図書館CDを検索していたら、カイルベルトの『ワルキューレ』が出てきたので早速借りてきました。
ワーグナー
楽劇『ワルキューレ』全曲
ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイロイト祝祭管弦楽団
- ジークムント:ラモン・ヴィナイ
- ジークリンデ:グレ・ブロウェンスティーン
- ブリュンヒルデ:アストリッド・ヴァルナイ
- フンディング:ヨーゼフ・グラインドル
- ヴォータン:ハンス・ホッター
録音:1955年7月25日、バイロイト祝祭劇場
TESTAMENT(国内盤 UCCN 1067/70)
この録音が発掘されて大評判になったのは10年近く前でしたが、長らく聴きたいと思いつつも手許不如意のため購入できませんでした。しかし、図書館では無料で借りられるではないですか。何とありがたいのでしょう。図書館でクラシック音楽のCDを借りることを私は葛飾区に来るまで思ってもみませんでした。こうなったら葛飾区のクラシックCDを片っ端から聴いていく所存です。
このCDの演奏についてはもう語り尽くされたという気がしますが、やはり素晴らしいですね。力強いオーケストラの伴奏に乗って登場する歌手たちの神々しさったらありません。史上初のバイロイトでのステレオ録音だというのに、音質面での完成度もすごい。バイロイト・ピットの不思議な音響を体感できます。
私はこのCDを5回も通して聴きました。完全に堪能したと言えます。夢のような第1幕、長いはずの第2幕があっという間に終わる至福、異常に盛り上がる第2幕の最後、ドラマチックさに戦く第3幕。私の脳内は「ワルキューレ」一色になりました。
このような録音をありがたがって聴くのは、単なるノスタルジーではないのかと私は全曲を聴き終える度に自問しました。もしかしたらそうなのかもしれません。そうでないのかもしれません。私の中では、この録音はヴィーラント・ワーグナー時代のバイロイトで、ヴィーラントが選んだキャストで行われた特別な演奏です。これと同等の条件をもう一度揃えることなどできないのではないでしょうか。そしてバイロイト初のステレオ録音に挑戦したDECCAのスタッフも万全の仕事をしたはずです。こんな録音がそう何度も可能だとは思えません。私に古い時代へのノスタルジーがないとは言えません。しかし、決してそれだけでこの録音が多くのファンの支持を集めたわけではないとこの録音を聴く度に思った次第です。
(2015年7月26日)
当時の録音は本当に真剣勝負なので、後世に残されたものは、個人の嗜好は別として、細部まできちんとこだわって作成されたものであることが、ライヴ録音も含めて分かるのは、なぜなのでしょうね?
最近の録音は、聴きたいツボが聞こえないのですねぇ。もちろん、素晴らしい録音が登場することもあるのですが、当たりの確率が低いのですよね。古いものは、現在まで生き残っているため、変な話ですが当たり外れの心配がいらない分、優位なのかも知れません。
今の演奏家や録音スタッフだって真剣にやっていると思うのですが、その真剣さが「明らかに」違って感じられるのは、不思議で仕方ありません。
本文からは削除しましたが、カイルベルト盤が優れている理由として私は「オペラの神々と神々に近かった人たちによる録音だから」と最初書いたのです。ただ、そんな仰々しい言葉を書くとカルトっぽくなってしまうのでその言葉を使うのを憚ったのですが、そうとしか考えられないといまだに思っております。