ラフマニノフの交響曲第2番に聴くDECCA録音

図書館のCDにアシュケナージが指揮したラフマニノフの交響曲第2番があるのを発見したので借りてきました。

rachmaninov_2_ashkenazy

ラフマニノフ
交響曲第2番 ホ短調 作品27
交響詩「死の島」作品29
ヴラディミール・アシュケナージ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:交響曲第2番=1983年1月、死の島=1981年9月
DECCA(国内盤 UCCD-50076)

真夏にこの曲を聴くと暑っ苦しくて耐えられないかもしれないという不安はCDを聴き始めてすぐに払拭されました。それは、このCDの音響があまりにも美しく、陶酔させられるからです。この録音を聴いて、その音に魅了されないなどというクラシックファンがいるでしょうか。この音で聴けるからこそ、この曲が精彩を放つのです。

ラフマニノフの交響曲第2番は、実演で聴くと長大なだけで退屈することがあります。ところが、アシュケナージ盤は音響だけで聴かせるという離れ業をやってのけます。それがアシュケナージ一人の功績かといえばとてもそうだとは言えません。コンセルトヘボウ管という希代のオーケストラとDECCAの録音スタッフにも多くを負っているのです。

私の世代はPHILIPSやDECCAの録音によってコンセルトヘボウ管の音を知りました。この二つのレーベルが聴かせた音こそがコンセルトヘボウの音でした。PHILIPSとDECCAだけがコンセルトヘボウというホールの特性とオーケストラの響きを完全に掌握した録音を生み出したのです。特にDECCAの録音は美しかった。美しすぎるとさえ思いました。だから、もしかすると、私が聴いていたのはコンセルトヘボウにおけるコンセルトヘボウ管の音ではなく、DECCAが作ったコンセルトヘボウ管の音なのではないかと疑念を持ったこともありました。しかし、実際にコンセルトヘボウでこのオーケストラを聴いた時に、その疑念は解消されました。

では、どのレーベルも、コンセルトヘボウでコンセルトヘボウ管の録音を行えば成功するのかといえば、そんなことはないのです。DGもいくつかの録音をコンセルトヘボウで行いましたが、このレーベルは結局ホールの特性を全く掴むことができなかったようでした。DGのコンセルトヘボウ録音は音響面では失敗作です。そして、もうひとつ。RCOLiveです。コンセルトヘボウ管の自主制作盤でありながら、音質面では今ひとつでした。DECCAのスタッフは単に何となく名録音を作れたのではなく、マイク・セッティングのノウハウなど、彼らにしかできなかった何かがあったのでしょう。

しかし、今やCDの録音自体がなくなってしまいました。アシュケナージのラフマニノフは、コンセルトヘボウでのコンセルトヘボウ管の音を最高品質で楽しめるCDとして骨董品的価値を持つに至りました。現在にではなく、30年も前に最高峰があるというのは寂しいものです。

(2015年8月3日)

ラフマニノフの交響曲第2番に聴くDECCA録音」への14件のフィードバック

  1. ヘボウ繋がりということで書かせて下さい。
    私が初めてヘボウの魅力に気づかされたのは、コンドラシンと録音した「シェエラザード」の録音でした。その薫るような音に魅了され、以来、数多くのヘボウのCDを集めるようになりました。その中で、このサイトを知り、有益な情報をたくさん得ることができました。
    不思議なことに、最初期にリリースされたCDが一番音が良いのです。全面が薄い水色で「Made In West Germany」と書かれているものです。サイドまでコーティングされ、丁寧に作られていることがよく分かります。その後、リマスターされたディスクを何枚か買い、聞き比べたのですが、どうも国内プレスは響きが薄いように感じます。大事な情報が欠落している感じです。
    デジタルはどれも同じように思われがちですが、そんなことはないと思っています。
    また、録音にしても、うっとりするような響きは、アナログ録音の方がより感じます。そういう意味で、1970年台後半に録音されたPHILIPSのCDの輸入盤は私の宝物になっています。

