ARCHIVE OF WHAT'S NEW ?
2001年2月
2月28日:所有する喜び
先日、親切な読者から、「伊東さん、こんなCDが出ているのを知っていますか?」と教えていただいたCDがあります。以下のCDです。
Robert Casadesus George Szell l'amitie musicale
モーツァルト ピアノ協奏曲集
ピアノ演奏:カサドシュセル指揮コロンビア響
録音:1955年?〜1968年?SONY CLASSICAL(SM2K60043)DISC 1
- ピアノ協奏曲第12番 イ長調 KV.414
- ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調 KV.450(ステレオ録音)
- ピアノ協奏曲第17番 ト長調 KV.453(ステレオ録音)
DISC 2
- ピアノ協奏曲第18番 変ロ長調 KV.456
- ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 KV.466
- ピアノ協奏曲2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 KV.365(第2ピアノはガビ・カサドシュ)
指揮者がセルで、ピアニストがカサドシュ(1899-1972)であれば、モーツァルト演奏の出来映えは言わずもがな。モノラル録音が多いのですが、カサドシュのピアノを鑑賞するには十分です。ステレオ録音のピアノ協奏曲第15,17番ではよりいっそう清澄さが加わり、さらに美しい演奏に感じられます。が、このCD、すごいのはその演奏だけではないのです。
紙ジャケット(デジパック)仕様で2枚組にされたこのCDを開くと、詳細な解説を見ることができます。それは、セルがカサドシュに宛てた手紙や、パレーやクーベリック、アナトール・フランス、ブーレーズらが語るカサドシュ像、カサドシュの年譜などを収録した、非常に充実した解説書で、白黒ながら写真も多数盛り込まれています。紙ジャケット仕様であっても、ここまで芸術的な作りのCDは貴重です。
問題は言語です。SONY CLASSICALからの発売といいましても、これはフランスSONYによる特別企画盤のようです。フランス国外で販売することを考えていないのか、あるいは、フランス人らしさを見せつけたいのか、表記は全てフランス語であります(T_T)。学生の頃、私はフランス語を第2外国語にし、趣味で大学4年になってまでフランス語を勉強しておりましたが、このCDに書いてあるフランス語には全くお手上げでした。せっかく充実した作りの解説書なのに。もっとも、こうした状況が現れるからこそ言葉を勉強する気になるのですね。辞書を片手に解説書を読みたくなります。その意味でも、さすが「おフランス」といいたくなりますね。
値段ですが、このCDはタワーでは5,000円近くしました。高いですか? 最近はCDの値崩れ現象が起きています。9枚組で3,000円程度のCDが市場を攪乱している中で、わずか2枚組のCDが5,000円近くもするのですから、これは比較的高価なCDといえるでしょう。でも、どうですか? この紹介文を読んだら、あなたもこのCDを買って、CDだけでなく、ジャケットや解説書を鑑賞したくなっていませんか? このように、所有することの喜びを与えてくれるCDを作れば、自分で自分の首を絞めるような安売りはしなくてすむのですね。フランス人は賢いです。
2月27日:CD試聴記に「娯楽としてのショスタコーヴィッチ」を追加しました。昨日の記事の余録です。
2月26日:CD試聴記に「ショスタコーヴィッチの交響曲第7番<レニングラード>」を追加しました。ベルグルンド指揮ボーンマス響の演奏です。
2月25日:寒稽古が....。
週末はまたもや寒稽古に行っておりました。が、土曜日はまだ2月だというのになんと雨! 木曜日、金曜日と続けてぽかぽか陽気でしたから、雪の状態には期待していなかったのですが、スキー最盛期の2月に雨が降るとはちょっとがっかりです。私はさすがに雨の日だけはスキーをする気になれないので、土曜日は一日宿で子供と戯れておりました。
ただし、土曜日の夜からは雪が降り始めましたo(^o^)o。朝起きてみると、軽く30センチは積もっています。「うほほーい、こりゃよかった! 早速滑りに行かねば!」と思ってよく見ると、すごい吹雪です(T_T)。平地にある宿からは、苗場スキー場の斜面が全く見えていませんでした。晴れていれば、目の前にどーんと見えるのです。ちょっと風もあるし、もしかするとリフトが止まっているのではないかと心配して苗場スキー場に電話してみると、山頂にある筍山ロマンスリフト(ペアリフト)だけが視界不良を理由に運休しているだけで、他のリフトは全て稼働していることが分かりました。でも、視界は極めて悪く、とても苗場で滑る気になれません。仕方なく、私は宿から歩いて2分のところにある浅貝スキー場に赴き、緩斜面を10本だけ滑って帰ってきました。その後女房さんと交替です。夫婦合計で20本。まあ、吹雪の日のスキーとしてはそんなところでしょうか?
