ヨッフムのブルックナー交響曲第8番とドレスデン絨毯爆撃と旧ドイツ民主共和国 文:松本武巳さん

松本さんの「音を学び楽しむ、わが生涯より」に「ヨッフムのブルックナー交響曲第8番とドレスデン絨毯爆撃と旧ドイツ民主共和国 文:松本武巳さん」を追加しました。松本さん、原稿ありがとうございました。このように面白い文章を読んだのは久しぶりです。

当時のシュターツカペレ・ドレスデンをトラバントに例えるというのは言い得て妙かもしれません。ドレスデンの団員には失礼かもしれませんけれども。でも、いいじゃないですか。本当の意味でユニークな演奏ができたのですから。あの演奏を聴いて、指揮者に必死についていくオーケストラの姿を思い浮かべない人はいないと思います。

トラバント

Trabant_P50_front

松本さんの文章を読んで、私は東ドイツの名車トラバントを思い出しました。私にはトラバントにまつわる思い出があります。私はトラバントにはねられたことがあるのです。しかも、場所はドレスデンです。日本人でトラバントにはねられたなどという経験を持っているのは私だけでしょう。エッヘン。

1991年に私は仕事でドイツに滞在していました。11月にはやはり仕事でドレスデンに1週間行っておりました。夜は自由です。ある晩、ドレスデンのクルチュア・パラスト(文化宮殿)のコンサートからホテルに帰る際、横断歩道を渡っていた私をはねたのがトラバントです。信号は青でした。トラバントというのはプラスチックと段ボールでできていると言われていましたが、段ボールというのは眉唾としても、プラスチックでできているというのはおそらく本当です。もし私をはねたのがベンツやBMVだったら即死していたでしょう。トラバントにはねられた私は吹っ飛びましたが、左足をちょっと打ったくらいでピンピンしていました。今に至るまで後遺症も何もありません。

それから、フランクフルトに戻って生活をしていました。その頃はまだアウトバーンでトラバントをよく見かけたものです。親子で乗っているケースが多かったと記憶しています。トラバントはどんな車にも軽々と追い越されてしまいます。でも、トラバント(通称トラビー)は必死に走るのです。アウトバーンで普通の車に乗っている状態でトラバントを見ると、トラバントが静止しているように見えます。それでもトラバントは走っています。車体が壊れはしまいか、大丈夫か、雨が降ったら段ボールが保たないのではないかという感じで走るのです。私はそれを見ながら「がんばれ、トラビー!」と応援していたものでした。なんだか懐かしい思い出です。それからもう20年以上経つのですね。

(2015年8月26日)

ヨッフムのブルックナー交響曲第8番とドレスデン絨毯爆撃と旧ドイツ民主共和国 文:松本武巳さん」への2件のフィードバック

  1. 伊東さん
    ドイツ語のナレーターによる映像(約13分)で、DDR最末期(1987年頃)に本当に段ボールを圧縮してその上に合板を貼り付け、トラバントのボディにしている映像を、偶然見つけて、思わず見てしまいました。
    トラウマ寸前の衝撃を受けました。本来なら、ここに「ご覧ください」と書いて、リンクを貼るところですが、衝撃が強すぎたので、貼りつけないことにしますが、心から衝撃を受けました。
    あの国の末期は、本当に国全体が恐ろしく腐敗し疲弊していたのですね。。。

  2. え? 冗談ではなかったというのは恐ろしいですね。私がトラバントにはねられても死ななかったのは、やはりそのせいだとしか考えられなくなってきました。人に優しい自動車だったのかも。

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