  2. 上の文章は、扱ったCDがDECCA録音だったので、DECCAに焦点を当てた内容になってしまいましたが、PHILIPSの功績は決して過小評価はできませんね。中古市場では、PHILIPSの「Made In West Germany」と明記されたディスクが中国人に高値で購入されているのだとか。それはそうでしょう。その頃のPHILIPSのCDは、演奏も、音も良かったのです。私は引っ越しの前に殆どすべてを処分してしまいましたが、忘れられないPHILIPS録音が多数あります。そのうちに買い戻したいものです。

  3. 先日の投稿には続きがあります・・・・・・
    国内プレスのCDですが、これが利用価値がないかというとそうでもなく、私はPCオーディオをやっているのですが、CDをリッピングしてPCで再生すると、なかなかの音質で聴けるのです。少なくともCDプレーヤーで聴くよりも高音質です。逆にお宝CDの方はリッピングしてもそれほど恩恵はありません。
    という訳で、お宝CDはCDプレーヤー、それ以外はファイル再生というふうに使い分けています。
    今は、シングルボードのコンピュータでLINUXのソフトを使っていますが、最初はIPODからスタートしました。伊東さんもPCオーディオの世界を覗いてみてはどうでしょうか。

  4. yseki118さん、こんにちは。
    なんだかこのままPCオーディオの世界に誘惑されてしまいそうな気がしています。悪魔の誘惑ですね。

    私の場合は、二つのことがネックになっています。

    1.ケーブルの接続ができない(正確に言うとよく分からない)ことです。
    PCからどんなケーブルをつなげば良いか想像できません。PCに繋げられるオーディオ用のケーブルがあるのですよね? さらに、それをプリアンプに繋ぐのですよね? Goldmundのプリアンプの端子はたくさんありますが、このアンプ自体も古くて、PCオーディオを前提にした作りではないので対応可能なのかさっぱり分かりません。おじさんには辛い時代になってしまいました。

    2.次にマシンのことです。
    私のPCはVistaからWindows7に移行する直前に買ったVista機です。それにWindows7をインストールして使っています。今や古いPCなのでPCの性能はどうなのかと思います。
    ちなみにスペックは以下のとおりです。

      CPU CORE2 DUO 3.16GHz
      メモリ 4GB
      ハードディスク 容量700GB (空き 635GB)

    また、当時は静音マシンだと思っていましたが、最近はそれほどでもないと感じています。PCオーディオということはマシンは稼働させておくのですよね? マシンの音が気になることはありませんか?(と書いたところで、今はエアコンの音の方がよほど大きいことに気がつきました。気にすることはないかもしれません。)

  5. 伊東さん、今のシステムそのままでOKですよ。
    とりあえず「USB DAC」を買われてはどうでしょう。ケーブルも付いていると思います。
    ピンからキリまでありますので、とりあえずは安価な物で構わないと思います。
    慣れたところで、ハイレゾやDSDに対応したものを買われた方が良いと思います。

  6. なるほど。ありがとうございます。
    オーディオは金食い虫なので、手元流動性がもう少し高まってきたらやってみますね。

  7. PCオーディオの話題と聞いて投稿します。
    これも凝り出すとキリがない世界なので、まずは比較的安価な携帯プレイヤーを買い、SDカードでPCから音源データを入れ、プリアンプとラインアウト接続するのが手軽かと。これならヘッドホンのケーブルで接続できますし、最悪好みにあわなくても携帯プレイヤーはそれはそれで使えますしね。Fiioというメーカーのプレイヤーが安価で音質もそこそこ、ラインアウト端子も完備しているので向いているかと思います。

  8. FiioのHPを見てみました。いろいろな機種が出ていますね。もうどれを選んでいいのかさっぱり分かりません。すっかりオーディオは別次元になったような気がします。どうしよう、手も足も出ない、というのが本音です。全く情けないです。

  9. 伊東さんはスマホを使われていますか、もし使われているようなら、とりあえずスマホのイヤホンジャックに「ステレオミニプラグからピンプラグに変換(この言葉で検索すればヒットするはずです)」するケーブルを使ってアンプに繋げてはどうでしょうか。
    音楽データはユングさんのホームページからダウンロードすれば、いくらでもありますよ。ただし、この使い方をすると通信料が大変なことになってしまいます。私は無制限プランなので、この方法でユングさんのホームページからダウンロードして、携帯で聴いています。(WIFIなら問題ありません。)