さて、寒稽古、寒稽古と騒いでおりましたが、来週の土日にはもう3月に突入しております。あっという間に温かくなってしまいます。困りますねえ。私は冬が好きなので1年中寒い方がいいのですが....。でも、寒稽古が続いている間は、スキーの滑走時間は伸びても、CDの試聴時間は激減してしまうのであります。また更新作業もままなりません。他の季節であれば、ある程度の試聴記を日曜日のうちに書きためておけるのですが、それも難しくなります。そうした中で、今年は青木さんによる膨大な「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」原稿が飛び込んできたわけです。コンテンツ作成難に陥っていた私はとても助かりました。しかし、いよいよ今週からはコンテンツを人に頼れなくなりました(^^ゞ。仮に寒稽古の間であっても、私はコンテンツの手抜きをする気は全くありません。明日以降、キリキリとCD試聴記をアップする所存であります。先週末からの宿題ともども、盛り沢山で進めたいと思います。皆様、乞うご期待であります。
2月23日:「私のカペレ」を久しぶりに更新しました。今回は「飯守 邦也」さんの文章です。今回の文章には重要事項が含まれています。必ずお読み下さい。
2月22日:本日は2部構成です。
その1:リンクのページに2サイトを追加しました。
CD、コンサート(クラシック音楽中心)の紹介、京都の思い出等を含む多彩なページ。作りはシンプルだが、既に膨大なテキスト情報を収録している。「musik」のインデックスなどとても上手にできている。
東京都東村山市にあるCDショップ。規模こそ小さいが、BERLIN ClassicsのCDを大量に扱うなど、店長のこだわりを感じさせる。私のようにシュターツカペレ・ドレスデンの録音を蒐集する者にとって、BERLIN Classicsは重要である。また、当店が発信するメルマガは、CDの発売予定などを盛り込んでいるもので、その情報はとても早い。マイナーレーベルにもしっかり対応しているところが嬉しい。
その2:女房さん怒る!
先日、私は女房さんに叱られてしまいました。理由は、「家事に協力してくれない...」ではなくて、「あなたは最近ちっとも勉強していない」というものでした。「そんな亭主は嫌いです」とまで言われました。こんなことで叱られるのでは、「家事に非協力的」などという理由を出してもらった方がずっと気が楽ですね。
で、実際はどうなのかと申しますと、確かに勉強していません(T_T)。私はとりあえず、仕事と家事(子育てを含む)と趣味を両立(鼎立か?)させてきたつもりなのですが、それで手一杯で、新しい知識、技術、価値観などの修得を最近怠ってきました。このホームページで使っているHTMLも、開設時に覚えたものをそのまま流用しているだけで、新規の技術を取り入れたりはしていません。また、今までは仕事には直接関係のない書物を大量に読んだりしていたのですが、それも最近減少しています。そういう状況を毎日見ている女房さんは、ついに爆発、私に鉄槌を下したわけです。本当のことだけに身にしみてしまいました。猛省しております。
「人生においてはチャレンジ精神こそが肝要」と私はずっと考えてきたのですが、このようなことでは掛け声だけになってしまいます。それこそ女房さんに愛想をつかされて離縁されかねません。心を入れ替えて精進することを誓った私でありました。
2月21日:青木さんによる「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」に「来日公演」を追加しました。これを見ますと、ハイティンクが若い頃既に、古典派から現代音楽まで幅広くカバーしていたことや、大曲にも意欲的に取り組んでいること、意外にも?フランスものにも比重を置いていたことが分かります。興味深い内容ですので、まずはご覧下さい。
ところで、青木さんによる「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」の集中連載はいったんここで終了します。1ヶ月以上も前から、4万字を超えるテキストと膨大なディスコグラフィーを頂いていましたが、連載開始後も新たなテキストが送付されてきました。もう何文字あったのか、私も分かりません(^o^)。青木さん、お疲れさまでした。ここまでのテキストを書くというのは、並大抵のことではできません。年末年始を利用されたとはいえ、青木さん、おそらくは寝食を忘れて取り組まれたはずです。
あまりの分量なので、いきなり全部をアップしても読者の方々は消化不良を起こすのではないかと思い、分割してアップすることを私は青木さんに提案申しあげました。分割すればアップも簡単だろうと甘く見ていたこともあります。が、いざアップしはじめますと、なかなか大変でした。1日分でさえ時計と睨めっこしながら作業を進める有様です。こんなことでは、最初から全編をアップするのは不可能でしたね(^^ゞ。
