「コンセルトヘボウのシャイー」No.20
ブルックナー:交響曲第5番(ハース版)

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CDジャケット

ブルックナー:交響曲第5番(ハース版)

録音:1991.6.11-13. コンセルトヘボウ大ホール
P:アンドルー・コーナル
E:コリン・ムアフット
国内盤初出:1993.12.22. (ポリドール POCL1378)
International release: August 1993/Catalogue number:Decca 433819

シャイーとコンセルトヘボウ管のブルックナーは、個人的には悩ましい存在だ。マーラーのような明確な個性が感じられず、ブルックナー自体が苦手ということもあり、我ながら情けないのだが、何もコメントできない。

(2003年1月7日、青木さん)


コンセルトヘボウ管はヨッフムの指揮のもとでほとんど歴史的とも呼びうるブル5演奏をしてきた。詳しくはこちらをご覧いただきたいが、いずれもブルックナーを熱狂的に愛し、楽団員までもその影響下に完全に陶酔させたであろうヨッフム個人を感じさせるものだった。それに比べれば、青木さんが記載されたとおり、シャイーのブル5は「確固な個性」は感じられない。数多の強力な競合盤の中にあっては、かなり苦しい。このCDが2003年2月現在国内盤、輸入盤とも廃盤らしいのはそのためであろう。

しかし、ある意味でこれはまことにシャイーらしい演奏だとも言える。この指揮者は自分の強烈な個性を演奏に刻むタイプではないらしい。極めて実直な指揮者だと思う。音楽作りは丁寧そのものなので、ブルックナーのサウンドを何かのフィルターを通さずに聴かせてくれる。演奏しているのがコンセルトヘボウ管なので音そのものも極上。DECCAの録音はそれを見事に捉え、左右にオケが展開する。金管楽器はまろやかに響く。ラッパとホルン群がかけ合いを演じるようにして高揚する第4楽章はDECCAならではの音作りであるが、これはコンセルトヘボウ管での彼らの姿を彷彿とさせるものだ。

演奏は前半2楽章と後半2楽章でノリが全く違う。後半が聴き所である。

(2003年2月11日、伊東)


心を鬼にして言ってしまうと、シャイーのブルックナーの解釈には、あまり個性が感じられない。すごく丁寧に演奏しているのはわかるし、オケの技術も音色も極上。しかし、不思議と惹かれない…
アーノンクールと組んだ時には(3番、4番)あんなに溌剌とした意欲的な演奏をしているオケと同じメンバーの演奏とはにわかに信じられない。

シャイーのブルックナーを聴くとよく、「もしこの演奏がDeccaではなくPhilipsで録音されていたらどうだっただろうか?」と思ってしまう。私は、シャイーのブルックナーの解釈とDeccaの録音ポリシーが合致していないような気がするのです…。

シャイーのブルックナー解釈は、きわめてまっとうであり丁寧です。それを明晰な録音で捉えても面白みは感じません。むしろホールトーンを十分にとったPhilipsの録音の方が音の存在感も迫力も増してくるように思います。そうすれば、シャイーのブルックナーももっと輝きを増してくれるような気がしますが…どうでしょう?

(2003年10月27日、Fosterさん)