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ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団ディスクレビュー
(コメントつき不完全ディスコグラフィ)
■ PART 3. RADIO RECORDING ■

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■ PART 3. RADIO RECORDING ■

 

 世間には、レコード会社による商業録音とは別に、放送局などが演奏会やスタジオ・ライヴを放送用に収録する放送録音というものが無数にあります。それがLPやCD、ビデオなどのソフトとなって流通する場合、レコード会社や楽団当局等がライセンスを得て公式に発売する正規盤と、FM放送を録音したものや関係者だけに出回ったテープなんかを怪しげな業者が勝手にソフト化して無許可で売ってしまう「ブートレグ」とがあり、あるいは録音後50年が経過して著作隣接権が消滅するとライセンスがなくても違法ではなくなったりして、なんだかよくわからないものもあったりします。「貴重盤」とか「プライペート盤」としてCD−Rで売っているものはこの違法ブートレグで、演奏家やその遺族らから発売することの承認を得ていなかったり彼らに著作権料が支払われないといった問題があることはご承知のとおり。ちなみに「海賊盤」は正規盤の音源を無許可でコピーしたもので、これはブートレグとはまた異なるもののようです。

 さてベイヌム先生の場合、非正規のブートレグといったものがほとんどなく、それは日本に入ってこないだけなのかそもそも制作されないのか、いずれにしてもこういうものは需要と供給の関係で成り立つものでしょうから、これにも先生の人気のなさが反映されているようで、ちょっと寂しかったりしたものでした。

 しかしながら、生誕100年を迎えたあたりから、本国オランダのレコード会社などによって先生の放送録音が次々と正規発売され、なかなかの活況を呈していることは、まことに喜ばしい状況です。それらの録音はいずれもモノラルですし、デッカやフィリップスのようなある意味〔芸術的〕ともいえるサウンドに仕上がっているわけでもありません。しかし古いからといって音がこもってボケボケだったり金属的で耳障りだったりする貧弱なものは少なく、演奏の細部、ホールやオーケストラの個性などをちゃんと聴き取れるクリアな録音がほとんど。たいへんありがたいことです。

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

CDジャケット録音:1952年6月(mono/ライヴ)
CD:Audiophile Classics APL101.543 〔輸入盤“Concertgebouw Series”(2001)〕

 このCDには音源の記載がないので、実のところ放送音源なのかどうかもわからないのだが、何らかの許可は取っている云々のクレジットだけはある。オランダのレーベルらしいが〔メイド・イン・ポルトガル〕となっていたりして、とにかく少々怪しげだ。
 しかし内容はよい。なんといってもベイヌム得意のブルックナー、しかももっともポピュラーとされる第4番。基本的にはデッカやフィリップスに録音された後期の曲と同様のアプローチで、重々しさがなくてシャキッとしていながらコクがあるという絶妙の演奏が展開される。ただ残念ながら録音状態は不安定で、部分的に音がやせたり一瞬途切れたりする。全体としてはこの演奏の個性を聴き取るのに不足はないが、広く一般に薦められるというものでもない。

シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレート」

CDジャケット録音:1950年?(mono/ライヴ)
CD:Audiophile Classics APL101.544
〔輸入盤“Concertgebouw Series”(2001)/ブリテンのピーター・グライムスとカプリング〕

 同じくオーディオファイル・レーベルのコンセルトヘボウ・シリーズの一枚。当初は全50枚がリリースされると伝えられたが20枚にも満たないところでリリースがいったん途切れ、その時点でベイヌム指揮のものは上記ブルックナーと本盤の2枚にとどまっている。シューベルトは録音年にクエスチョンマーク付き、ブリテンは記載がないものの実はデッカ音源(SPの旧録音)と、ますます怪しさがつのるのだが、「ザ・グレート」は「ロマンティック」同様にスタジオ録音がない曲ということで、希少価値は大きい。

 序奏部は冒頭のホルンこそゆったりしたテンポだがすぐにスピード・アップし、スムーズに主部へ移行、そのまま一気に駆け抜けてすごい速さで締めくくられる第1楽章はいかにもベイヌム的だ。しかしその後もキビキビと進行していくこの演奏、少々ふくよかさに欠けており、フィリップスに録音した他の交響曲の完成度には及ばない、というのが正直なところ。音質はやはりよくなくて、一瞬音が飛んだり定位がおかしくなったりする部分がある。

ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲

録音:1948年1月4日(mono/ライヴ)
CD:Audiophile Classics APL101.552
〔輸入盤“Concertgebouw Series”(2003)/クーツィール指揮の自作交響曲他とカプリング〕

 久々にシリーズが再開した。まだ国内の店頭にはならんでおらず、未聴。後述するボックスに収録されているこの曲はニューヨーク録音だった。

“GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY EDUARD VAN BEINUM”

CDジャケットa)ブラームス:交響曲第2番
録音:1955年9月16日(mono/recorded at Staatstheater Stuttgart/SWRによるライヴ録音)
b)リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
録音:1955年9月16日(mono/recorded at Staatstheater Stuttgart/SWRによるライヴ録音)
CD:IMG Artists 7243 5 75941 2 7〔輸入盤(2003)〕

 「20世紀の偉大な指揮者たち」の一枚であり、本稿〔フィリップス篇〕で取り上げたCD。この二枚組に収録された2曲のライヴ録音は、ベイヌムとヘボウが1955年9月15〜17日に行った西ドイツ公演の中からシュトゥットゥガルトでの演奏会を収録したもの。パブリッシュ・クレジットが2003年となっているので、これが初出と思われる。

 ブラームスはフィリップスへのスタジオ録音の翌年に当たり、第1楽章の演奏時間がそれよりも1分ほど長いが概ね同傾向の演奏。編集なしの実況録音としてはすごい完成度だ(ちょっとだけミスもあるけど)。第4楽章の熱気など月並みだがまさに〔ライヴならでは〕という印象で、音質も上々、これは実に価値ある音源というべきだろう。

 R.シュトラウスは珍しいレパートリー。ブックレットにも「この作曲家の商業録音は残さなかった」とあるが、実はこの6年前にデッカに吹き込んでいるらしい。しかしこのライヴ録音があればそれで十分、という気にさせられる名演。鮮やかでメリハリの利いた表現、艶っぽく弾力のある響き、実に魅力的なシュトラウスとなっている。このコンビでティルやツァラや英雄の生涯も…とないものねだりをしたくなってしまうほど。

 以上の2曲は録音日が同一なので、このコンサートがまるまる収録されたとすれば、その日の他の曲の音源も残っていることになる。大いに気になるところだ。

(つづく)


(An die MusikクラシックCD試聴記)