昨日アップしたディスコグラフィーも力作でした。あのディスコグラフィーを作る際、私はコンセルトヘボウ管弦楽団当局が作成したものがないかどうか当局に問い合わせてみました。しばらくしたら、エクセルで作成されたファイルがE-mailで送付されてきたのですが、中身は青木さんが作成したものにはほど遠いお粗末なものでした。どうやら当局もコンセルトヘボウ管の膨大な録音を把握し切れていないようです。青木さんが作成したディスコグラフィーは原則的には英文表記ですし、コンセルトヘボウ管当局に見せたらきっとびっくりするんじゃないでしょうか? うちの女房さんも、「これなら当局に買ってもらえるんじゃないの?」と言っておりました。
なお、青木さんによる集中連載は「いったん」終了しますが、「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」の更新は、そのうちに再開するのであります。「An die Musik」は「クラシックCD試聴記」ですから、試聴記を必ず載せるのです。というわけで、しばらく中休みを入れたところで、青木さんのセレクション、伊東による執筆で「コンセルトヘボウ管弦楽団の名録音 ベスト10」(仮題)というシリーズがスタートする予定です。ただし、CDをベスト10に絞りきれないのと、私の愛聴盤も含めたいことがありますので、取り扱うCDはもう少し増えそうです。いずれにせよ、乞うご期待でありますね。
2月20日:「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」に「ディスコグラフィー」を追加しました。
膨大な分量があり、ファイルサイズも大きいので、青木さんにも無断でファイルを4つに分割しました。まずは「モノラル篇」、次に「ステレオ篇 ハイティンク」、「ステレオ篇 シャイー」「ステレオ篇 その他の指揮者」となっています。青木さん、ごめんなさい! でも、「ステレオ篇 その他の指揮者」もさらに3分割したかったんです...。全くすごい分量ですね。この録音を全部揃えたら、きっと家庭が崩壊するでしょうね。恐ろしい!
なお、毎度のことですが、私は技術力がからっきしなので、こうしたファイルを作るのが得意でありません。もっと見やすい形でアップしたかったのですが、素人レベルで何かうまい方法はあるのでしょうか? お金をかければ本格的データベースを構築し、インターフェイスも工夫して見やすい情報にできるのですが....。オラクルマスターのまんぼうさん、バイトしてくれないかな?
2月19日:「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」の「レコーディング」に、昨日の続き、「1980年代の録音」、「1990年代の録音」、「放送音源等」を追加しました。
2月18日:まだまだ続く「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」。本当にすごい分量ですね。今日はいよいよ「レコーディング」に突入しました。が、私の処理が間に合わず、全部を一度にアップできません。青木さん、ごめんなさい。
2月16日:話題騒然の「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」に第4弾「コンダクター」を追加しました。といいましても、現時点ではハイティンクの分しかありません。他の指揮者の分は多分ずっと先になります(^^ゞ。何卒ご容赦下さい。...もしかしたら、ベイヌムの項は青木さんではなくて、私が担当することになるのかな? うーむ。
2月15日:「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」に第3弾「フィリップス」を追加しました。オーケストラ、ホール、フィリップス。ということは、明日はいよいよ...。
2月14日:「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」第2弾、「ホール」すなわち「コンセルトヘボウ」についての記事をアップしました。むふふふふ...。今日までの分量に怯んでいませんか?まだ半分にもなっていませんよ。
2月13日:青木さんによる「コンセルトヘボウ管弦楽団のページ」を開設しました。青木さんからは本文だけでも4万字に及ぶ膨大なテキストを頂いております。す、すごいぞ! その本文だけでなく、資料編としてこれまた膨大なディスコグラフィーもできあがっております。あまりに膨大ですので、これから1週間にわたって少しずつアップしていきます。それでも1回分の内容がずっしりと手応えがありますので、皆様、ごゆっくりお読み下さい。
