シュターツカペレ・ドレスデンによる
ブルックナー交響曲第8番の録音
■ ヨッフム盤
EMI(国内盤 TOCE-3175)
録音:1976年11月3-7日
録音場所:ドレスデン、ルカ教会
録音エンジニア: クラウス・シュトリューベンこの演奏については、こちらでも詳しく述べているとおり、私最大の愛聴盤である。「軽量級のブルックナー」と評する向きもあるだろうが、全く味わい深い演奏であり、未だにこれ以上内容のある演奏に私は遭遇していない。
なお、当盤に聴く金管楽器の音色、特にトランペットのそれは大変特徴的である。この時代におけるトランペット軍団の奏法を記録した録音としても貴重だと私は考えている。
ただし、HS2088方式による国内盤のリマスタリングに私は満足していない。もしよりよい音でこの録音を楽しみたければ、下記全集をお勧めする。
EMI(輸入盤 7243 5 73905 2 1)
ブルックナーファン必携の9枚組全集。
この録音についてはこちらもご参照ありたい。■ シノーポリ盤
DG(国内盤 POCG-1952/3)
録音:1994年12月14-21日
録音場所:ドレスデン、ルカ教会
録音エンジニア: クラウス・ヒーマン
R.シュトラウスの「メタモルフォーゼン」を併録このCDが店頭に並んだときには「ブルックナーをこんなふうに演奏していいのか?」というリスナーからの意見があったそうだ。私も初めて聴いたときは若干マーラー風という印象を持った。特にオケが最強音で鳴るところはマーラーの交響曲第6番ばりに聞こえたものだった。が、シノーポリが死んだ今これを聴き直してみると、熱血漢のシノーポリらしい演奏だと感じられるようになった。これはこれで音響的に面白いと思う。私もある程度客観的に聴けるようになってきたのかもしれない。
音響面でいえば、この録音を担当したグラモフォンのクラウス・ヒーマンはこの録音がお気に入りらしく、Mostly Classic 2月号でこう書いている。
暖かく宗教的なブルックナー演奏。ルカ教会のサウンドの格好のデモンストレーション。
私は「暖かく宗教的なブルックナー演奏」との意見には賛同できないが、サウンドそのもののデモンストレーションには良いCDだと思う。この頃DGは、4D方式という新たな録音技術を喧伝していた。シノーポリ盤ではまさにその当時の「グラモフォンの音」を聴ける。ヨッフム盤と同じルカ教会を使って収録しているにもかかわらず、全く違ったサウンドになっていることも興味深い。
なお、この演奏とヨッフム盤の演奏時間を記載しておく。ともにノーヴァク版である。
ヨッフム シノーポリ 第1楽章 13:55 17:19 第2楽章 14:00 15:19 第3楽章 27:24 27:53 第4楽章 20:46 25:20 合計 76:07 85:51ヨッフム盤のテンポに慣れると、シノーポリ盤が異常に遅く感じるが、実際にはヨッフム盤のテンポの方が稀少のはずである。演奏時間だけを見ればシノーポリ盤の方が「それ」らしい。そうであるにもかかわらず、ヨッフム盤に強烈なブルックナーらしさを感じ、シノーポリ盤にはマーラーの影を感じるのはどうしたことなのだろうか。単純に重厚長大な演奏がブルックナーにふさわしいわけではないのだろう。
(2004年5月20日、An die MusikクラシックCD試聴記)