山賊のむすめローニャ

『山賊のむすめローニャ』

1981年作品
アストリッド・リンドグレーン著
大塚勇三訳
岩波書店 岩波少年文庫

9k=

『長くつ下のピッピ』をはじめとする児童文学の傑作を数多く残したリンドグレーンの作品です。物語はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を翻案したもので、モンタギュー家とキャピレット家は、こちらではいずれも山賊の集団に変えられています。ということは、主人公のローニャも山賊なのでしょうか? またローニャと恋に落ちる敵方の少年ビルクも山賊稼業に手を染めているのでしょうか? そして、『ロミオとジュリエット』同様、やはり2人には悲劇が待っているのでしょうか? いろいろ気になる点が出てきますね。

結末をこっそり書いてしまうと、物語はハッピーエンドで終わっています。山賊たちも争いを止めます。そのため、読後には非常に満ち足りた気持ちになります。ただし、そこに行き着くまでの物語はさすがリンドグレーンというべきで、読んでいて切ないものがあります。2人は駆け落ちして山の中で食料や外敵を気にしながら暮らしますが、2人ともまだ子どもですからやはり不安なのです。しかし、2人で愛を確認することによって希望を明日につないでいくのです。

本文は岩波少年文庫版で371ページです。読書力がある生徒なら小3の後半から読めます。ですが、この名作を理解して味わうにはもう少し待った方が良いかもしれません。小4の半ばi以降からがお薦め時期です。

なお、本作は2014年にアニメ化されました。リンドグレーンの作品の中ではあまり脚光を浴びてこなかった作品だと私は思うのですが、アニメ化で知名度が少しは上がったかもしれません。アニメを見る前にぜひ本で読んでもらいたいです。

(2015年3月1日)