ヨッフムのブルックナー 交響曲第8番

昨日の続き。

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ブルックナー
交響曲全集
オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1975-80年、ドレスデン、ルカ教会
EMI(輸入盤)

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ブルックナー
交響曲第8番 ハ短調
ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1976年11月3-7日、ドレスデン、ルカ教会
EMI(国内盤 TOCE-13244)

ヨッフムといえばブルックナーである。先日、amazonでヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーがどんな評価になっているのか見てみた。概ね高い評価がつけられている。しかし、中には手厳しい指摘もある。音質面でのマイナスを指摘する声もあるし、吹奏楽器の各奏者のピッチにバラつきがあることを指摘する声もある(第8番について)。いずれも、謂われがないわけではない。

音質面では最高級の音とは言えない。特に、以前も書いたとおり第8番は爆発的な名演奏だが、この録音は全集中で最も冴えない音で収録されている。東独ETERNAのLPで聴くとかなり見通しの良い音で聴けるのに、過去に私の手許にあったCDはどれもETERNA盤に及んでいない。何となく曖昧模糊とした感じがする。8番以外でも、国内廉価盤で聴いた人は口を揃えて音の悪さを訴えていた時期があった。EMIだから致し方ないとはいえ、全く音に恵まれない全集録音である。

管楽器のピッチについては、気になる人は気になってしょうがないだろう。第8番の演奏を聴いた友人に「ひどく下手くそなオーケストラである」と斬って捨てられたこともある。

指摘事項全くごもっともなのである。ついでにいうと、8番は破綻しかけていると思う。第3楽章でも第4楽章でもヨッフムはクライマックスに向けてオーケストラを煽って強引に加速するものだから、オーケストラ、特に金管楽器が崩壊しかけている。以前私は「トランペットがぴったり指揮について行った」と書いたのだが、最近はそれもぎりぎりだったのではないかと思うようになった。金管楽器は第3楽章ではやっとのことヨッフムの指揮についていった感がするし、第4楽章ではバランスもへったくれもなく勢いで吹きまくっている気がする。私が爆発的と呼ぶのはそのためなのだが、それをヨッフムはスタジオ録音でやってのけ、プロデューサーもそれを是としてディスクをリリースしたのだから恐れ入る。完璧主義の指揮者であれば、このような録音を公式盤として世に送ることは決してしないだろう。現に、ここまで強烈で、崩壊寸前の演奏をスタジオ録音で撮って、リリースした指揮者を私は他にテンシュテットくらいしか知らない。

しかし、崩壊寸前まで追い込むからこそ名演奏が生まれるのだ。ピッチが多少合わなくても、生きた演奏であることの方が大事なのだ。ヨッフムのような指揮者とシュターツカペレ・ドレスデンのようなオーケストラ、そしてその破天荒な演奏を良しとしてそのままリリースする関係者たちすべてが揃わなければこんな録音は生まれない。もともと優秀録音ではないし、音に難があるのは認めるが、こういう録音こそ貴重なのだ。この録音がPCオーディオの時代にどんな扱い方をされるのか不明だが、せめて私が生きている間はその良さをアピールし続けたいものである。

(2015年8月23日)

ヨッフムのブルックナー 交響曲第8番」への2件のフィードバック

  1. ヨッフムのブルックナーは、このホームページの伊東さんの文章を読んで、HMVから取り寄せた記憶があります。
    正しく爆演でしたね。
    あんまり面白かったので、ベートーヴェンはどんな演奏をするのだろうと思い、ヘボウとのベートーヴェン全集が出たので、早速聴いてみたら、こちらは穏やかな演奏で、ヨッフムを聴くと言うより、ヘボウの美音を楽しみました。いつでもブルックナーの時のような演奏をしていた訳ではないのですね。
    私にとってブル8というと、これもやっぱりカラヤンで、ウィーンフィルとの演奏になります。CD、DVD、LDと持っていますが、不思議なことに、この順で音が良くなっていきます。特にLDのアナログ音声は、ティンパニーの皮の質感まで伝わって来ます。
    これを聴くと、CDの音はデジタル臭さがします。また、DVDはCDよりは良いのですが皮の質感までは伝わって来ません。LDのデジタル音声もNGです。
    不思議なことに、LDのアナログ音声の時だけ、この音が聞けるのです。
    この演奏はデジタルで録音されたので、アナログ音声はそれをアナログに変換したと考えるのが普通でしょうが、私にはアナログの別テイクをサービスで入れてくれたように思えてなりません。
    でも、LDはメカノイズがするので、これさえなければ最高です。
    LDのアナログ音声が良いといっても、どのLDでも通用する訳ではないのですが、SONYから出たカラヤンのLDは、どれもアナログ音声の方が良いです。特性的には断然デジタルなのでしょうが・・・・・・
    このアナログ音声をファイル化してみたのですが、元の音は再現できませんでした。

  2. 何が音の臨場感を決めているのか分からないのですが、同じ音源なのに明らかに音が違うことはよくありますよね。それも、違いが大きすぎて同じだとは思えないものがいくつもあることに驚かされます。それがLDでもあるというのですから、ソフトの世界は奥が深いです。

    ちなみに、今日私はフルトヴェングラー指揮ウィーンフィルの「エロイカ」(1952年録音)のCDを図書館で借りてきて聴きました。しかし、あまりの音の貧弱さに3分で止めてしまいました。以前、この録音をLPで聴かせてくれた人がいたのですが、その臨場感、迫力にただただ圧倒されたものです。本当に同じ音源なのか?もしかしたら違っているのかも、とまで思わせるのですから、ソフトをいくつも揃えたくなるに決まっていますよね。オタク化する世界であります。それが楽しくもあるのですが。

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