5月14日に転居しました。今度の住まいは東京都葛飾区、新小岩です。
私はさいたま市(浦和)に長く住んでおりました。駅で言いますと南浦和に9年、武蔵浦和に14年です。浦和はいかにも田舎っぽいのですが、住みやすいことこの上ない町でした。私は持ち家もあったのでそこを終の棲家とするつもりでいたのですが、今年2月に私の人生の中で最悪の事態が起きました。離婚が確定したのです。二人の愛娘にはもう会えません。私はひとりぼっちになるのです。そうなると、今度は8部屋もある家に男が一人で住み続けるわけにはいかなくなります。また、新たな人生を歩むためには浦和から離れた方が良いと判断し、暮らしやすそうな東京の下町、新小岩への転居を決めたのです。
そうと決めた後は大変です。離婚は紙切れに印鑑を押すだけで終わりますが、男一人が物理的に移動するには準備が要ります。まず家を売る。それとほぼ同時進行で新居を決めなければなりません。それに、引っ越しのために家財道具を処分しなければなりません。新居はマンションなので居住スペースはたかがしれています。やむなく大量の家財道具を破棄しました。CDはあらかじめ処分していましたが、これまた大量にあった蔵書もほぼすべてを処分しました。大事にしていたCDとも、本とも涙を飲んでお別れです。
CDは手許に数えられるほどしか残さなかったので、いっそのことオーディオ機器も売り払ってしまおうかと転居の前日まで悩みました。聴くCDがよくよくないのだから立派な機材があっても宝の持ち腐れなのです。オーディオ機器まで手放せば、本当に過去の自分と決別できそうな気もしたので真剣に悩みました。それに新居はマンションなので、以前のように自分の好きな音量でCDを聴くことはできないのです。オーディオという趣味を続けられそうにないとも考えられました。しかし、生来の優柔不断である私は、そこまでしていいものかどうか踏ん切りをつけることができませんでした。ついに時間切れになってしまい、オーディオ機器はとりあえず新居にそのまま持って来ることになりました。
新小岩に来てみると、予想した以上に快適な場所でした。全く縁もゆかりもない土地ではなかったのですが、ここが私の住む町だと思うと、都のように思えてくるものです。部屋の片付けも終わり、懸案のオーディオ装置のセッティングも終了しました。オーディオの環境としては劣悪に違いないと思ってきたのですが、今のところマンションの住民としてはほぼ満足できる音が出ています。というより、ほどほどで満足しなければなりません。
それはともかく、私はすっかり天涯孤独の身になりました。離婚が決まってからは道を歩いていても子どもたちとの幸福な日々を思い出して涙を流すという情けない状態だったのですが、いつまでも過去を振り返ってばかりはいられません。実際に私の新たな人生はこの地で始まっているのです。そして私は新たな人生を始めるためにこの地に来たのです。前向きに生きて、自分で人生を切り開いていきたいです。
(2015年5月28日)
ほぼ毎日のようにサイトは覗いておりましたが、トップの更新日が古いままでしたので、伊東さんのコメントに気づきませんでした。
私も娘がおり、家内とはしばしば諍いがありますので他人事とは感じられません。さぞお辛かったと思いますが、それを越えて進もうとする姿に打たれました。陰ながら応援申し上げます。そして、音楽が伊東さんの力となることをお祈りします。
最近、私にもいろいろありましたが、そんな中シューベルトのピアノソナタ21番をアンダの演奏で久しぶりに聴き、心にしみました。伊東さんは最近何を聴かれていますか?
書き込みありがとうございます。
新居に引っ越してきてちょうど1か月が経ちます。
私はこの1ヶ月間は新小岩という新しい環境に慣れること、
そして新居では新しい環境を自分で作ってそれに慣れることを目指してきました。
オーディオ環境は、一軒家に暮らしていた頃に比べると格段に落ちます。
例えば、マンションの私の階下に静かに暮らす老人夫婦がいると思うと、大きな音は出せません。
それでも音量を抑えつつ、いろいろ聴き始めました。
最近はカラヤン指揮ベルリンフィルのブルックナーの7番(EMI)をよく聴いています。
と言いましても、ほとんど第1楽章だけですが。
ブルックナーからはしばらく遠ざかっていただけに我ながら不思議なのですが、ちょうど、あの第1楽章の雰囲気が今の心境に合うのでしょう。
浮き世離れした曲ですからね。
面白いと思ったのは、このEMI録音は以前の家ではろくな音で鳴らなかったのに、新居ではずっとまともに聞こえることです。
新居のオーディオ環境は、純粋にオーディオを楽しめるようにはなっていません。
なぜなら、生活空間の都合上、スピーカーの間に60型のテレビを置かざるを得なかったためです。
それだけでも音質にはプラスにはならないのに、そのセッティングだとリスニング位置に比してスピーカーの幅がかなり広くなってしまいます。
ところが、上記ブルックナーは以前は団子状態の音が聞こえていたのに、おそらくスピーカー間の距離が広くなったために団子状態が解消され、見違えるような音の鮮度で聞こえます。
いろいろ聴き比べてみると、こんな聞こえ方がするのはどうもこの7番と4番(EMI)くらいらしいのですが、意外な発見でした。
これを録音したEMIのエンジニアはどんなスピーカーセッティングを想定していたのか。
環境が変われば変わったで新たな楽しみもありますし、音楽と共に人生を楽しみたいと思います。