シノーポリ&カペレで「リストのダンテ交響曲」を聴く

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松本さんの「音を学び楽しむ、わが生涯より」に「シノーポリ&カペレで「リストのダンテ交響曲」を聴く」を追加しました。松本さん、原稿ありがとうございました。

シノーポリの存命中、彼がシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者であることに私は大変不満でした。シノーポリの指揮で次から次へと新録音が行われたわりにその内容に必ずしも満足できなかったからです。DGの録音はCD時代らしく非常に綺麗な音で収録されていましたが、そこに旧東独時代の音を聞き取る事が難しかったことが不満を持った最大の原因でした。今考えてみると、それは無い物ねだりだったのかもしれません。DGにしても、慣れないドレスデンの地で最善を尽くしたのでしょうから、当時の私はシノーポリとDGにあまりに多くを求めすぎたのだと反省しています。

シノーポリの死後、一時的にハイティンクやルイジがシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者となり、いくつかの録音も行われました。しかし、その量はシノーポリ時代に及ぶべくもありません。他の楽団の録音も減少していることを考慮したとしても、その減少ぶりは顕著です。今になって思うと、シノーポリ時代はシュターツカペレ・ドレスデンの録音面では非常に恵まれていたのです。シノーポリの指揮で多くの緒録音が残されたことは僥倖でした。もしシノーポリがいなければ、1990年代のドレスデンの演奏や音を我々は検証できなかったのです。シノーポリ存命中私は彼に悪態の限りを尽くしてきましたが、今は感謝するばかりです。そして、その悪態に対し、お詫びをしたいです。シノーポリさん、申し訳ありませんでした。また、多くの録音をしてくれて本当に感謝しています。

(2016年10月25日)