カルショーの名録音を聴く
■はじめに

文:青木さん

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「レコードはまっすぐに」表紙

 ジョン・カルショー著『レコードはまっすぐに』(以下「本書」と表記)を読みました。サブタイトルに「あるプロデューサーの回想」とあるように、これはデッカの名プロデューサーによる回想録で、本人の死のため未完のままで1981年に発行された”Putting The Record Straight”を山崎浩太郎氏が翻訳したものです。恐ろしく分厚い本ですが、活字が大きめなのと内容が面白いせいで、ほぼ一気に読んでしまいました。カルショーのデッカに対する愛憎入り混じった複雑な思いが通奏低音のように全編を貫いていて、その上で賑やかに奏でられるのは数々の演奏家たちとのレコーディング裏話。往年のデッカを愛するワタシにとってはこの上なく興味深い本でした。

 一読したあと、言及されている録音のうちCDで持っているものを聴きながら再読してみると、さらに楽しめました。その途中で、昨年発売されたオムニバスCD「名プロデューサーの名録音」シリーズからカルショー(カルショウと表記)篇を購入。すでに持っていた姉妹シリーズ「名ホール/名録音会場の名録音」のコンセルトヘボウ篇があまりに低レベルの出来だったのでどうせこれもダメだろうと思いつつ、中古盤店で半額だったのでつい買ってしまったのですが、やはり予想通りでした。ライナーノートにはカルショーの略歴と収録曲の解説があるだけ。収録曲の選定基準や選曲経緯の説明、各録音に対するカルショーの係わりや演奏者についての解説、カルショーについての関係者のコメントや専門家の評論、録音風景の写真、詳細な録音データ、などは一切皆無です。ワタシの理想にはまったく及ばぬ商品でありました。

 ないなら自分で作ろう、などと考えたわけでは決してありません。でも、本書に出てくる録音エピソードを紹介しながらそのCDの試聴記をまとめていくだけでも、まだマシなものになるのでは…というのが、本稿の企画意図であります。必然的に引用が多くなってしまう点はご容赦ください。なお念のために申し添えますが、CDの試聴記の部分はワタシの個人的な感想に過ぎませんので、本書の内容とは無関係です。また本書からそのまま引用した箇所には『 』を付けました。

1.デッカとカルショーの略歴(2005年8月16日掲載)

2.コンセルトヘボウとカルショー(2005年8月17日掲載)

3.ショルティとカルショー(2005年8月22日掲載)

4.カラヤンとカルショー(2005年8月29日掲載)

5.ブリテンとカルショー(2005年8月31日掲載)

6.他の名演奏家たちとカルショー(2005年9月3日掲載)

 

(2005年8月16-29日、An die MusikクラシックCD試聴記)