新年に何を聴くべきか。といっても私のCD棚には数えるほどのCDしか残っていない。その中から選ぶのは簡単だ。エリー・アメリングのシューベルトである。
シューベルト
歌曲集
ソプラノ:エリー・アメリング
ピアノ:ダルトン・ボールドウィン
録音:1982年7月
PHILIPS(輸入盤 410 037-2)
冒頭の「音楽に寄せて An die Musik D547」は必聴である。今までこの曲を何回聴いたのか想像もつかないが、聴き直す度に感銘を受ける。
シューベルトは二十歳そこそこの年齢でこの曲を作った。信じられないことだ。それはまさに音楽史上の奇跡としかいいようがない。なぜなら、3分にも満たない曲の中に、人生の悲喜こもごもが凝縮されているからだ。どうして年端も行かぬ若者にそのような離れ業ができたのだろうか。シューベルトにしてみればショーバーの詩に軽く曲を付けただけだったのかもしれないが、後世の音楽ファンはこの曲を聴いて音楽を聴けるありがたさをしみじみと噛みしめているのである。
私はこの曲名をこのホームページのタイトルに使っている。ホームページ立ち上げ時には様々な名前が候補にのぼった。しかし、ひとたびこの曲を思い出すや、他のタイトルは考慮の対象にすらならなくなった。この曲は私の音楽に対する思いと完全に合致するからである。私は音楽を聴く時には、音そのものを楽しんだり、興奮したり、気分を落ち着けたりする。そして何より、音楽そのものが慰めだ。音楽がなければ、私の人生はどれだけ寂しいものになっただろうか。音楽はどんなときでも私の側にいてくれるのだ。その音楽に対する感謝がなくてどうして音楽を聴き続けることができるだろうか。「音楽に寄せて An die Musik」こそ音楽を聴く私のための音楽である。
(2016年1月1日)