なお、これだけの量ですと、ファイルを作ってテキストを張り付けるだけの作業すらままなりません。ファイルの整備中ではありますが、時間切れですので一旦アップします。これから時間をかけて体裁等を整えていく予定です。読みにくい点などは何卒ご容赦下さい。
2月12日:「アバド・ケンペのベートーヴェン交響曲全集を聴く」に最終回、アバド指揮の交響曲第9番を追加しました。
長々と続けた企画でしたが、これが最終回です。皆様、作者の勝手気ままにおつき合い下さいまして、まことにありがとうございました。このような地味な企画は多分読者を大幅に減らしてしまうのではないかと心配でしたが、連載中も少しずつ読者が増えてほっとしました。このシリーズは、私が読者に「何か」を伝えたい、というよりは、私自身が真剣にベートーヴェンの交響曲全集に取り組んでみたいというのが発端にありました。一部のCDが異常な低価格に陥っていますが、仮に値段が下がったとしても、聴き方を乱雑にしてはいけない、という自戒の意味も含んでいました。
しかし、やはり一度にアバドとケンペの両方を聴き続けるのはしんどいですね(^^ゞ。私はさらに参考盤も聴いていましたから、しばらくベートーヴェン漬けでした。そのかわりベートーヴェンの交響曲を以前よりは少しだけでも深く知ることができたと思っています。また、アバド、ケンペの全集を一度に揃えたとしても総額で約1万円! その投資だけで約3ヶ月にわたる更新ができるのですから、考えてみれば、良いことずくめだったわけです。
さて、これだけの企画の後では、しばらくおとなしくしているのが普通でしょうが、明日からまたまた新シリーズが始まるのであります。しかもAn die Musik開設以来の集中連載です。乞うご期待下さい。
2月9日:昨日の続きです。今日はアバド盤ではなく、「第九」演奏の盲点、と題した記事をアップしました。一体いつこのシリーズは終わるんでしょうか。駄文ばかりを書き連ねて、申し訳ありません。
2月8日:「アバド・ケンペのベートーヴェン交響曲全集を聴く」に、ケンペ指揮の交響曲第9番を追加しました。時間がなくてアバドの分まで書き切れませんでした(T_T)。それどころか、ケンペの分も中途で終わってしまった! ううう、もっと時間がないものでしょうか!
2月7日:趣味
今日の日経新聞夕刊、「鐘」のコーナーにこう書かれています。
「趣味というのは出来るだけひとつに絞った方がいいように思う(藤本義一著『人生の賞味期限』)」 趣味は人生を豊かにする。かといって、いろいろ手を広げると、どれも中途半端に終わり、充足感は得られない。「多趣味は無趣味」になりかねない。 ...以下省略 |
うーむ、そうでしょうか。複数の趣味を持ち、それぞれを追究するというのは可能だと私は思うのですが...。趣味というのは拡がりと深さが両方あるから面白いと私は考えています。ひとつのことだけを集中してやるより、いくつかを同時進行させていくと、確かに深さの面では弱くなりますが、拡がりは驚くほどでてきます。その中で時間が経過していくと、今度は深さが得られてきますから、一概に「多趣味は無趣味」とは言い切れないと私は思います。
私は女房さんから、「これ以上趣味を増やさないでくれ」と懇願されています。私が趣味にかけるお金、労力、時間は半端ではありません。半端でないからこそ面白いのですが、家族にとっては大きな不幸なのであります。クラシック音楽を一人で楽しんでいた時はまだしも、An die Musikを立ち上げ、更新作業を日々行い、このページで知り合った読者の方々と交信を重ねて行くにつれて、私の時間のかなりの部分が消えていきます。私は趣味でやっていますから、とてもハッピーなのですが、女房さんにしてみれば愛する亭主をクラシック音楽に奪われていると感じるのも無理のないことでしょう。
さて、クラシック音楽をもっと知りたい、もっと聴きたい、というクラシック音楽の趣味だけでなく、私には歴史研究という趣味もあります。日本の歴史も、世界の歴史も大好きです。日本の歴史では平安時代後期から鎌倉時代を経て室町、戦国時代あたりまでをもっと知りたいと思います。世界の歴史となると、人生が何回あっても知り尽くすことができそうにないのですが、それでもなお研究をしていきたいと思っています。それにともなう読書も、趣味といえば趣味で、叶うことならば月に10冊は読みたいものです。
では、読者の皆様から、「お前がやっているスキーやテニスはどうなのか?」と訊かれそうですが、これは趣味ではありません(^^ゞ。まず、スキーですが、これは修行道ですから、趣味ではありません(◎-◎)。私はレジャーとしてスキーをやっているのではなく、稽古として行っているのであります。一方、テニスはどうか、といいますと、これはスキーの基礎体力作りを目的にしています。ということは、これも趣味とはいえず、修行の一環であります。え? 馬鹿言ってんじゃない?
