日本人初のカペレ団員誕生
文:powderさん
ヴァイオリンの島原早恵さんが、2003年3月15日より、カペレの第一ヴァイオリンに就任します。
島原さんは桐朋音大ソリストディプロマ卒業後、ミュンヘン国立音大大学院最高課程に留学、2002年年7月に卒業し、同時にドイツ国家演奏家資格も得ています。
12月初めのカペレ採用試験にあたっては、審査員のあいだでも激論が交わされたようです。カペレ採用試験の模様などは、島原さんのファンが作っているホームページの「Diary」に彼女自身のレポートがありますので、どうぞご覧下さいませ(最近あまり更新できておらずお恥ずかしい限りですが)。
また、2003年2月28日には、カペレ入団前、最後の演奏会を開きます。ソロリサイタルではなく室内楽演奏会ですが、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお越しくださいませ。
内容を簡単に記しておきます。
島原早恵 室内楽コンサート〜ロシア音楽の夕べ〜 日時
2月28日(金)19時開演(18時30分開場)
場所
安田生命ホール(JR新宿駅西口徒歩1分)
曲目 グリエル:ヴァイオリンとチェロのための8つの作品
プロコフィエフ:ヴァイオリンソナタ第2番ニ長調
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲イ短調「偉大な芸術家の思い出のために」共演
チェロ:石川祐治、ピアノ:佐々木祐子
チケット 3,500円(全自由席)
An die Musik読者の皆様には、3,000円でご案内いたします。お申し込みの際、「カペレ」とお書き添えくださいませ。
お問い合わせ
・お申し込み郵便番号、住所、お名前、電話番号をご記入の上送信してくださいませ。
備考 上記ホームページのトップ「information」→次ページの下のほうの小さなドアからチラシをごらんいただけます。
私は、島原さんを10年近く応援してきました1ファンですが、ここまでのすばらしい成果をあげてくれるとは想像もつきませんでした。彼女の起こしたこの奇跡をできる限り多くの皆様にお知らせし、また彼女の演奏のすばらしさを聴いていただきたいと願っております。
今回、管理人様のご好意により、このような形でのご案内をお許しいただき、心から感謝いたします。
伊東からのコメント
島原さんのホームページには貴重な情報が掲載されています。2002年12月19日のDiaryには以下のような記述があるのです。
・・・
今回のオーディションでも、保守的な考え方の人たちから、反対の声があがっていたらしい。
そういうなかでも、多くの方が推してくださり、特にコンサートマスターが私のことを高く評価してくださったようで、「今、我われがこの才能ある演奏家を、外国人だからという理由だけで採用しなければ、このオーケストラに未来はない」
こう、かっこよく断言して下さったそうなのです。。。
どうもシュターツカペレ・ドレスデンが外国人には門戸を完全に開放していたわけではないらしいことがここから窺い知れます。もしかしたら、ドイツ人であることを選考の基準としてかなり意識していたのかもしれません。特にドレスデンの場合、地元に音楽院があり、その卒業生がドレスデンフィルを経由しシュターツカペレ・ドレスデンに入団するというケースが少なくないはずです。そうしたルートを伝統を維持するためにずっと遵守してきたことは想像に難くありません。
しかし、*とある*コンサートマスターはオケの未来のためには島原さんを入団させるべきと主張しています。さて、これは誰なのか。2003年2月現在、カペレのコンマスは4人体制です。ペーター・ミリング教授、ローラント・シュトラウマーさん、カイ・フォーグラーさん、そして就任したばかりのマティアス・ヴォロングさん。この中で、オケの未来を変え得るような重要な発言をし、それが受け入れられるような重きをなす人物は誰か。まず間違いなくペーター・ミリング教授でしょう。この推察の真偽は島原さんに直接伺いたいところであります(なお、ミリング教授はベルリン音楽院出身。1969年からカペレ在籍)。
カペレはシノーポリ亡き後、どうにかシェフにハイティンクという大物を獲得することに成功しました。しかし、ハイティンクは高齢でもあり、長期在任は望めそうもありません。明らかに次のシェフとの間のつなぎであります。そう考えますと、カペレはまだまだ過渡期にあることが分かります。そうした時期にペーター・ミリング教授(?)が歴史的な転換を告げる発言を行ったわけで、実に興味深いものがあります。島原さんのご活躍を期待しましょう。
注
2004年来日公演のプログラムに、、このコンサートマスターがローラント・シュトラウマーさんであることが記載されていました。私の予想は大はずれであります。 (2004年5月15日)
2003年2月12日、An die MusikクラシックCD試聴記