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ヴァレンベルグ(1952− ) ピアノ協奏曲『第5番』(原曲:ラフマニノフ「交響曲第2番」)
ヴォルフラム・シュミット=レオナルディ(ピアノ) テオドーレ・クチャル指揮ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2007年6月、チェコ・オストラヴァ Brilliant Classics (オランダ盤 BRL8900)
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ヴァレンベルグ(1952− ) ピアノ協奏曲『第5番』(原曲:ラフマニノフ「交響曲第2番」)
他 キム・ジョンウォン(ピアノ) ミシェル・フランシス指揮ロンドン交響楽団
録音:2012年、ロンドン DG(韓国盤 476 486-8)
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■ 作曲の経緯
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ラフマニノフ作曲の交響曲第2番は、甘美なメロディーや構成からラフマニノフの代表作の一つとして認知されているが、ピーター・ファン・ヴィンケルというオランダのレコーディング・プロデューサーがピアノ協奏曲にアレンジしようと思い立ち、作曲家アレクサンダー・ヴァレンベルクに依頼した。依頼を受けたヴァレンベルクは一旦断ったものの最終的にはアレンジを施し、交響曲中の主旋律部分をピアノ独奏として協奏曲に編曲した。さらに、独自にカデンツァなども挿入するとともに、いかにもピアノ協奏曲風に全3楽章に再構成を行った。
こうして出来あがった楽曲を「ピアノ協奏曲
"第5番"」として発表し、2007年に世界初録音を行った。後にこの楽曲は原曲の交響曲の出版元で、ラフマニノフの全ての版権を有しているブージー・アンド・ホークス社から、ラフマニノフの作品管理団体及び孫のアレクサンドル・ラフマニノフの許諾のもと「Piano
Concerto "No.5"」として出版された。さらに2008年11月21日にはパリで世界初演が行われた。
原曲の第1、第3、第4楽章をもとに編曲・再構成している。原曲の第2楽章については大部分が省略されており、中間部のみが「協奏曲」の第2楽章に挿入されている。全体の演奏時間も、一般的なピアノ協奏曲の範疇に収まる40分強となっている。
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■ 出版社によるクレジット
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Boosey & Hawkes Rachmaninoff - Warenberg Piano Concerto
‘No.5’ (1906-08) arrangement of Symphony No.2 Duration:
42' Scoring3.2.corA.2.bcl.2-4.3.3.1-timp.perc-strings
Territory This work is available from Boosey & Hawkes for the
world. World Premiere 2008/11/21 Salle Pleyel, Paris
Denis Matsuev, piano / Orchestre Philharmonique de Radio France
/ Vladimir Spivakov
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■ 果たして詐欺的な曲なのか、それとも公認の曲なのか
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まず、詐欺だと怒る人たちは、「ピアノ協奏曲第5番」とは何事か、といきり立つ。しかし、版元では「Piano Concerto
‘No.5’」として出版しているのだ。つまり、曲のタイトルが正規に「第5番」なのである。これは、例えばベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」と比較するならば、「第5番」に相当する部分が「皇帝」にあたるのである。また、当該出版社はいかがわしい出版社では凡そない上に、そもそもラフマニノフの全楽曲を、作品管理団体公認のもとで独占出版しているので、現実には当該ピアノ協奏曲は、公認の作品であると言えるだろう。とすれば、後は作品の内容を聴き手が認めるか、認めないか、である。
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■ 初演とそれ以後の経緯
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初演は、パリのサル・プレイエルにて、デニス・マツーエフのピアノ、ウラディーミル・スピヴァコフ指揮フランス国立放送局管弦楽団にて行われた。この映像も実は残されている。
世界初録音は、初演の前年に、チェコ共和国のオストラヴァにて、ヴォルフラム・シュミット=レオナルディのピアノ、テオドーレ・クチャル指揮ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団にていち早く録音がなされ、世界中で広く発売された。
世界2枚目のディスクは、ドイツ・グラモフォンによる録音で、一般にユリウス・キムとして知られるキム・ジョンウォンのピアノ、ミシェル・フランシス指揮ロンドン交響楽団により収録された。また、キム・ジョンウォンはアジア初演も担当した。キムは、ウィーンとパリで学んだ韓国のピアニストで、日本ではむしろ、韓国ドラマ「春のワルツ」で知られているが、過去にはショパンのスケルツォ全集のディスクを発売したこともある実力派ピアニストでもある。
日本初演も、すでに行われており、反田恭平のピアノ、藤岡幸夫指揮日本フィルハーモニー交響楽団により、2018年8月9日にミューザ川崎シンフォニーホールにて、サマーフェスタ川崎の期間中に行われた。反田恭平は多くのラフマニノフ作品をこなしている、実力派の若手ピアニストである。
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■ 個人的な感想
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ラフマニノフを、ピアニストとして尊敬し、目標とするピアノの学習者はものすごく多い。また、ラフマニノフはピアノ演奏で存命中から非常に有名であったが、管弦楽曲の作曲家としては後にプレヴィンやアシュケナージらの努力によって、この交響曲第2番を含め認知されるようになったと言えるだろう。現に1970年代に入ってもなお、管弦楽曲が演奏される機会は稀なうえに、演奏された場合でも交響曲第2番は冗長とみなされ、短縮版による演奏が大半であったのである。その一方で、存命中からピアノ曲作曲家としてのラフマニノフはピアニスト・ラフマニノフと同様に著名であり、ピアノ協奏曲やピアノ曲の多くは、現在まで常に世界中のピアニストのレパートリーであり続けている。
最初にピアノの学習から入った私も、この原曲の交響曲は、プレヴィンやアシュケナージが録音を試みたからこそ、比較的初期から知り得ていたのは事実である。また、私自身はラフマニノフを弾くことはさして好まないが、聴くことは非常に多い。つまり、ラフマニノフを知り得たきっかけがピアノである人の方が、明らかに多いと思わざるを得ないのである。とすると、この交響曲のピアノ協奏曲版は、多くのピアノ愛好者にとって、好悪はさておき一度は聴いてみたい編曲であろうと思うのである。
なお、最後にこの交響曲の代表的名盤を指揮したアシュケナージが、作曲者のラフマニノフ自身がこの交響曲を、一度はピアノ協奏曲化しようと考えたことがあると語っていたように記憶している。場所等の記憶はまるで正確ではないが、彼の口から直接語られていたこと自体は鮮明に覚えている。確かピアノの公開レクチャーであったように記憶しているのだが、いつどこの場所でのことだったかは、たいへん残念ながら遠い昔のことで思い出せない。すでに引退したアシュケナージがこのピアノ協奏曲編曲版をどう思っているのか、聞いた見たい気がしてならない。あるいは、ラフマニノフ協会の会長でもあった彼は、すでにどこかで語っているのかも知れない。ちなみに、私自身はこの編曲版を肯定的に受容している。 |
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(2020年5月28日記す)
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