二分間の冒険

『二分間の冒険』

1985年作品
岡田淳著
偕成社 偕成社文庫

nihun

岡田淳の傑作です。タイトルはジュール・ベルヌの名作『二年間の休暇』を意識していると思われます。

読書習慣のない小学生には岡田淳の作品を薦めてみましょう。この作品は小学4年生から、かつ、男女関係なく薦められます。子どもたちは熱中して読むでしょう。この本を手にして、「つまらなかった」という反応を示した子どもにはまだ出会ったことがありません。子どものハートを引きつける強烈な磁力を持つ作品です。

『二分間の冒険』における主人公の小6男子 悟は別世界に入って、その世界でいちばん確かなものに姿を変えている「ダレカ」を探さなくてはなりません。物語は主人公が「ダレカ」を探す旅です。そしてその長い物語が2分間の間に起きていたというものです。

岡田淳の作品の多くには何かしらの主題があり、ただ面白いだけではありません。また、作品のどの部分をとっても絵になるという特筆すべき長所があります。『二分間の冒険』もその例に漏れません。このまま映画化できないものだろうかと私は思っているのですが、1985年に発表されて以来、誰も映像化を企画しなかったのは不思議です。

お母様方からは「子どもに名作を読んでもらいたいのだが、なかなか読んでくれない」という話をよく聞きます。ありがちな悩みなのですが、現代の小学生が、特に読書週間のない小学生が古典的名作を読まないのは当然でもあります。なぜなら、古典作品の時代背景が子どもに理解できないし、多くは長大であるためです。無理に古典の名作を子どもに押しつけると、子どもは本そのものを嫌いになる可能性があるので危険です。古典的名作を私は非常に愛好していますが、それと同時に、読書の入口としては厳しいとも認識しています。一方、岡田淳の作品は無理なく子どもを読書の世界に誘ってくれるでしょう。安心して子どもにお勧めください。

(2015年2月21日)