「わが生活と音楽より」
わたしのカラヤン 第7章:
カラヤンのマーラーについての管見

第1節 資料編
■ 第2項:カラヤンのマーラーのディスク

文:ゆきのじょうさん

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 カラヤンが録音したマーラーの作品一覧を録音順に掲げます。演奏はいずれもヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーです。なお、オリジナル・ジャケットを重視する立場から、現在入手可能なCDは、ここで掲載したカタログ番号とは殆ど別であることをご了承ください。また一部はLPジャケットを使用させていただきました。

CDジャケット

マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

録音:1973年2月13-16日、ベルリン、イエス・キリスト教会
西独DG (輸入盤 415 096-2)

CDジャケット

マーラー:交響曲「大地の歌」
ルネ・コロ テノール
クリスタ・ルートヴィヒ アルト

録音:1973年12月7、10日、ベルリン、フィルハーモニー
DG (輸入盤 419 058-2)
(ジャケット画像はLP 西独DG 輸入盤 2707 082)

 

マーラー:亡き児をしのぶ歌
クリスタ・ルートヴィヒ アルト

録音:1974年5月8、9日、ベルリン、フィルハーモニー
西独DG (輸入盤 415 096-2、第5番とのカップリング)

 

マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲
クリスタ・ルートヴィヒ アルト

録音:1974年5月8、9日、10月14日、ベルリン、フィルハーモニー
西独DG (輸入盤 415 099-2、第6番とのカップリング)

CDジャケット

マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」

録音:1975年1月20日、2月17-20日、1977年2月18-19日、3月9日、ベルリン、フィルハーモニー
西独DG (輸入盤 415 099-2)

CDジャケット

マーラー:交響曲第4番ト長調
エディット・マティス ソプラノ
ミシェル・シュヴァルベ ヴァイオリン・ソロ

録音:1979年1月22-24日、2月22-24日、ベルリン、フィルハーモニー
ポリドール (国内盤 F35G 50305)

LPジャケット

マーラー:交響曲第9番ニ長調

録音:1979年11月22-23日、1980年2月15-17日、9月30日、ベルリン、フィルハーモニー
独DG(輸入盤 453040)
(ジャケット画像はLP 西独DG 輸入盤 2707 125)

CDジャケット

マーラー:交響曲第9番ニ長調

録音:1982年9月30日、ベルリン、フィルハーモニー(ライブ録音)
西独DG (輸入盤 410 726-2)

 

 LPにおける「亡き児」と「リュッケルト」の歌曲集、そして最後の第9のライブ録音をのぞけば、LPのオリジナル・ジャケットは「虹」をシンボルとしたデザインになっています。デザイナーは、かの有名なホルガー・マッティースであることは良く知られています。カラヤンのディスクでは頻繁に登場し、おそらくマーラーでの「虹」は、ブルックナーでの「鳥の翼」と同じような記号であると思います。

 詳細は後述しますが、カラヤンのマーラーを理解する上でマッティースのデザインした「虹」は大変重要なメッセージであると考えています。したがって、ここでは現役CDではなくオリジナル・ジャケットに近いCD、それがない場合はLPジャケットを掲載させていただきました。近年のCDにおいてデザインを別のものに差しかえるとか、「傾いた」ジャケットでのデザインにしている商品がありましたが、LP時代での「総合芸術」を冒涜している以外何ものでもない、という怒りに似た感慨を常日頃私は持っていることを付言したいと思います。

 なお本稿執筆中の2009年7月になってカラヤン没後20年と銘打ち、第6(国内盤 UCCG4530)、スタジオ録音盤の第9(国内盤 UCCG4528)がオリジナルデザインでCD化されました。第5は何故かLPでの発売となりましたが、その後同年10月にCDとなるようです(国内盤 UCCG4621)。特筆すべきは国内外を問わず、79/80年スタジオ録音盤の第9がCDとしては史上初めてオリジナル・ジャケットで発売されたことです(ただし「浄夜」とのカップリングですが)。

 もう一つ付言させていただければ、同時に発売となった「大地の歌」(国内盤 UCCG4527)はオリジナルの「虹」のジャケットではなく、LP時代に再発された際の中国風の絵のジャケットになっているのは個人的には画竜点睛を欠く、と考えます。おそらく「大地の歌」は「虹」のジャケットでCD化されたことはないと思います。

 それにしても、何故「虹」をモチーフにしたのでしょうか? 虹はご承知のように光のスペクトルです。本来は一つのものを分離したものです。虹のスペクトルは本来連続しており、それを私たち日本人は「七色の虹」と呼びます。しかし、アメリカでは虹は六色として幼児教育では教えています。欧米全体が六色かと思っていましたら、先日観たイギリス製作の幼児向け番組では虹は七色でした。イギリスでは七色なのだそうです。アフリカかどこかの部族では、虹は三色と教えているところもあるそうです。

 虹が何色なのかは、本来連続したスペクトルですから正解はありません。七色と教えられれば七色に見えたり書いたりするだけです。これには根拠がありません。古くからそう教えられてきたから、そうなっているだけです。日本人とイギリス人が七色で、アメリカ人が六色であることを合理的に説明することは不可能です。この「そうなっている」という批判できない事柄を「ア・プリオリ」と呼びます。そして、七色に根拠なく決めることを「恣意性」と呼ぶのです。このことを第2節で採りあげたいと思っていますが、暗示的にカラヤンのマーラーのジャケットに使われていることが偶然とは思えないのだということだけをここでは触れておきたいと思います。

 

2009年8月27日、An die MusikクラシックCD試聴記