と、ここまで書いたところで、女房さんが怒りに打ち震えているのに気がつきました。ま、まずいぞ! 家庭内闘争がまた激化してしまいます。皆様、放送席は危険になりました。また明日お目にかかりましょう。バキバキボキッ、ブツッ......。
2月6日:クラシックは....。
昨日の日経新聞夕刊に、ベルリンフィル第一コンサートマスター、安永徹さんの記事がでかでかと載っていました。その記事の見出しがセンセーショナルでしたので、私は思わずぎょっとしました。見出しには、「『クラシックは駄目になる一方』行く末案じ子供のための音楽会」とあります。
「クラシック音楽はどんどん駄目になっている」というのは、安永さんご自身の言葉です。その理由として日経新聞の記者は、安永さんの他の言葉を総括し、現代が「天才といわれる若者が現れては消える使い捨て時代」であることと、「著名演奏家の金銭主義がとどまることを知らない」風潮があることの2点を挙げています。
クラシックファンとしては何とも寂しい話です。安永さんは、それを少しでも是正しようと、対話型コンサートを始めているようです。それが個人の力でどこまで広がっていくか予断を許さないところですが、誰かが何かをして方向を変えようとしなければ、事態は悪化するばかりと安永さんは判断されたのでしょう。
クラシック音楽が駄目になるというのは、行き過ぎた商業主義のせいではないかと私は思っています。クラシックだってひとつの産業ですから、商業ベースでものを考えるのは致し方ありません。が、クラシックに限らず、何もかもがお金で換算される風潮はいただけません。また、知名度に安住する傾向はクラシックファンには根強いと思います。私たちだって、有名で、しかも高価な演奏家のコンサートであれば、安心してチケットを買ったりする傾向がないとは言い切れませんね。
さらに悪いことには、現代においては、音楽が単純な消費財として消費され、使い捨てられていますね。それは、あっても構わないことなのですが、肝心の「感動」が忘れ去られているのではないかと私は危惧しています。昨日もCD単価の異常な下落を話題にしましたが、どうもクラシック音楽界は冴えない話ばかりですね。これではいけません。せめてAn die Musikでは心に沁みいる「感動」を大切にした音楽鑑賞を続けていきたいと思います。
2月5日:ベイヌム
ブルックナー
交響曲第5,7,8,9番
ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管
録音:1953年〜59年
PHILIPS(輸入盤 464 950-2)Dutch Mastersシリーズの1枚。先週Yahoo!のオークションで高値買いしたCDです。高値買いといいましても、4枚組で2,400円。1枚あたり600円!であります。昨年から続いているCDの単価デフレはすさまじいですね。これではメーカーも小売店も利益が出ないのではないかと思います。「良いものを安い価格で」と言えば、聞こえはいいのですが、「このCDはそんなに安っぽいのか?」と首をひねらざるを得ません。
もちろん、ベイヌム指揮コンセルトヘボウ管のCDが安っぽいはずはないのであります。ベイヌムは1959年4月13日に他界するまで、文字どおりPHILIPSの看板アーティストでしたし、立派な演奏を数多く残しています。今回私が聴きたかったブルックナーの交響曲第5番もそうでした。ライブながらほぼ完璧なアンサンブル、輝くばかりの音色、機能的に磨き上げられたオーケストラの威力がまざまざと示される見事な演奏が聴かれます。演奏のスピード感も十分にあり、さすが超一流オケのライブだ!と感激しました。これほどの演奏なら、単体で2,400円にしても十分おつりが来るはずなのですが、どうなっているんでしょうね?
