■アメリカ東海岸音楽便り〜ボストン響のコンサート・レポートを中心に

2002〜2003 シーズンを振り返って
マズアさんのブルックナーはお好き?

ホームページに戻る
アメリカ東海岸音楽便りトップページに戻る


October 6, 2002 3:00 PM

Kurt Masur, conductor
London Philharmonic Orchestra
Symphony Hall
Boston, MA

BEETHOVEN : Symphony No.1
BRUCKNER : Symphony No.7

 まずベートーベンからです。一聴して、昨日聞いたボストン響よりロンドン・フィルの方が上手いと思いました(悲)。演奏は可もなく不可もなくといったところでした。最初はまだオケが乗っていないような感じを受けましたが、第四楽章は若々しいベートーベンの気持ちが爆発したような感じでよかったと思います。

 問題はやはりというかブルックナーの方です。前回ニューヨークでマズア&ニューヨーク・フィルのコンビで、交響曲第3番を聴きましたが、その時と同様です。マズアさんはオケを壮麗に響かせるのが上手な指揮者だとは思いますが、その指揮するブルックナーは私の感性とはどうも合いません。私から見るとすごく厚化粧をして隈取りしたブルックナーに聞こえてしまいます。具体的にはテンポの度々のギアチェンジ。粛々と進んで欲しいところをセカセカと進んでしまう。なかなか音楽と一緒に呼吸できないもどかしさがあるのです。また壮麗に響かせるのはいいのですが、それが取ってつけた様になってしまい、意味を感じさせないところです。第一楽章の最後の部分など、最後に頂点があるはずなのに途中からもう山の頂点に達してしまい、後はただただこけおどしに聞こえてしまいました。

 第二楽章。ブルックナーの書いた最も美しい音楽のひとつのはずなのですが、そうは響きません。私の一番好きな部分もせかせかと何の意味の感じさせず通り過ぎてゆきます。第三、第四楽章も大筋は同じなのですが、曲自体の魅力が前二楽章に比べてやや落ちるためかまだ救われていました。

 今回の演奏会で、ひとつ苦言を呈したいのが観客のマナーの悪さです。第四楽章、全合奏の後の全休符がありますが、そのもっとも音の余韻に浸りたい部分でなんとホールに携帯の音がなり響きました。もう大いにがっかりです。そのあと確実に演奏のテンションが下がってしまいました。また第一楽章最初のブルックナーの独特の原始霧を思わせる弦の刻みもところでも時計の時報が・・・これは本当にいただけません。観客がホールの6〜7割の入りであったことを差し引いてもマズアさんがさっさと舞台袖にコンサートマスターを引き連れて帰ったのも頷けようというもんです。

《私のお気に入りCD》
CDジャケットブルックナー:交響曲第7番
モーツァルト:交響曲第33番
オイゲン・ヨッフム指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
Altus ALT-015/6(国内盤)

残念ながらタイトルにある「マズアさんのブルックナーはお好き?」のわたしの答えは「ノー」です。それではわたしの好きなブルックナーの演奏を上げるといくつかあるのですが、今一番私の心を捕らえている演奏としては上記のCDです。これまた各方面から絶賛されているのでわたしが書く必要はないのでしょうが、第一楽章のゆったりとした大河の流れような演奏は安心して身を任せられる心地よさです。第二楽章のわたしの一番好きな箇所はあっという間に終わりますがCDの時間表示12:28〜の部分です。この部分を聴くとわたしはいつも目頭が熱くなります。


(2003年6月6日、岩崎さん)

伊東注:ヨッフム指揮コンセルトヘボウ管の上記CDについての伊東のレビューもご参照下さい。