交響曲第4番 ニ長調 Hob.T-4
「ハイドンの交響曲を全部聴こう」(略称「ハイドン・マラソン」)
■ 本編
■ 楽曲について
作曲 1757/60年(ゲルラッハ1996年による)
編成
オーボエ2、ホルン2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、 通奏低音
構成 第1楽章:Presto
第2楽章:Andante
第3楽章:Finale,tempo di menuet■ 録音データ
録音年月 第1楽章
第2楽章 第3楽章 ドラティ盤 1972年6月 4:02
3:49 5:31 フィッシャー盤
1990年6月 6:12 5:30 5:47 ■ 演奏について
フィッシャー盤
(1-5番)第3番は4楽章編成でしたが、第4番は3楽章編成に戻っています。これはハイドンの気まぐれではなく、第4番が第3番の前に書かれているためでしょう。交響曲の番号は作曲の順番と必ずしも一致していないのです。
「ハイドン・マラソン」では現役盤とは言い難いために比較試聴の対象からはずしたもう一つの全集があります。ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団による全集です(L'oiseau-Lyre)。ホグウッドは1957年から60年に作曲されたとおぼしき交響曲を第1巻に、1760年から63年に作曲されたとおぼしき交響曲を第2巻に収録しています。第1巻には交響曲第1番、2番、4番、5番、11番、18番、27番、32番、37番、107番が、第2巻には3番、14番、15番、17番、19番、20番、25番、33番、36番、108番が収録されています。「何だこれ?」という感じですね。どの時点の研究成果を採用するかで若干変わってくるのですが、ホーボーケンがつけた番号は今となっては作曲順を正確には反映していないのです。
それはともかく。ディヴェルティメント風の曲は聞き流そうと思えば簡単に聞き流せるですが、こうして1曲だけ取り出して聴いてみるとどこにも隙を見つけられません。どこにでも転がっていそうな曲に見えても職人的な技術が盛り込まれているようです。第1楽章のプレストは陽気ですが、構成的には堅固です。第2楽章になると大きく気分を変えさせます。おそらく当時の貴族が許容できる最もメランコリックな音楽であった可能性もあります。第3楽章も優雅に駆けめぐって終了しますが、これはこれで当時のオーソドックスだったのかもしれません。
ドラティ盤は若きハイドンを彷彿させるがごとき元気溌剌とした演奏です。
一方、フィッシャー盤はそれに繊細さを加え、充実した響きです。第2楽章の響きは鈍重にならず、実に美しい。見事としか言いようがありません。
2007年7月2日掲載、文:伊東
文:ゆきのじょうさん
録音年月 第1楽章
第2楽章 第3楽章 ヘルビッヒ盤 1973年 5:35
4:12 5:42 アルミン・タールハイム ハープシコード
ギュンター・ヘルビッヒ指揮シュターツカペレ・ベルリン
録音:1973年、ベルリン・キリスト教会
独ベルリン・クラシックス(輸入盤 0032772BC)■ ハイドン・マラソンに途中から参加するにあたって
私は全集盤を所有しておらず、当初はどうしようかとも思いましたが、確かにハイドンの交響曲を一曲一曲味わいながら、聴いたことはありませんでしたので、伊東さんの今回の提案で新しい発見があればと思い、参加させていただくことにしました。したがって、散発的な参加となりますが宜しくお願いいたします。
■ 演奏者について さて、今回の第4番でとりあげたヘルビッヒ盤ですが、これは余り知られていないのではないでしょうか?LP時代の東独エテルナが音源です。当時、エテルナはザンデルリンク指揮ベルリン響のパリ・セット、ヘルビッヒ指揮ドレスデン・フィルのザロモン(ロンドン)・セットを出していました。それ以外にギュンター・ヘルビッヒがシュターツカペレ・ベルリンと初期交響曲集を録音していたのですね。
ヘルビッヒ/シュターツカペレ・ベルリンと言えば、思い浮かぶのはメンデルスゾーン/真夏の夜の夢です。珍しい全曲盤で、演奏もとてもしっかりと響かせており、気に入っています。おそらくヘルビッヒがエテルナに録音を始めた頃のもので、今回のハイドンもヘルビッヒが40歳前半の時の録音です。私はこれをハイドンの交響曲だから買ったのではなく、「ギュンター・ヘルビッヒを聴く」を書いたように、ヘルビッヒという指揮者に注目していたので買い求めたのでした。
■ 当盤について
さて、第4番ですが第1楽章プレストは颯爽としています、シュターツカペレ・ベルリンのアンサンブルも響きがよく、ホルンと弦楽パートの溶け合いも自然です。何よりもヘルビッヒの(この当時の?)持ち味であるリズム感の良さがとても効果的です。この第1楽章だけ聴いても、あの「おもちゃの交響曲」がハイドンの作品だと信じられていたのも分かる様な気がします。第2楽章は弱音が心地よいのですが、テンポは弛緩していません。第3楽章メヌエットは繰り返しが多いせいでしょうか、テンポは遅くはないのですが、のんびりとした雰囲気が前面にあると思いました。
こうして何回か繰り返して聴いてみると、この曲も魅力的なところに気付かされます。今まで何となく流し聴きしていたことを反省もし、今回の伊東さんの企画には、やはり感謝を申し上げたくなります。時々休んでしまいますが、ところどころで伊東さんのマラソンにお付き合いさせていただきます。
2007年7月3日掲載、文:ゆきのじょうさん
(An die MusikクラシックCD試聴記)