クレンペラーのフランク

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CDジャケット

フランク
交響曲ニ短調
クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管
録音:1966年2月
EMI(国内盤 TOCE-3231)

 名盤案内でも滅多に出てくることがないが、クレンペラーの至高の芸術に触れることができる最高の名演。

 録音はクレンペラーが最晩年のゆったりとしたテンポを定着させた1966年。テンポはゆったりとしていながらも、演奏に漲る緊張感がすさまじい。張りつめた緊張感の中で音楽が高揚してくると、この曲のオルガン的な和声が荘厳な光を放ち、神話の世界を描き出すような雰囲気になる。作曲者もこれほど燦然と輝きわたる演奏を聴けば随喜の涙を流すと思う。

 この演奏でもクレンペラーのオケの扱いは際立っている。木管楽器ををはじめとして、主旋律が明瞭に浮かび上がってくる。また、各パートの動きが手に取るように分かる点も面白い。響きはあくまでも峻厳な緊張感を維持したままなので、軟弱さなど全くない。第2楽章を除いて、強靱なクレンペラーの意志が音となって表出しているように感じる。

 ニュー・フィルハーモニア管は当時、決して最高潮というわけではなかったと思うが、この大指揮者の棒によく応え、神々しいまでの演奏を実現した。演奏芸術の粋を見るようだ。

 

An die MusikクラシックCD試聴記、1998年掲載