  10. いろいろ教えてくださりありがとうございます。嬉しいです。

    しかし、残念ながら、スマホは使っておりません。ガラケーで頑張っておりまして、スマホに買い換える予定は、今のところありません。難しいですね。

  11. こんばんは。
    PCオーディオの場合、yseki118さんのおっしゃるとおりUSB-DACを購入するのが基本ですが、機種もピンキリですし、オーディオ用のUSBも高いです。せっかくこれらを買っても音がお好みにあわないと無駄になってしまいますし。ということで、初期投資を抑えるためにFiioのプレイヤーをお勧めしました。機種は予算次第ですが、X3が良いのではないかと思います。携帯プレイヤーとしてもそこそこ聴ける音質ですので少なくとも無駄にならないかと。上位機種のX5の方がもちろんプレイヤーとしての性能は上ですが、あまり最初から大枚もどうかと思いますので。
    これでPCオーディオの音がお好みにあえば、本格的なUSB-DACの導入をご検討されてもよろしいかと。

  12. 伊東さん、いっそのことワンボードマイコンでシステムを組まれてはどうですか。
    これなら1万円以下で相当の音が出ることは保証します。(私もやってきましたから)
    Raspberry Pi B+というLINUXの動くボードがあります(5000円以下で手に入ります)。これに差し込む形のDACを繋げれば完成です(これも5000円以下で手に入ります)。LINUXCOMというところで販売しているものを使うのが一番簡単だと思います。(http://linuxcom.shop-pro.jp/ http://linuxcom.info/)使い方についてもコーナーがありますから、参考にされると良いと思います。
    ソフトも色々ありますが、Volumioというのが初心者の方にはお薦めです。通常はNASに繋げて使うのですが、VolumioはUSBメモリも認識しますので、NASのない環境でも使用可能です。しかも、NASを使わなければ面倒な設定も要らないので、更に簡単にセットアップできます。
    使い方に慣れてきたら、ディストリビューションを換えて音質の違いを楽しむのも良いと思います。(rune audio、moode audio、arch phileなど色々あります。どれもUSBメモリを認識可能です。)

    参考まで・・・・・・
    私も最初はCDプレーヤーで音楽を聴くのがメインだったのですが、たまたまIPOD TOUCHのヘッドホン出力をアンプに繋いだところ、思っていた以上の音が出たのです。でも、IPOD TOUCHでは容量が足りないので、IPOD CLASSICを買いました。これなら容量は100G以上ありますので、普段使いには十分です。
    しばらくは、ヘッドホン出力をアンプに繋いでいましたが、オーディオマニアの性で、音に満足できないようになり、IPODからデジタル出力が出せるというND-S1000なるものを買い、それをDACに繋いだところ、すばらしい音が出て、それから本格的にPCオーディオにのめりこみました。
    私がよく紹介する、ユングさんの「PCオーディオ実験室」の記事を参考にLINUXのボードで音出しをするようになるまでに、それほど時間はかかりませんでした。
    それから後は、紹介したRaspberry PiやBeagleBone Blackにi2s接続という方法で直接DACを繋いで音出しをするのが安価で、しかも高音質であることが分かりました。
    CDプレーヤーでは出せない解像度と奥行きのある音を聴くことができます。(私の家の環境ではという前提がつきますが)
    伊東さんにも、この音の世界を共有していただきたいと思い、しつこく薦めている訳です。

  13. うーん。やってみたいのは山々なんですが、諸般の事情でオーディオにはこれ以上お金をかけられないのです。いろいろ教えて頂いて嬉しいのですが、今しばらくは導入できません。申し訳ないです。

  14. すごい盛り上がりですね!

    私個人は、器楽や室内楽中心なので、オーディオへの拘りをまったく持っておりませんが、そもそもクラシック音楽を聴くこと自体が、マニアックなところがあるので、このような拘り自体は良く理解できます。

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