『みどりのスキップ』
2013年刊
安房直子:作
出久根育:絵
偕成社
安房直子は日本を代表する児童文学作家です。その作品にはレトロな情緒と幻想性が横溢しています。彼女は1993年にわずか50歳で亡くなったのですが、死後20年経ってもこの『みどりのスキップ』のような優れた絵本が刊行されるのは大変喜ばしいです。
桜の花が咲く春爛漫のある日、みみずくは桜林の中できれいな女の子を見かけます。彼女は桜の精でした。みみずくはその子を守ることにしました。しかし、何者かがそこに近づいてきて、桜の精を脅かしはじめます。しかも、その足音はだんだんはっきりして来るのです。それはいったい何者なのでしょうか? みみずくは桜の精を守り切れるのでしょうか?
安房直子の詩情溢れ、リズム感のある文章に絵をつけているのは出久根育です。文・絵ともに第1級の出来映えで、本の作りも美しいです。偕成社は子どもの本を出版している会社ですが、ここまで素敵な本を手にすると、担当者の作品に対する強い愛を感じます。
桜の季節に、小学校低学年に。この幻想性を楽しみつつ、最後に「そうだったのか!」と分かってもらえれば十分です。
(2015年3月7日)