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スメタナ 連作交響詩「わが祖国」(全曲) イルジー・ビェロフラーヴェク指揮
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1. チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1988年5月12日、プラハ(ライヴ)
Supraphon (国内盤 25CO-2586)
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2. チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1990年3月、プラハ
Supraphon(輸入盤 SU1986-2 031)
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3. NHK交響楽団 録音:1994年12月8日、東京(ライヴ)
NHKアーカイヴ(未ディスク化)
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4. 日本フィルハーモニー交響楽団 録音:2006年、東京(ライヴ)
日本フィル自主制作(国内盤 JPS 42CD)
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5. プラハ音楽院交響楽団 録音:2011年5月12日、プラハ(ライヴ)
Supraphon (輸入盤 SU 7120-9、DVD)
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6. チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2014年5月12日、プラハ(ライヴ) UNITEL
(輸入盤 2072758、DVD)
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7.
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 録音:2015年11月4日、東京(ライヴ)
NHK音楽祭の放送用映像(未ディスク化) |
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■ イルジー・ビェロフラーヴェク追悼
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1946年2月プラハ生まれ。父親は裁判官(後に弁護士)であったが、幼少時からビェロフラーヴェクに音楽教育を施した。プラハ音楽院、プラハ芸術アカデミー出身。1967年に女性だけで編成されたオーケストラ(ビェロフラーヴェクは男性)を指揮し、指揮者デビューを果たす。その後チェリビダッケの助手を2年間務めた。1970年チェコ指揮者コンクール優勝。1971年カラヤン指揮者コンクールファイナリスト。1972年から78年まで国立ブルノ・フィル指揮者。1979年オペラの指揮でもデビュー(スメタナの歌劇「秘密」)を果たす。
1990年から92年までチェコ・フィルの音楽監督に一度就任したが、民主化直後に政府からの財政援助が削減された結果、厳しい財政難に陥ったこともあって、一度は監督の地位を去ることとなった。しかし、名門チェコ・フィルの実力低下が叫ばれる中、再度2012年から2017年に亡くなるまで、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を率い、楽団の実力回復に多大なる寄与をした。指導者としても、今をときめくフルシャ、ネトピルらを、プラハ芸術アカデミー教授として育てた功績には大きいものがあり、目立たぬ存在ではあったものの、確かな仕事を成し遂げた一流の指揮者であった。
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■ スメタナの「わが祖国」
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チェコ人にとって特別な楽曲であるこの曲集を、プラハの春のオープニングコンサートで、1988年以後、ビェロフラーヴェクは何度か登場して振っている。しかし、民主化後最初に開催された1990年のプラハの春オープニングコンサートは、音楽監督のビェロフラーヴェクではなく、42年前に亡命し、すでに1986年に引退していたクーベリックが凱旋公演を果たしたため、ビェロフラーヴェクは振っていないのである。ただし、直前にチェコ・フィルを振ってスタジオ録音を行っており、間違いなくビェロフラーヴェクにとっても、「わが祖国」は彼の指揮者人生の中で中枢を占める楽曲の一つであったと考えられる。そこで、彼の残したこの大曲の録音をたどることで、ビェロフラーヴェクの追悼としたいと思う。
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■ 1988年のプラハの春オープニングコンサートライヴ
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日本コロンビアによる、ライヴ収録盤。一切の恣意的な解釈を排した実にオーソドックスな演奏である。良くも悪くも、まさにチェコ・フィルによる堂々たる「わが祖国」である。その代わり、ビェロフラーヴェクの個性を感じられる瞬間はほとんど訪れてこないが、そもそもチェコ人にとっての「わが祖国」の位置づけを合わせて考えると、十分に望ましい「わが祖国」のデビュー盤だったと言えるだろう。
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■ 1990年のスプラフォンへのスタジオ録音
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唯一のスタジオ録音。3月下旬に3日間のセッションが組まれて録音された。その直後にクーベリックがプラハの春オープニングコンサートで、同曲を演奏し録音したのである。1か月半しか間隔がないきわめて近接した時期に、両者の録音が残されたのである。1988年録音と異なるのは、最後の2曲の盛り上げ方であろうか。一瞬、クーベリックが振っているような錯覚を覚えることがあるディスクである。このような錯覚は、わずか2年前の88年録音では感じ取れなかった。
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■ 1994年のNHK響への客演時のライヴ録音
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1994年12月8日の公演で、ライヴ収録された。現時点では未ディスク化であるが、ビェロフラーヴェク追悼として、2017年7月15日に追悼番組で全曲が再放送されたので、近々にディスクとして発売されるものと期待される。個人的には、かつてのマタチッチ&N響や、ノイマン&N響、さらに後年のエリシュカ&N響よりも、N響本来の資質をしっかりと引き出した演奏のように感じ、好ましい聴後感が残ったことを書いておきたい。
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■ 2006年の日本フィルとの来日公演ライヴ録音
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私はこの録音当日、ビェロフラーヴェクを見上げる位置(1階2列中央、指揮台真後ろの座席)で、このコンサートに立ち会うことができた。モルダウの流れがとても心地良い(あえてヴルタヴァと呼ばずにモルダウと呼ぶことにする)のが、他の録音と明らかに異なる特長だと思う。日本フィルは、技術的にもかなり健闘している。
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■ 2011年の学生オケを振ったオープニングコンサートライヴ映像
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スプラフォン制作によるDVD。演奏はプラハ音楽院の学生及び卒業生で組織した、ユース・オーケストラである。当初はワールドワイドな発売を予定していなかったようで、映像収録システムもPAL方式である。学生の指導を兼ねて振っているせいか、他の録音よりも音楽全体がシャープである。起伏に富んだ演奏だともいえるだろう。聴いていて最も面白みのある演奏となっている。
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■ 2014年のチェコ・フィルとの26年ぶりのオープニングコンサートライヴ映像
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ユニテル制作のDVD。テンポが一時期よりも若干早めに戻っているような感覚がする。全体の流れの良さを第一に重視した演奏となっている。安心して音楽に身をゆだねるとは、まさにこのような演奏を指すのであろう。
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■ 2015年の来日公演のNHKによる映像
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2015年11月4日、HNK音楽祭に出演した際の、チェコ・フィルを振った全曲演奏。こちらも、現時点では発売はされていないが、テレビでは数回にわたり放送済みの映像である。前年のプラハでの映像よりも若干音の輪郭を重視した演奏のように見受ける。
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■ 感謝を捧げる
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1970年代から、ビェロフラーヴェクの指揮を、私はいったい何度聴いたことであろうか。もしかしたら、外国人指揮者の中で、私にとって最も多い出会いがあった指揮者なのかもしれないとすら思う。そのくらい多くのコンサートを、私が若いころから長い間にわたって聴かせていただき、特に最後の何回かは、一度落ち込んだチェコ・フィルのアンサンブル能力の復活傾向も、彼の指揮のもとでしっかりと確認させていただくことができた。深く感謝を捧げたいと思う。そしてご冥福を心からお祈り申し上げたいと思う。
長い間、本当にありがとうございました。そして本当にお疲れさまでした。
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(2017年10月4日記す)
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