナッパーツブッシュ(以下、クナ様)大好き人間になった私はクナ様と共演するシュターツカペレ・ドレスデンのLPシューマンの交響曲第4番(写真左 ARKADIA CDGI724.1、1956年ライブ)を聴き、あの体験に疑いを持ち始めた!
〜あれはオケがひどいのではなく、録音が粗悪!?あるいは私の勘違い!?だったのでは???
しかし、あの体験があまりにも強烈だったためか?なんとなくシュターツカペレ・ドレスデンを避ける日々がつづいた・・・・
そんな偏見がぶっ飛んだのはクルト・ザンデルリングの指揮するブラームスの交響曲第1番(RCA)のCDを聴いてからであった。いや、瞬間からか!(写真左。BMG 69220-2-RV。国内盤はDENONから発売されている)
冒頭のティンパニーからして違う!なんと深い響きであろうか!ティンパニーがこんなに豊かな表現力を発揮するものなのか!すっかり聴き入ってしまった!この瞬間から長年の偏見はぶっ飛んだ!!!しっとりとした味わい,ずっしりした聴きごたえ,明朗な響き,各楽器がそれぞれ強烈な個性を自己主張を発揮しながら,オーケストラとしての存在感が味わえる!
そして、もっとも驚いたのが第4楽章の序奏部!主部に移行するとき,ティー・ター・ター・ターと朗々と吹き鳴らすホルンの響き!!!その響きは「美は人を沈黙させる」の格言とおり私はこれ以上語らない・・・・(っ〜かボキャ貧の私にはふさわしい表現が思いつかなかった)。
これが450年の歴史と伝統だよ!今までの偏見は何処へやら,手のひらを返したように、わけ知り人間に変貌してしまった・・・・
さて、K.ザンデルリングの指揮ぶりに話を移そう。
ブラ1の暗から明へのドラマ,苦悩を突き抜け歓喜に至れ,ブラ1はバクハツだ!みたいな演奏とは違う。力みを排して堂々と粛々と演奏している。それでいて几帳面な堅苦しさを感じさせない,しなやかな演奏を楽しむことができる。きっと長野県知事も大喜びに違いない。
それにしても何故?あのとき?あれほど過剰な拒絶反応を起こしたのか?不思議である???
2001年2月23日、An die MusikクラシックCD試聴記