私はコンセルトヘボウ管が大好きですが、録音で聴く限り、このオーケストラの最盛期は1950年代です。つまり、ベイヌムが首席指揮者であった時期と重なります。1950年代ということは、録音のほとんどがモノラルなのですが、モノラルであってもなお、輝かしさではステレオ期の録音を凌駕しています。ベイヌム指揮の一連のブルックナーは、コンセルトヘボウ管の黄金時代を記録する重要な録音なのです。しかも、第5番が録音されたのは、ベイヌムが死ぬ直前の1959年3月。最後まで輝き続けながら指揮者生活を全うした人だったようです。ベイヌムは没してから40年も経っていますから、今さら大ブームが来るとは私は考えていませんが、その演奏及び録音の価値に相応の値決めはできないものかと思います。
それと、Dutch Mastersシリーズは最初すぐ消えてなくなる短いシリーズだと思っていたのですが、このベイヌム盤はもう「Vol.57」です。一体いつまで続くのでしょうか。音質も優れていますし、カップリングもまずまず。問題は解説書の活字がとても小さく、読みにくいことくらいですので、コンセルトヘボウ管関係の音源を集める私としては大変気になります。総合的なカタログとか、発売計画の案内はないのでしょうか? もっとうまく宣伝すればいいのに。安くするだけが商売ではないと私は思うのですが、いかがでしょうか。
2月4日:私は何のために....。
今週末も苗場の寒稽古に行って参りました。懸案であったブーツの調整も終了し、ショートターンをしても足がもたつかないようになりました。これで技術さえ伴えば、完璧なんですが。
苗場スキー場は有名なスキー場です。標高差900メートルの中で、初級者から上級者までが滑って楽しめるように作られています。が、このスキー場ほど上級者が多く集結するスキー場を私は他に知りません。それこそ、SAJの1級レベル以上のスキーヤーがウジャウジャいるんです。コブ斜面に行きますと、基礎スキーでえぐれたコブばかりをわざわざ選んで難なく滑るかわいいお姉さんの集団がいたり、急斜面でステップターンをして思いっきり勢いをつけながら真っ逆様に降下していくおじさん達の姿が目についたり。すごいですねえ。とても私のような低レベルのスキーヤーではついて行けそうもありません(T_T)。そういうスキーヤーが目立つからこそ、励みになるのではありますが...。
私は29才でスキーを始めました。当時、私はそのようなミーハーな「遊び」をやるつもりなど更々なかったのですが、親戚がスキーの板、ウエア等一式を私にくれて、しかも年末年始の間付きっ切りで教えてくれるというので、帰省している間暇を持て余していた私は仕方なく始めたのであります。29才で始めるというのはかなり遅いです。私はもともと運動神経が良いほうではなかったのですが、どういうわけか、その後もスキーを嫌にならずに続けてきました。スキーを始めて以来、人とのつながりも増え、そして濃密になりました。大げさな表現ですが、私の人生はスキーによって変わっています。
スキーの面白いところは、チャレンジ精神がなくなると、それ以上の進歩がなくなる点です。「この程度でいいや」と思った瞬間、レベルアップは望めません。それどころか、以前容易に滑ることができた斜面さえまともに滑ることができなくなるのです。その意味で、スキーをやり続けるというのは私にとって大変重要であります。
しかし、昨日はちょっと情けなかったです....。というのも、金曜日の晩に同じ業務を推進している職場のチームと飲みに行き、夕方6時から12時まで!延々と飲み続けたため、土曜日は2日酔いでフラフラだったのです。そのため、私はほとんど滑ることができず、宿でグロッキー! こんな情けない状態になるとは。これではチャレンジ精神を云々することはできません。一体私は何のために苗場まで行って帰ってきたのか、反省したいと思います。
さて、クラシック音楽に全く関係のない話を書いてしまいましたが、今週も鋭意更新をいたします。また明日からの更新をご期待下さい。
2月2日:交響曲第8番の「参考盤 その2」を追加しました。私は本当にしつこい男ですねえ。「もういい加減にやめろ!」と言われそうです。
2月1日:「アバド・ケンペのベートーヴェン交響曲全集を聴く」に、参考盤としてケンペ指揮バイエルン放送響のライブ盤を追加しました。
(An die MusikクラシックCD試聴記)