|
ロビン・デ・ラーフ(1968‐ ) オペラ「Waiting
for Miss Monroe」全曲(世界初録音)
- マリリン・モンロー:ラウラ・アイキン(ソプラノ)
- フォックス:デール・デューシング
- パウラ:ヘレナ・ラスカー
- ホワイティ:デイヴィッド・DQ・リー
- イヴ:マリア・コワン
- クラーク・ゲーブル:アラン・クロンブ
- ジョー・ディマジオ:トム・ランドル
- ジャック(JFK):ジョン・テシエ
- ボブ(RFK):ダニエル・ベルヒャー
- ノーマ・ジーン:ヘンドリーケ・ファン・ケルクホーフェ
ネーデルラント・オペラ合唱団
スティーヴン・スローン指揮オランダ室内管弦楽団
録音:2012年6月7,15,16日、オランダ(ライヴ録音) Challenge
Classics (欧州盤CC72685)SACD
|
|
■ 世界初演に伴った録音
|
|
このオペラは、ネーデルラント・オペラがオランダの若手作曲家ロビン・デ・ラーフに委嘱した新作オペラである。ロビン・デ・ラーフは1968年生まれで、伝統的な手法を比較的維持した多少聴きやすい作風を見せており、すでに交響曲4曲や、ヴァイオリン協奏曲などのディスクが発売されている。母国オランダのロッテルダム音楽院の教授職に就きつつ、ボストン交響楽団やタングルウッド音楽祭にも携わっているようだ。
このオペラは3幕構成で、場面構成が維持されており、21世紀作品としてはかなり聴きやすい部類に入るだろう。第1幕は”Workday”、第2幕は”Birthday”、第3幕は”Deathday”という標題が付されている。第2幕はもちろん、ケネディ大統領(当時)の誕生日にまつわるモンローのスキャンダラスなシーンをもとに作曲されている。この第2幕の終結直前には恐るべき聴きどころが訪れる。全体で約2時間の新作オペラである。
|
|
■ ネーデルラント・オペラ
|
|
第2次大戦後に設立されたネーデルラント・オペラは、1986年に国立バレエ団とともに活動を始め、2014年にはオランダ国立オペラへと発展していった組織である。近年の公演レベルは非常に高いと評価されており、もはや第一級の歌劇場であると言えるだろう。戦後設立後、さまざまな変革を経て現在に至っているが、小林研一郎やユベール・スダーンも関わった経験があるので、比較的新しい組織ではあるが、われわれ日本人にも馴染みを持てる団体ではないだろうか。
|
|
■ 輸入代理店の記事をもとに紹介すると
|
|
1950年代に一世を風靡した伝説の大女優、マリリン・モンロー。モンローは自身の心の奥底にあるものを、精神科医に話すよりもむしろテープに吹き込むことを好んだそうだ。それらのテープは今なお未発表のままである。この事実にインスパイアされたのがオランダの作曲家、ロビン・デ・ラーフであった。オペラは3幕構成で英語歌唱、当ディスクの演奏時間で約2時間の全曲を通じて、聴衆はモンローの最期の日々の目撃者となるだろう。
オペラは、伝記というよりもむしろ実在の人物や事実を通して、モンローの孤独や恐れなどがあぶりだされてくるような構成となっている。年齢を重ねてもなおプロデューサーらから常に同じことを要求され、次々と現れてくる若手から受ける強いプレッシャーにも耐えなければならなくなったモンローは、わずか36歳でこの世を去ってしまう。そんなモンロー最期の日々が描かれたオペラである。モンロー役には気鋭ソプラノ歌手、ラウラ・アイキンを配した意欲的な新作オペラであると言えるだろう。
|
|
■ 英語歌唱、リブレット付きディスク
|
|
当SACDは、ハードカバーで190ページにもわたる立派な解説書が添付されている。そこには初演時の写真も豊富に収録されている上に、オペラの歌唱自体も全編英語であり、かつ英語による詳細かつ丁寧なシノプシス、加えて完全なリブレットまで付いているので、私は俗に言う「ネタバレ」にならない程度に、ここでは紹介に務めたつもりである。
マリリン・モンローとジョン・F・ケネディの関係、さらにはジョー・ディマジオら多くの著名人との関係について、多少でも知識や興味のある方ならば、このオペラの台詞自体は決して難解ではなく、一部の難解な英語表現についてもこの件ついての一般的な知識があれば十分に補うことができると思われる。つまり、結果的に大半の方が容易にストーリーを理解でき、かつこのオペラの意味するところも十分に理解できるだろう。まるで、マリリン・モンローの人生をオペラ風に見ているような気持にさせられてくる。
私にはとても良くできた新作オペラだと思えたので、一度、お聴きになられてみてはいかがだろうか?
|
|
(2019年12月27日記す)
|